軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side――ジェーン

『盾を持って前に出ろ‼』

衝撃的な光景を目の当たりにしていたところへ、指示が来る。

いったい誰が・・・?

でもこの声は、今まさに。目の前で岩に圧し潰された先生の―――‼

そこまで考えたところで、それどころじゃなかった! と気付く。

僕は事前に渡されていた盾を持って前に出る。

庶民の僕は、貴族様を守らなくちゃいけない‼

贔屓はしないと言ってくれた先生でさえ、そういう損な役回りになることはあるって、先に教えておいてくれた。

そして、そんな時のために盾を持たせてくれた。頑丈な盾を。

誰かだけじゃなくて、自分の身も守れるように。

僕が持っているのは大きな盾だ。

僕の体がすっぽりと収まるくらいに大きな盾。

けど、大人にはそうじゃない盾だ。

使い方として、先生からは『正面に構えて、先端を地面に刺して受けろ』と教えてもらった。

そうすれば並大抵の攻撃にはビクともしないって。

この盾は重いけど、その重さの分。先生の言葉を信じられる。

きっと、あれだけ大きなゴブリンの攻撃だって受けられるはずだ!

だって! まだ短い時間しか教えてもらってないけど、あの先生はたぶん―――出来ないことをやれとは言わないから。

上がる息を抑えながらバロン君の前へ出る。

息が上がるのは走ってるからだけじゃない。不安・・・恐怖・・・緊張。

でも、迷っては居られない。

潰された右目を押さえながら苦しむゴブリンが、現実に潰されそうになっている彼を狙っているからだ。

「僕のせいだ・・・僕のせいで、叔父様が・・・・⁉ 皆が⁉」

バロン君は錯乱してる。

無理はないけど、それでも‼

「そんなこと言ってたって、どうにもならないよ‼」

目一杯持ち上げた盾を地面へと落とす。

自重と僕の体重を乗せられた盾の先端は深々と地面に突き刺さり、なにものも寄せ付けないだろう安定感を手に入れる。

「――でも⁉」

「僕は先生の指示でここに来た! まだ先生は死んでないんだ‼ 君のせいだって言うんなら、自分の手で助けようとは思わないの⁉」

「叔父様が⁉」

「そうだよ! だから、戦わなきゃ‼」

バッ! と振り向く彼に、先生の声が届いた。

「・・・・・・槍を?」

そう呟いて周りを見渡す。

すると、後ろで槍を掲げるエイラスさんの姿が。

「ごめん‼ すぐに戻るから!」

槍を受け取るために背中を向けて走り出すバロン君。

それが気に入らなかったんだと思う。

ゴブリンが動き出す。

太い腕を振り上げながら駆け寄ってくる。

ドスドスという足音に、バロン君も流石に気付いた。

そして、僕の影に隠れるように走り続ける。

え――⁉ と思ったけど、そうか!

僕はすぐさま腰を落として衝撃に備える。

ゴインッ‼ と、深く鈍い音と共に衝撃が盾から伝わる。

盾を握る手が痺れるような振動。

地面に突き刺した盾ごと押し飛ばされるんじゃないかと思っていた衝撃は、ハッキリ言えばそれほどでもなかった。

僕らとこの大きなゴブリンには体格に差がありすぎる。

約3倍ほどの差があると言っていい。

そんなゴブリンの一撃。

まともに受ければ肩が外れるんじゃないか・・・とさえ思っていたのに。

実際には手が少し痺れる程度。

それも、ビリビリと残るほどでもない。

じんわり鈍く、直ぐに鋭さを取り戻す。

そして、そんな現状に一番戸惑っているのは大きなゴブリンの方だ。

なにしろ体格差を考えればあり得ないことが起きているんだから。

今までは多分。そんなこと、ありはしなかったんじゃないかな?

小さなゴブリンを相手に力負けしたことなんか・・・それどころか、拮抗したこともなかったんじゃないかな?

なのに、小さなゴブリンと変わらない大きさの僕は倒れなかった。

あまつさえ、そんな小さな存在が構えた盾に攻撃を防がれる。

きっと、意味が分からないはずだ。

そんな表情をしてる。

残った左目で、撃ち付けた右の拳を不思議そうに。

震えていた手に温もりが戻るのがわかった。

震えていたのは痺れのせいだけじゃない。

けど、なんでだろう? 今はおかしくて仕方がない。

「ごめん‼ 大丈夫⁉」

そこへ槍を受け取ったバロン君が慌てて戻って来る。

「大丈夫。なんだか、そんな気がする」

どうしてかはわからない。

でも、力が湧いてくるんだ。