軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side――ゼネス11

「えー⁉ ゼネス⁉⁉ どうして君がここにっ⁉」

水音をたてながら当然の疑問を口にするジーナ。

少し籠って聞こえるが、この声はジーナで間違いないだろう。

「いつもはあんなことを言っているのに、本当は私の体に興味があったんだね⁉ そうだろう⁉ でなければ君は、たった1枚の布越しに私が入浴していることがわからなかった間抜けということにになってしまうからね‼ いや、いいんだ! 私が君に興味があるように、君が私に興味を持ってくれているというのはとても嬉しいことで―――」

1人でなに言ってんだか知らねぇが・・・この感じなら人違いはねぇな。

一先ずの目的は達成。

狙い外れたが、やはりここはアドレスの麓町にあるジーナの研究所。その私室だ。

「ああ、悪かったな。それで、サルベージへ繋がってる転移扉は向こう側のでよかったよな?」

「―――けれど、いくら私の個人的感情が許しても、私は公爵。由緒正しき家柄の当主なわけだ。当然責任というものが・・・って、うん? そうだけれど・・・それがどうしたんだい?」

「すぐに使えるか?」

「それはもちろんだとも‼ アレは私の傑作だよ? サルベージへ繋ぐには、ドアノブの所にある装置を右に回してカチッとすれば、なんとそれだけでサルベージへの扉が開くというわけだね‼」

「そうか。ありがとう」

わかりやすい操作説明に一言。礼だけ置いてその場を後にしようとするが、

「ちょっ⁉ どこへ行くつもりだい⁉ 私の話はまだ終わってはないよ⁉」

逃走は失敗。

ここで絡まれると時間の浪費が・・・と思うものの、無視をするのも流石に許されねぇか。

仕方がねぇと向き直って手短に事情を説明しようとした瞬間。

「ちょっと待ってくれ‼ 本当になにがあったっていうんだい⁉」

バシャバシャバシャ! と大量の水が飛び散る音を引き連れて、ヒタヒタと近寄る足音が迫る。

おいおい⁉ と思う間もなく、スッと濡れた手かなにかが俺の頬を触る。

「君が顔に怪我を受けている所なんて初めて見たよ。それに、血も止まっていないようだし・・・そもそも、どうやってここへ来たんだい? そんな状態で受付を通れるとも思えない。なにより、カーテンも閉まったままだからね」

両手で顔を掴まれて引っ張られている感じ、傷を覗き込んでいるんだろう。

吐息がかかるほど近い声に正直戸惑う。

「おまっ! 今の状況わかってんのか⁉」

「わからないから聞いているんだろう? さぁ! なにがあったというんだい?」

「そこじゃねぇよ‼ お前は布1枚すら身に着けてねぇんだろうが‼ 距離感どうなってんだ‼」

今この状況で俺が目を開ければ、それはもう色々と見えてしまう。

言うまでもなくあられもない一糸まとわぬその姿が。

しかも、濡れそぼった艶めかしい肢体がだ。

確かに怪我もしていれば血も出ちゃいるが、この目は開かないわけじゃない。

自分の身分や、責任とか言うならもっと気を使ってほしいもんだが・・・。

「なにを言ってるんだい? 君は目を開けやしないだろう? それとも、本当に私の裸を見て責任を取ってくれるのかい?」

「そんなわけねぇだろ‼」

「だったらいいじゃないか。私も濡れてびしょびしょだし、君も血が止まらないんじゃ部屋へ入れられない。それとも、私の部屋なら自分の血で汚してもいいとでも思っているのかな?」

「・・・・・・そんなわけねぇだろ」

「なら気にしないことだ。といっても、今の台詞は実に胸に響いたけれどね? なんたって、私を気遣っての言葉じゃあなかったんだから! アレは現状を理解していた君の理性から出た言葉‼ つまり君は。少なからず私の豊満とは言いきれない体にでも興味を示してくれているというわけだ。今も、君の体のどこがとは言わないけれど・・・硬くなっているしね?」

「ちゃんと反応がって言えよ‼」

「そしたらつまらないじゃないか・・・・それで? なにがあったんだい? なにをそんなに急いでいるのかな?」

適度にふざけたような会話は俺の緊張や焦りをほぐそうとしてるのか? あるいは本気でふざけてるのか。

まぁどっちでもいい。

「サルベージにドラゴンが現れた」

「ああ、もうそんな時期なんだね。まさかそれを見に行こうとして・・・?なんて、そんなわけがないか」

「よく聞けよ? そのままの意味だ。サルベージにドラゴンが降り立った」

「―――・・・本気で言っているのかい?」

「本気も本気だ」

「情報元は?」

「ギルド本部だ。速報が来た。ドラゴンが現れてから30分ほどだそうだ。今からだともう5分は過ぎたか?」

「ギルド本部⁉ だとすればその情報は正しい・・・いや! おかしいだろう‼ 本部からここまで、どれだけの距離があると思ってるんだい⁉」

「ここへは転移扉を使って来た」

「この扉はギルド本部とは繋がってないよ⁉」

「正確にはギルド本部にあった転移扉から吸い上げた魔力で俺が繋いだ。今はもう繋がってねぇはずだが・・・・・・それと、この傷はS級昇格の話を蹴ったら戦闘になってそこで付けられた」

「あああああ‼‼ もう‼ 君はいったいなにをやってるんだい⁉ いつもいつも‼ 私の前に現れる度に興味を引くようなことばかり‼ わかった! ちょっと待ってておくれよ‼」

そう言って、ジーナはなにかしらを持ち出し、さらにはそれを振り回すようにしてからシャッ! とカーテンを開いて部屋へ。

まだ話の途中だったんだけどな?

かといって俺は血で汚れてるせいで部屋へ入り辛いし・・・これはアイツが戻ってくるまで待ってないといけないのか?