軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帰還

「すみませんでした」

開口一番。謝罪するのはマンサ商会、商会長サンパダ・マンサ。

恰幅(かっぷく) がよく質の良い服を着た、見た目三十代後半の男だ。

「本当ならばもう少し早く到着出来たところを、 私(わたくし) めの判断により遠回りさせていただきまして・・・」

俺たちは皇都に到着していた。

今は商会ギルド前にいる。

確かに、当初に聞いた 行路(こうろ) ではなかったし、なんなら途中の町で聞いた噂を理由に 急遽(きゅうきょ) 、遠回りすることにしたのだ。

商人からすれば安全を取った上で、遠回りした分の商売利益まで出せるのだから良い事ばかりだが、こちらはそうはならない。

だからこその謝罪か。

「そりゃいいんだが・・・」

それよりも、

「アンタ、俺の態度についてなにも言ってこなかったが、なんでだ?」

曲がりなりにも商会のトップ。しかも商会長とするにはまだ十分に若い。

であれば、俺の偉そうな態度は気に入らないはずだ。たとえ冒険者に憧れていて、話が今の楽しみだとしても・・・だ。

「私はこれでも国内だけでなく広く商売をしておりまして・・・」

なんだそんなことか。といったようなあっけらかんとした態度で、

「東西は国外まで南北は国境線付近まで、あちらこちらに取引がございますので」

薄いしたり顔で笑って見せる。

「それは知らなかったな」

「冒険者様方は商会ギルドのことなど詳しくはないでしょうから、それは仕方ありませんよ」

つまり、俺のことを知っている・・・ということだろうか?

だが、だとすればどこまで知っているのかが気になるところだ。貴族であることだけならどうでもいいが、そうでなかったら少々厄介かもしれない。

「だが、それは俺の態度となにか関係があるのか?」

「直接は関係ありませんなぁ。しかしながら、ゼネス様の実力は確かなものでした。今後も仲良くしていただければと思うのですよ」

「今後・・・ねぇ?」

「えぇ。・・・・・・北にご用向きの際は是非、私にお声がけください」

どうやら、大体のことは知っていそうだ。

「よくわかったもんだ」

「普通はわからないかもしれませんが・・・あなた様のお名前は珍しい方だと思いますよ? あの家にかかわったことがあれば、気付かれるのもやむなしかと」

「うちの連中と関わろうなんて奴はそうはいねぇだろ」

「それは・・・そうかもしれなせんな」

ハッハッハッ! と笑いあった。

あんまり長くいると面倒そうだ、まぁキリもいいし・・・ということでこの場を去ろうとした時、

「最後に、ギルドカードを拝見させていただけないでしょうか?」

呼び止められる。

「ん? ギルドカード?」

ギルドカードはただの紙だ。

ただし、それを魔法の力で特別にしている。

紙に対象を魔法で登録。紙と対象が近くにいる時に魔力を流すと、中身の確認や色々な機能を使うことが出来る。ステータスの表示や登録相手とのメッセージのやり取りなどが主によく使われている機能だ。

身分証明にもなるので、あれば便利だが人とモノが同じ場所になければ機能しないため悪用の心配はほとんどない。

なので、

「まぁ、構わないが・・・」

ポケットから取り出し、手渡す。

「それでは・・・失礼します」

手渡されたギルドカードをサンパダは食い入るように見ていた。

凝視(ぎょうし) といっても・・・とそこで違和感に気付き、なるほどと納得した。

「その若さで商会長になれるわけだ」

俺の 呟(つぶや) きのような独り言に、

「そちらのご 慧眼(けいがん) も流石にございます」

ニッと笑って答える。

間違いなくスキル”鑑定”持ちだ。

鑑定のスキルは相当目利きの商人でも持っていないレアスキルだ。その名の通り、あらゆるものの価値と質を見定めることが出来る。

ギルドカードを作る魔道具にも組み込まれているが、それらは機能を限定した劣化品に過ぎない。

鑑定持ちは一国の主になれるとさえ言われているほど希少なスキルだ。

だがなぜ、そんな 秘密(モノ) を見せるのか? 表情を見ようとして、

「そんな顔するなよ」

「しかし・・・」

笑ってしまった。

あまりにも絵にかいたような困惑した顔だったからだ。

「レベルが上がってなかったんだろ?」

隊商出発の際に皇都行きにしては護衛の数が多いと思ったが、実際にはB級3パーティーでも撃ち漏らすほどの襲撃が二度あった。それ以外でも約三か月の間に二桁以上の戦闘が発生していた。俺が対応しなければ被害が出ていたかもしれない。

15人もいたとはいえ、それだけのモンスターたちを倒して尚、レベルに変化がなかったのだ。

「すみません。疑っていたわけではないのですが・・・15年もかけてレベルが100にならないなんてことがあるとは思えず」

そういうことか。気持ちはわからなくもない。というか、俺が一番そう思っていた。

「変に才能がなかったってことだろうな」

鑑定によってステータスが更新されたギルドカードを受け取って、

「また何かあればその時にでも」

「・・・わかりました。その時には我が商会の 威信(いしん) に懸けて全霊で取り組ませていただきます!」

ヒラヒラと背中越しに別れを告げて冒険者ギルドに向かった。