作品タイトル不明
欲深きは血に塗れ、遥かな先に因果を落とす。
「知らないわよそんなこと。だってアタシは操られてなんかいないもの」
この期に及んで・・・・・・ッ‼
そのふてぶてしい態度。
殺すか?
だがまだ条件が‼
そんな葛藤の最中、視界にもう1つの道が目に入っていることを思い出す。
「・・・・・・・・・」
こんな状況でも一切、微動だにしないローランだ。
消すか?
ごっこ遊びが継続出来ているのは、ローランが存在しているから。
だったらいっそのこと、跡形もなく消しちまえば、このくだらねぇ時間も終わらせられる。
ヤーレンには悪いが、居なかった事にすれば――――幸いこの人数なら、口裏合わせも容易だろう。
そんな思考が伝わったのか、
「ひぃっ・・・‼ ―――ぇッ⁉ なに、これ? う、あぅ・・・・・・」
奇跡的にローランが恐怖により意識を取り戻し、その結果。無理な精神魔法の反動を受けて、目、鼻、口から出血して倒れる。
それと連鎖するように、
「な、によこれ⁉ 頭がッ‼ 割れる、みたいにッ‼‼」
今の今まで散々な態度を取っていた女が頭を抱えて蹲る。
そうしていた時間は決して長くなかったはずだが、それでも。
俺にとってはどうしようもないほど長く感じられた。
頭を抱えていた腕は降ろし、顔を伏せたままゆっくりと立ち上がる女。
だが、見開かれたその眼には竜が宿り、顔には薄ら笑いが浮かんでいた。
「いやはや――・・・まさか。ああ、まさかだ。本当に。ここまでの苦労。どうしてくれようか?」
「てめぇの苦労なんざ知ったことかよ! さっさと条件を吐け‼」
「アレが竜の眼ッ⁉ であれば、先の話は全て―――ッ‼」
「そのような些末事はどうでもよい。此度の返礼。どうしてくれようか」
「吐く気がねぇなら、その気にさせてやるよ‼」
瞬時に判断して、俺は女の片腕を消し飛ばす。
空間ごと削り取るような魔法だ。
「ミレお姉様‼」
「ぐぉぉぁぁああああ⁉⁉ ――そうか⁉ 痛みとは! こういうものであったな‼」
なくなった腕と、あふれ出る鮮血を見ながら、正しく竜のような感想を述べる。
こいつも龍王に倣い、そういった経験がほとんどないんだろう。動揺が見て取れる。
「次はもう片方を消し飛ばす! 安心しろ。てめぇがその気になるまで何度でも。腕ぐらい生やしてやるからよぉ‼」
「なるほど。過激な拷問のつもりか。しかし、汝。何を焦る? 我が痛みに馴れることか? それとも―――・・・」
「―――ッ‼‼」
「うぐぁあああ⁉⁉」
更にもう1本。腕を消し飛ばす。
「もうやめて‼ お姉様の身体なのよ‼」
「言ってる場合か‼ それにもうアイツは――ッ‼」
必死に縋りつくカーナを押し退け、急ぐ。
考えさせるな。気付かせるな。
ここで条件を特定できねぇと‼
「――くく、そうか。そういうことか」
その願いも空しく。
「・・・精々恐れるがいい。以前、言ったであろう? すぐにまみえることになる。その時まで、存分にな‼」
両腕のない体で、だが決して強がりなどではなく、腹の底から笑って。
―――そして。
奴は逃げた。
乗っ取りの条件。
その全てを秘匿したまま。
腕から溢れ出た血溜まりの中に、倒れて眠る女の身体だけを置いて、奴は逃げおおせた。
いつ自分が自分でなくなるとも知れない恐怖だけを残して。
勝ち逃げしやがった。
これで俺は、戦争の片棒を担がなきゃならなくなった。
せめて、一度で終わらせる。
その覚悟が必要だった。