作品タイトル不明
消滅
「生き方ぐらい自分で決められねぇのか?」
《我は防衛本能により呼び起された過去の遺物。今に生きなおすことなどできぬ。それを決めるのは我ではないのだ》
「そういえばそうだったな。元のお前は今のお前とは比べ物にならねぇほど情けなかったが、それが普通なのか?」
《それもわからぬ。我という存在は本来ならば消化されるだけの記憶にすぎぬ。確立された人格ではない以上、この個体がどうやって生きてきたかなどを知るすべはない。我にわかるのは過去の記憶と目の前に迫った命の危機。そして現在の状況のみだ》
わからねぇことばっかだな・・・と思わなくもないが、この人格? すら魔法の一部だと考えれば、納得できねぇほどでもねぇか。
「ま、その情けなさに救われた身としちゃなんにも言えやしねぇが、かつての龍王としてはそれでいいのか?」
《言ったろう? 良いも悪いもないのだ。我らが運命を変えてはならぬのだ。全てを選ぶは今を生きるこの個体である》
「つーことは、さっきの敗北宣言もひっくり返しやがる可能性も?」
《あり得なくはない。だが、それほどまでに愚かであるはずもない。先ほど見せた回復のやり方も、この個体にはまだ使えぬ。それにだ。汝のやって見せた空間の跳躍。アレを防ぐ術もない。絶対的な守りを破られ、硬い鱗さえも意味をなさないのであれば、これ以上戦おうなどとは思うまい?》
「そうならいいんだけどな。気位だけは高そうあったからな」
《フッ! 言ってやるな。この個体はまだ若い。相応の期待に応えようとしたのであろう。我の記憶も。まだほんの一握りしか混ざっておらず、そのせいもあってか、得意なはずの魔法さえ未熟なようだったのだ。それに比べ、汝の魔法は実に見事であった!》
まさかドラゴンからお褒めの言葉をもらうとは。
意外なこともあるもんだ。
「言うほどか?」
《言うほどだとも! 空間跳躍の魔法は僅かでも座標がズレていれば身体が千切れる飛ぶのだぞ? それを魔法で空間が不安定になっている壁の内側になど、考えられぬ度胸だ‼ なにより、次元魔法の存在に気付いたばかりで成し得る芸当などでは決してない‼》
二度とやらないでおこう。
俺はその言葉を聞いて固く心に誓う。
「そんなもんだと知ってりゃやってねぇよ」
《謙遜はよせ。汝は知っていても実行していたはずだ。これほど短いやり取りからでも、その程度のことはわかる。それより、聞いておきたいのだが。次元魔法にはなぜ気が付いた? 人間は時空魔法だと認識していたはずだ》
なんでそんなことを断言できる? と聞くつもりだったんだが・・・。
「それに気付いたのは俺じゃねぇよ。そういう研究だとかが好きな変態が近くにいただけだ」
《なに? ならば、その者のこと。よほど信頼しているのだな。言葉だけで自らの常識を覆せるのだから》
「知識や能力については、な。人間性まで認めてるつもりはねぇよ」
《それこそ、我にはあずかり知らぬことだ。我らはドラゴンであるからな。思うところがあるなら直接伝えるが良い》
クックックと楽しそうに笑って見せるその姿こそ、人間性の塊だと俺は思うんだがな?
にしても、こんなくだらねぇ話をして面白おかしく笑ってるってことは、そろそろ時間切れか。
「消える前に聞かせろ。世界の意思と理。作ったの誰だ?」
《本当に。良く気付くものだ。しかし、であれば我が答えもわかるであろう?》
「わからねぇだろ? そんなこと」
《フッ、その割にはわかっておるではないか》
「なら質問を変える。世界のどうこうを守ってるのはドラゴンだけか?」
《我らが知る限りは》
「それはどうやって知った?」
《古い記憶からだ》
記憶を継承する魔法。
壮大な魔法だからこそ、はじめっから存在したわけじゃねぇだろう。
っつーことは、その魔法ができる前から世界はそこに在ったし、それを守ってるドラゴンも居たってことだ。
だとすりゃ神様ってのは本当に実在したのか・・・・・―――?
そうでもなけりゃぁドラゴンが世界を守ろうとする理由がねぇ。
《もし、まだ気になることがあるのならば、続きはこの個体に聞くがいい。望みの答えが返ってくるかは知らぬが、なぜ汝を襲ったのかぐらいであればわかるであろう》
ではな。と、人が考え込んでいる間に言いたいだけ言って消えやがった。
キョロキョロと周囲を確認するそいつはもう別人で。
「話の続き、聞けるんだろうな?」