作品タイトル不明
懐疑的な会議
「生徒達に――いいえ‼ 子供達にそんな危険なことをさせるなんて⁉ とても賛成できません‼」
「そうは言われてもね? 私が決めたわけではないからね。高等部も含めての依頼で、この学園の出資者達が持ってきた話だ。断ることはできないと思うよ?」
声を荒げ、学園長代理であるジーナに反対するのは件の若い女教師。
教員全員が一堂に会し、初めて見る顔に囲まれながらの会議は白熱していた。
見慣れない顔ばかりのはずだが、よくそれだけ前に出て意見できるもんだ。それとも、俺とは違って既に交流があったのか・・・? ついでに、他の教師達は俺の予想した通り、そのほとんどが老骨の集いであったため、若い女教師が率先して意見しているのかもしれねぇな。
そして、その発端となったのはジーナから告げられた依頼が原因だ。
依頼の内容は生徒達を連れての実地演習。
より端的に言えばモンスターの討伐依頼だ。
「そもそも、なぜそのような依頼が学園にくるんです⁉ 冒険者にでも頼るのが筋ではありませんか⁉」
「私もそう言ったさ。けれど、先方が聞き入れてくれなくてね。なんでも、昨今の時流を鑑みて~だそうだよ?」
「昨今の時流ってなんです⁉ 至って平和なじゃないですか‼」
「もちろんそれも言ったさ。しかし、どうやら帝国側で不穏な動きがあるらしくてね。またこちらへ攻めてくるんじゃないかと、出資者達は考えているようなんだ。そうなった時に、子供達が狙われないとも限らない。だから、今回の実地演習を提案する! という論調だったね」
「そんな起こるかもわからない事のために、子供達を危険にさらせって言うんですか⁉」
「憤る気持ちはわかるけれど、予測とは得てしてそういうものだよ。起こってからでは遅いのだからね」
「それは――⁉ そうかもしれませんけど・・・でも‼ 学年単位だなんておかしいじゃないですか‼ 教室が一つの学年だってあるんですよ‼」
「その辺りは私の方で交渉しておいたよ。さっきそう伝えたのは、依頼をそのまま読み上げただけに過ぎない。中等部全体で二件。幼少部の方は5・6学年で一件。4年から2年で一件。そして1年に一件を担当してもらう」
冒頭で一時落ち着いたかと思えば、最後でまた感情を沸騰させる女教師。
「どうして1年生だけ‼」
「それはほら―、」
そう言ってジーナは俺を指さす。
「元個人A級冒険者たる彼が居るからね。可能ならば、もう二~三件は担当させたかったんだけれど、流石にそれでは偏りすぎだと言われてしまったよ。いや残念。引率する先生方のことを思えば、少しでも負担は減らしたかったのだけれどね」
いやいや、そこまでしていただかなくとも――と他の教師陣が遠慮する中、
「私はこの方をそれほど信用できません‼」
ハッキリと否定の意志を貫く。
「そうは言われても、もうこれ以上の交渉は不可能だよ? 先方とは合意を取ってしまったしね。なにより、移動の手配もすでに終わっている。君1人の認識が問題だというのなら、君は残ってくれても構わない。彼ならば教室2つ分の子供達を引率することも可能だろうからね?」
などと目配せまでしてくるが、正直に言えば厳しいものがある。
今の教室分だけでも持て余し気味だってのに、もう1つと言われてもな。
しかし、ここでそんなことを言うわけにもいくまい。
下手に拗らせれば、それこそ2教室分を丸投げされかねねぇ。
「ま、やれっつーならやるだけだ。多少の犠牲は見逃してくれるんだろ?」
「できればそのようなことになって欲しくはないのだけれど、仕方がないね。管轄外の部分まで引き受けてもらうのだから、多少なら目を瞑るとしよう。ただし、優先順位は守っておくれよ? 爵位順で構わないからね」
「待って下さい‼ それでは私の生徒が⁉」
「ああそうだね。可哀そうだけれど、その責任を担う人物が居ないのだから、そうなるのは仕方がないだろう?」
「・・・くっ⁉ わかりました。ですが―――‼」
その後も。どうにか譲歩を引き出そうとする女教師がジーナとやりあったが、望んだ成果は得られなかった。
魔法研究の第一人者であり、魔法道具も多く開発してきたジーナはそういった交渉事には滅法強い。そのことを再確認させられる会議だった。