軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

平穏の変動

それからしばらくは平凡な日が続いた。

特別取り上げるべきこともなく、決められた通りに授業を進め、望みの薄い私物を漁り、少なからずの成果と多くはねぇが情報も手に入れた。

少なからずの成果には子供達の成長・・・いや、発見とでもいうべきか。その雄姿からわかったことがあった。

全体的なことでは、皇都を中心に教育の基礎が昔から――俺達が教えられていた時代から変化していること。

これが些細な違いで収まらねぇ程度には改変がなされていた。

わかりやすいところで言えば学習範囲だ。

俺達が習ったはずの範囲が丸々外されている教科すらあった。逆に、必要なさそうな範囲まで引き延ばされている教科も。

具体的には言語学と歴史が引き延ばされ、数学と魔法反応学が縮小されていた。

それに伴い授業数も言語学と歴史は増え、引き換えに。数学と魔法反応学の授業数が減らされているようだった。

この傾向は1年である俺の受け持つ生徒達にもあった。

魔法に詳しそうに思えたビューティーですら、魔法反応については独学だと言っていた。

学園だけの話だと思っていたんだが、皇都貴族を中心に子供達への教育理念が変わった・・・? そういった可能性がある。

歴史の差異はこの際無視した。根本が間違っていれば歴史が変わることぐらいはよくあるからだ。だから言語学に絞って調べてみたが、その原因には辿り着けなかった。

代わりに、生徒達が無駄に思えるほど言葉に詳しかった理由はわかった。

全員が全員。そういう方針で育てられていたからだった。

そうなりゃ気になるのは、なぜ代償が数学と魔法反応学だったのか、だ。

これについては簡単に思い至ることができた。

最も計算を必要とするから――だろう。

言い換えれば”真実と向き合う力を養う学科だから”で間違いねぇ。

商人の口癖に『数字は嘘を吐かない』という言葉があるぐらいには、数字は嘘を暴く。つまり、子供達に暴かれたくない、暴かれるわけにはいかねぇ嘘が、この学園。退いては皇都中に広がっていて、その収束点こそが望福教なのだろうということがわかった。

だが、それがなんなのか。なぜそんなことをするのかはわからねぇまま。

置き去りにされた私物からはそこに繋がるなにかを見つけられてねぇ。

そして、隣の教室を教える若い女の教師についてだが・・・。

現在はジーナが伝手を使って調査中だそうだ。

資料からわかったのは既に1年近い教師の経験があったことと、赴任先がルーヴェント領――望福教の教えが蔓延ったヨハンの親が治める領だったこと。さらに、前学園長と面識があったことを理由に教員監査・・・ジーナのとこの執事だった爺さんが引っ張ってきた人員っつーことぐらいだ。

そのことを爺さんに問い詰めると『必要かと思いまして』だとよ。だったら最初から伝えておけよ‼ とも思ったが、手際の良さを非難することはできなかった。

現在はそれとなく様子見中だが、学園内でどこかへ連絡している様子などはない。望福教に関係するような仕草もだ。なにかの糸口になってくれれば楽なんだがな。

この間に行われた授業は数多に上るが、その中でも取り上げるべきは武道実技だろう。

我が甥たるバロンを筆頭に何名かの才能が発揮された。

バロンについては言うまでもないが、それなりの訓練を受けていたようで、身体能力はそれなりであっても武器の扱いが飛び抜けていた。とりわけ軍隊仕込みの槍捌きは見事なもので、面目躍如の大立ち回り。俺はこんなところでもゴルドラッセとの手腕の違いを突き付けられる形となった。

それは先の授業で子供達へ向けて”お前らに槍は扱えない”と言った手前でもあるし、それを証明するため騎士爵の娘ジェーン・W・エスカーに槍を振らせてみたからだ。

ジェーンは俺の思惑通り、身長の倍はある槍に振り回される姿をさらし、その難しさを体現してくれたのだが、バロンがそれを打ち破りやがった。

なんでそんなことを? と聞いたら、『叔父様に驚いてもらいたくて!』だそうだ。十二分に驚かされたよ。おかげで面子も丸潰れだ・・・と言うところだったが、子供達のほとんどは俺の言葉を覆したバロンへの賞賛のみに留まり・・・っつーか、俺の面子なんざ気にもとめてなかった。ただ一人、『ざまぁみろ!』とでも言いたげに笑うライザードを除いて――だが。

そのライザードは魔法同様、武道にも真剣に取り組みそれなりの成果を出した。

ズバリどれくらいかといえば、教室で3番目ぐらいの実力だ。

これは基礎訓練を施した後、勝ち残り戦を行うことでついた順位だ。そうした理由は目標をよりわかりやすくするため。

同じ年齢の子供同士なら、お互いを目標に置いた方が手っ取り早い。体格の違いもさほどないしな。

その結果、ライザードは準決勝でバロンに敗れた後、3位決定戦に勝ち。更にその後、決勝でバロンに敗れ2位となったジェーンに挑んで負け、明確な3位となった。

ライザード本人は不服そうな顔だったが、判定で変わるような実力差じゃなかったんでな。是非、努力で追い抜いて欲しいもんだ。

意外だったのはジェーンの対応。

ライザードへ忖度でもするかと思ったんだが、きっちり実力で分からせた。

その理由を聞いたところ。

『実力を勘違いすれば戦場で死ぬことになる‼ 訓練で手を抜くのは仲間を殺すことと同義だ‼』という騎士爵を持つ父の教えからだった。

中々に剛健な父を持つようだ。

決勝の戦いもバロンが勝ちこそしたが、身体能力ではジェーンが勝るだろうことが窺えた。

そしてそれはバロン自身も気付いていたようで、最近ではよく個人訓練を行っている。いい傾向ではあるが、個人訓練じゃなく俺に指導を求めてもいいんだぞ? というのは贔屓目だろうな。言葉にしねぇよう注意して置かねぇと。

意外だったと言えばもう一つ。

ビューティーがほとんど武道に精通していなかったことだ。

姉であるキューティーはそっちに傾倒していたが、妹はどうやら魔法に傾倒しているらしい。できれば両方できるようになってほしいもんだが・・・他に兄弟姉妹は居ねぇのか? 居たらどうなってるのか、気になるところでもある。

そんな日々を送っていたところへ―吉報か、あるいは凶報か。

面白い事案が舞い込んできた。