軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side―――ライザード

上を目指すために階段を通る。

であれば、その飛散した何かを目の当たりにすることのは必然。

ですが答えとなれば、この僕をもってしてなお、それがなんだったのかは一瞥の下には判断ができず。

しかしそれでも、赤と黒の混じった液体と消失した人物、何よりなんとも言い難いむせかえるようなニオイという欠片を合わせれば、その答えは明白というもの・・・・・・。

周囲を取り囲まれた中で、壁のように迫る兵士達が一斉に倒れ伏す瞬間は圧巻と言う他ありませんでしたが、その理由と光景、結果を見ればこそ――心臓を掴まれるような感覚に襲われます。

こんなことが出来る人間がいる。こんなことを出来る人間なのだと。

抗う意志も、そうする時間さえ与えず、ただ一方的に。跡形さえ残すことなく摘み取るそれは・・・まさに悪魔の所業と言えるでしょう。

もし仮に、その対象が自分へと向けられたらどうなるか・・・―――?

考えたくもありませんね。なにより、答えはもう出ていると言うべきです。

とするならば、重要になるのはそうならないためにはどうすればいいか? になりますが・・・この今の原因とはなんなのでしょうか?

それを探るための材料となる情報ならありますね。

『皇国で起きたという望福教の旗揚げ』

確かに一大事と言えるでしょうが・・・それだけだとは思えません。

ではなにが・・・? となりますが、あの人が焦る原因?

いえ、違いますね。焦るというよりもっとこう―――そう、怒っている。

あの立ち塞がる全てを射殺すような目は怒りによるものだと推察できます。

怒る理由となると挙げきれないほど思いつきますが、アレは相当のもの。

例えばこの僕が皇王だったとして、何が起きればあんな目をできるでしょう? 皇王では立場が違うかもしれませんが、あの人の力を考えれば、このぐらいの飛躍は許容範囲とするべきでしょう。

臣下の背信? どこぞの領主が重税を課して私腹を肥やし、国民を疲弊させたとか、あるいはもっと単純に犯罪への関与などは・・・・・・、怒るでしょうが、あの目を引き出せるとは思えませんね。

自身に濡れ衣でも着せられ断罪を受けたとでもなれば違うかもしれませんが、現状そういった事は起きていませんからね。

そういう意味では、あの人自身に何かが降りかかったという可能性も消せますね。

あの状態は連絡が入ってからのこと。

連絡そのもので不快感を与えられるとしても、その相手を信頼できるとは言わないでしょうし、なにより言葉だけであんな変化を生めるとは思えない。

残すところは財産の消失・・・でしょうか? ですが、あまり金銭に頓着している様子はないんですよね。大人としてそういうところを見せないようにしているという風にも見えませんし、お金に対する執着が強いとは・・・。

そこでなぜか思い浮かんだのはバロン、友人の顔でした。

親戚だからか? と思うかもしれませんが、そうじゃありません。

――友人のような人間関係も財産と呼べる。

この僕自身がそう思ったからこそ、バロンの顔が浮かんだのでしょう。

あの人が。

ゼネス・C・グラーニンという人物が。あのような怒り狂った目をしたくなる人物が傷つけられた。

だから皇国へ、急いで戻る必要がある。

そうしなければ、『俺の気が済まねぇから』。

あまりにも私的な理由。ですが、感情というのはそういうもののはず。

この仮定があっているものとした場合、その人物とは誰になるでしょう?

真っ先に思い浮かんだのは、お爺様こと・・・皇王陛下。

けれど、流石にその場合は色々などと伏せずに事の重大さを説いて聞かせ、あの商人をも納得させ一早く皇国へ引き返していることでしょう。

皇王陛下という存在はそれほどまでに大きいのです。

ならば次は家族になりそうですが・・・兄は――グランといいましたか、間柄は良さそうでしたから、そこに何かあったなら、あの目も納得しますが。幾ら帝国でこの規模の問題を引き起こせるとしても、皇国では既に一度やり込められた後。

あの人を仇のだと思っていても、北の領地で旗揚げなどは不可能でしょう。父である英雄ダンデは操られていたようですが、それでも皇都へ移った後のこと。皇都軍と北の辺境伯領は元から仲が悪いですし、この僕の言葉も否定されませんでしたからね。

そうするとバロンの可能性もあるのでは? などと思ってしまいますが、そうであればやはり、あの場で伏せたりはしないでしょう。この僕との関係もそうですが、彼も今は故郷たる北の領地にて待っているはずですから。

しかし、それ以外となると・・・―――ダメですね。この僕であっても、特定は無理と言わざるを得ません。

一番ありそうなのは前職である冒険者繋がりの誰か、でしょうが・・・。わかるわけありませんね。

皇族のこの僕では知り合うことのない人物です。

ですが、少し羨ましく感じるのも確かです。

この僕は皇族です。そのことに誇りもありますし、そう産まれられたことを嬉しくも思っています。ただ、であればこそ、この命は公的なもの。この国の王子達のように暗殺などされたとしても、怒りに任せて動いてくれるような人物は現れない。現れてはいけない。

そんな人間には成れないのだと、あの人もそうはしないのだろうと。

内に潜む恐怖とその裏返しとなる心強さが、自身には無縁のものだと理解できてしまうが故に1人。

寂しさも感じた。