作品タイトル不明
調査と分析
「行商人・・・ですか? なぜでしょう? 商人と言うなら、ここの管理者の人がそうでしょう? そちらの方が信用できるのではありませんか?」
「もちろんサンパダからの評判も確認するが、折角なら帝国への道中にアイツの故郷が今どうなってるのか知っておきたい。この間の件で望福教を放置するわけにはいかなくなったしな」
「いえ、そうではなくて・・・そのサンパダ様を連れていくのではないのですか?」
「そんなわけねぇだろ。適当に下っ端か子飼いか、そうでもなきゃ知り合いを紹介してもらうつもりではあったが・・・こんなデカい商会の頭を連れていくわけねぇだろ? ジーナ十時にも言ったが、目立つわけにはいかねぇんだよ」
「ですが、この商会も帝国では無名のはずですよね?」
「どうだかな。直接的な取引がなくても、仲介屋から名前が挙がってる可能性はある。そうじゃなくても、なにかあった場合に責任がとれねぇだろ」
今の俺はサンパダの娘の教師でもある。
なにかあって俺だけ戻った時に、なんで父を守ってくれなかったのか! なんて詰められたくもねぇからな。
「他の――誰とも知れない人物であればそうなってもいいと?」
「それだけの報酬を出すだろうからな。国の一大事だ。皇王陛下もその辺りは承知しておられるさ。無論、強要はしねぇよ」
「つまり、既に権力を持っているような大きな商会にとっては利益率が悪い案件ということなのですね。それでも心象や名声のためなら協力は得られると思いますが・・・」
「それが厄介なんだよ。国から見ればどちらもただの商人だ。安く使える方が国庫には易しい。税を使うわけだからな。出費は抑えるに限る。だが、長期的に見れば効果は逆だ。商人ってのは誰よりも多く税を納める職種。しかも商会を取り仕切る人間ともなれば、その額は膨大。そんな人間を失えばどうなるか? 考えるまでもねぇ。だから、本人が前向きで安く便利に使えるとしても、頼るわけにはいかねぇ相手なんだよ」
「そういう事情があるんですね」
「俺個人の問題なら手伝ってもらったかもしれねぇがな。ま、それでも帝国まで連れてったりはしねぇよ。となりゃぁ適当な商人を見繕う必要がある」
「それでルーヴェント領のことも知りたいから行商人なんですね」
「他にも、行商人なら旅慣れてるだろうってのもあるにはあるんだが・・・それほど重要でもねぇからな」
「商会の組合員も隊商を率いて回るからですか?」
「いや、帝国の内情がわからねぇからだな。決まった時期に決まった行路で回る隊商と、仕入れた商品を加味して高く売るために旅する行商人なら、その差は確かにある」
特に国境を頻繁に跨ぐような行商人であれば尚更だ。
そんな人物が都合よく皇都に滞在しているとは思わねぇけどな。
「わかりました。ゼネス様のお力になれるのであれば、ルーヴェント領での記憶をたよりに探して見せます! ですが、どうすればいいのでしょう? どこかに集まってもらうのですか?」
「朝市の時間ならそっちへ行っても良かったが、そんな時間はとっくに過ぎちまったしな。取り敢えずサンパダに頼んで、組合員や周辺関係者の写し絵でもねぇか聞いてみるか」