軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それぞれの決意と解答

立ち向かうものは現れなかった。

敵うわけがないのだから、それが必然であった。

だが、眼前にはいつぞや逃がしてやったワイバーンが燃える瞳でなにかを訴え続ける。

それがなんであれ、興味はない。

しかし、その心こそは認めなければならない。

認めた上で叩き伏せ、へし折らなければならない。

それこそが我が役目。

それこそが世界の真理。

敬意を表し、全力で排除しよう。

それをもって見せしめとするのだ。

理に反することがどういうことか。

浅ましき人間たちへの警告である‼

その日。

アドレスより帰って来たクライフ達は、町の異変に気付いた。

居るべき人がそこには居らず、活気も喧騒も失われていたからだ。

冒険者だからと言って、常にサルベージにいるわけではない。

当然だ。

ここにいる冒険者達は、霊峰アドレスを攻略するためにいるのだ。

その頂上を。あるいは最奥を目指すが故にここにある。

拠点サルベージとは中継地点であり、常在の依り代ではないのだ。

この度、クライフ達はジェイド一行を連れてアドレスの頂上へ続く道の入り口を案内していた。

そうまですると過保護かとも思ったが、肉親たる兄弟よりも、長き時を共にし、命を預けて合って生きてきた親友の教え子。

知らぬふりをして、なにかあってからでは申し開きのしようがない。

たとえそれが成長の妨げになろうとも、生きていれば取り返しはつく。

なにより、あの親友の教え子が! その程度のはずがないという信頼もあった。

注意する点、足場の悪くなっている山道。近づくだけで危険を伴う毒を持つ植物。逃げる時にやってはいけないことなど。昔を思い出しながら現地で説明をした。

珍しいが出没することのある強力なモンスターの説明中には、まさかの遭遇を果たし、弱点や討伐の手本を見せることもできた。

それなりの収穫。

充足感を得てからの帰路。

その終点たるサルベージでなにかが起きていた。

無視することはできない。

それはこの場所がなくなっては困るからだとか、正義感からだとか、そういう話ではない。

単に見えていたからだ。

頂上を目指す道は山の上へと繋がっている。

となれば、位置は町よりも高く。その帰りは町を見下ろすことになる。

そうすればそこには、この時期に。何度となく目にしてきた姿が存在しているのが確認できた。

本来は遥か上空を優雅に通り過ぎているはずの存在が。

しかも、

「グギョアアアアア⁉⁉」

《グルルルアァァアア‼‼》

戦っている。

「なにがあったのか、わからない・・・けど、君たちは逃げろ‼」

そう言い残して。焦るクライフ達が走り出す。

そこへ行って、なにができるというのか?

おいて行かれたジェイドは一瞬の間を挟んで、状況を理解した上で仲間達に問う。

「・・・俺様たちはどうする?」

先ほどの問いが、もう一度。頭の中で踊る。

そこへ行って・・・・・・なにができるというのだろうか?

勇者とまで呼ばれるS級パーティーを見送る時でさえ、そう思ったのだ。

パーティーとしても、個人としても、B級になったばかりの自分たちに、なにができる? 足を引っ張るだけじゃないか?

最悪、命を落とすことも・・・―――。

ジェイドの瞳には強い意志が宿っていた。

是が非にでも行ってみたいと。

けれど、それを押し殺しての質問だ。

無碍にはできない。

それぞれに己の答えを示さなければ。

「私は・・・ジェイド様にどこまでも付き従いますわ‼」

初めにそう啖呵を切ったのはキューティー。

しかし、その声は。足は震えている。

怖くないわけではない。

だが、それでも。

心は同じだと言ってのける。

強く頷くジェイドとキューティー。

「2人は無理しなくてもいいから」

それとは別に。ヨハン、リミアへ向けてケイトが言う。

それはつまり、

「私も・・・ドラゴンには興味が、ある」

まぁそうでしょうねと、エイラはため息交じりに首を振る。

「2人は・・・ってことは、私には無理をしろってことよね?」

「そう聞こえた?」

「聞こえたわ」

「だったら、よかった」

笑うケイトをエイラは責めない。

それは長い時間をかけてお互いを知り、認めているからだ。

それがないヨハンやリミアにまで、強制するつもりはないと。暗にケイトは伝えたのだ。

なのに、

「あなたはどうしますか?」

隣から声を掛けられるヨハン。

そう聞いたのはリミアで。その表情からもう、答えは決まっているようだった。

「・・・・・・僕も行くよ」

もし、ここで1人逃げ延びたとして・・・その先には何が待っているだろう?

きっと誰からも責められることはない。

ただ、自分だけが責め続ける。

なぜあの時逃げてしまったのか、と―――。

その時になって思うのだ。

もし、あの時一緒に行ってたら・・・などと。

そう考え、脳裏に焼き付くゼネスの言葉が蘇る。

冒険者に”もし”なんてものはない。

それは”後悔のないように生き、後悔のないように死ね”という意味であるはずだ。

だから、そこへ行ってなにができるというのだろうか? は、行ってから考えればいい。

例えなにもできなかったとしても、自分の選択に後悔はしないと決めてさえいれば、それだけでいいのだ。