作品タイトル不明
魔我れ、間焦れ
4階。
酷く遠回りになったが辿り着いた。
つっても、ここからまた長い廊下を進む必要があるわけだが・・・・・・などと、考えている間にも兵士の群れが湧いてくる。
この4階は今までのどの階層よりも、面倒な形になっている。
登ってきた階段は城の外側を最奥まで貫く長い長い直線の廊下へと繋がる。その途中に曲がり角すらない正真正銘の一本道。そのまま壁まで突き進んだところで、ようやく内側へ曲がる道。
ここも先程程ではないが、やはり長く、そして曲がり角のない廊下になっている。もちろん、途中に部屋へ通じる扉すら、ありはしない。
それはまるで牢屋へと繋がる通路のようなもの。
だが、逆に言えば堅牢な守りを敷けるため、迎賓をもてなす客間としても、失礼に当たるようなものでは決してない。
・・・ただ、人を閉じ込めておくにはこれほど適した空間もありはしない。
止まるつもりはない。
奥から奥から、どれだけ兵士達があふれ出て来ようとも、やることは変わらない。
指示を出している奴を黙らせるだけだ。
跡形もなく消しちまえば、ここにいたという事実さえ残らねぇ。
例え居なくなったとしても、死んだかどうかの確認なんざ不可能。追及も出来やしねぇだろう。問題にならなけりゃ、何をしたって構わねぇ。
次から次へと出てきては、倒れ伏していく兵士達。
毎度10人程度の規模で出てくるのは、指揮できる数がそれで限界だからか? それとも、指揮官から俺達が見えない事には指揮も出来ねぇのか。
同時に来られると指揮官が見えなくなって全員消し飛ばす必要が出てくることを思えば、こっちとしても有難いが・・・、兵士の運用としては下策もいいところだな。
これが時間稼ぎなのか? そうだとして、なんの意味があるのか? 最早そう考えることさえ時間の無駄だった。
4階へ来て、二度目の角を曲がる頃。
とうとう壁に扉が現れる。
このどこかにヤーレンの仲間が居るのか、あるいは居ないのか。
部屋の数はそれなりにある。
先に一番奥まで掃除してから各部屋を調べるか? いや、どうせ兵士共は俺1人で片付く。だったら、手前から順番でいいだろ。
「サン! ヤーレンを連れて扉の中を片っ端から調べて行ってくれ‼」
「ゼネスさんは?」
「先に廊下を片付ける。それが終わったら奥から調べる。その方が速い」
「了解。部屋の中に敵兵が居た場合はどうする? 捕らえた方がいいか?」
「指揮官だけ殺せ。そうすりゃ他は黙るだろ。面倒なら皆殺しでも構わねぇ。処理はしてやるよ」
「・・・わかった。身を護るためにそうさせてもらう」
そう言ってサン達は手前の扉の向こうへと消える。
それを見送りつつ、俺は廊下を突き進んだ。
もっと兵が飛び出してくるもんだと想定していたが、扉が勝手に開いたのは2回だけ。
該当の部屋は両方、先に掃除した。
数人の指揮官が中には居たが、飛び出してきた兵の数とは合わなかったな。
休憩でもしてたのか? そんなもんが必要そうには見えなかったが・・・。
ま、どうでもいいか。
さっさと廊下の奥まで進む。
敵が飛び出してこないことを確認し、手近な扉を開ける。
「・・・・・・無人?」
あまりの静けさに声を出したのはライザードだ。
ライザードとマルチナはサンに続かず、俺に付いたままだった。
つっても、部屋にまで入って来たのは今回からだが―――。
「あれはッ⁉」
部屋の奥に異常を見つけて走り出すマルチナ。
その途中には倒れた兵士の姿がある。
さっきの部屋にいた余りの指揮官はこいつらに指示を出してたのか。
「大丈夫ッ⁉ 直ぐに解いてあげるから‼」
駆け付けたマルチナはそう話しかけながら、目隠しと猿ぐつわを付けられ、手を縛られた子供の縄を解こうとしている。
耳にはヤーレンと似た飾りをつけていて・・・。
どうやら、部族の仲間は本当に囚われていたようだった。
話しかけられたからか、縛られた子供はマルチナへなにかを訴えるように、ムームーと声を上げる。
それに気付いたライザードが先に猿ぐつわを外すと同時、
「私を助けてくれるなら! お願い‼」
少女が叫ぶ。
続いて目隠しが外れたその顔は、いつかギルドの受付で見た・・・確か、マーテル。
「おねえちゃんも助けて‼‼」
この言葉が勘違いでなければ、仲間の数が足りないことに――それは即ち、まだ帰れねぇってことを意味する。