作品タイトル不明
表裏止む無し、中り無し
意図せずジーナと2人きりになったわけだが・・・・・・。
よくよく思い出してみれば、こいつと2人きりになることはあまりなかった。よくわからねぇ研究の手伝いに駆り出されたときを除けば、初めて会ったときくらいか?
まぁ、それがどうであったとしても、この後の言動は重要だ。
なにせ、この後の展開を決定づけることになるからな。
下手な話題はなし。
だが、なにを言ったとしても、面倒なことになる気がするんだよな。
ここにある魔道具の話をすれば、聞きたくもねぇ自慢が待っているだろうし、皇都の話をしても大差ないだろう。精々が当主になった苦労を滔々と語られるだけだ。苦労風自慢とも言うな。
それを避けるためには、当たり障りのない話題を提供する必要があるが・・・生憎そんなもんに心当たりはない。
御父上の動向でも聞いてみるか?
間違っても皇都の公爵家当主ともなれば、いかに軍と関係がなかろうが、その程度の話は耳にしているはず。
けどなぁ・・・結局は鬱陶しい絡み方をされそうな気がしてならねぇ。
だったら、いっそのこと気になっている共鳴魔法について聞いてみるか?
こいつなら、なにかしらの情報を吐き出すだろう。
直接そのものを知らなくとも、ふれた知識から推測や予測も立てるっつーのも、研究者には必要不可欠な要素らしいからな。
ただ、その場合。
こいつが興味を覚えると、問答無用で朝まで付き合わされる可能性がある。
というか、ほぼそうなる。
最悪だと朝どころか翌日か、その次まで付き合わされる。
こっちには出発の期限があるからな。
そうなったら面倒どころの話じゃなくなる。
『転移扉で繋がってるんだから何日居ても一緒だろう⁉』
なんつーバカげた理論を持ち出して来られるかもしれねぇしな。
俺自身はそれでも問題ねぇが、ジェイド達からしたらいい迷惑だ。
さーて・・・と、様子を探りつつ決めあぐねているうちに。
「ふむ。いつまでそうやって私をチラチラと眺めているつもりなんだい? なにか意見があれば聞こうじゃないか? それとも、私のことを見つめていたいのかな?」
「なに勝手なことほざいてやがる」
ジーナ側から話しかけられた。
これはまずい。
主導権を渡すと余計面倒なことになる!
「だったら、気になることを口にすればいい。差し詰め、優秀な私の頭脳に頼っていいのか、そんな権利が自分にあるのかと悩んでいるんだろう?」
「大外れだ。マヌケ野郎」
「私は野郎ではない!」
「マヌケなのは認めるんだな」
「間を抜くのは研究者の本分だよ? まぁ、聡明な私としては”抜く”ではなく、”省く”と言ってほしいけれどね」
「そういう意味じゃねぇんだけどな」
「知っているさ。もちろんね。けれど、君の照れ隠しの言葉を真に受けることこそ、マヌケの証明じゃあないのかな?」
「・・・・・・」
照れ隠し。
違うとは言えなかった。
正確には誤魔化しってところだが、違いを説明してくれなんざ言われるとアレだからな。
「それで? なにが聞きたいんだい?」
そう聞く顔は興味本位だと主張しているが、その瞳は真剣そのもの。
こいつは包み隠さず、興味を追い求めているのだろう。
それを見て尚、どちらを聞くべきか。
俺は迷っていた。
いや、本当はわかっている。
共鳴魔法について聞くべきだ。
ジーナ・V・マーラグは魔法研究の第一人者。
それはこいつの言葉だけじゃなく、この世界が認める事実だ。
それに、この部屋に来る前から・・・この研究所の前に立ったときから、俺の魔力はこの研究所にある、あらゆる魔法道具と反応している。
これらのことを考えれば、俺の知りたい情報の1つや2つは、確実に手に入るだろう。
だが。
だが、しかし・・・だ!
そうしたくない理由もある。
自慢げな顔で、”どうしたんだい?”と待つ姿勢を崩さないこの女に、借りを作りたくないという気持ちもある。
あるが、それ以上に!
こいつが俺達に披露した――転移扉。
それに対する俺の魔力の反応がおかしいんだ。
今まで、どんな魔法道具にも。俺の魔力は確かに反応を見せてきた。
その全てが引っ張られるような感覚だった。
ほんの少しの。か細い糸で繋がるような。それをか弱く張りつめたような。そんな感覚だった。
それを強く意識して、繋がりを太くすることで、魔力を遠隔からやり取りしてきた。
だが、この転移扉だけは違う。
それはまるで吸い付くような、気を抜けばこの身体と一体化するんじゃねぇかっつーほどの感覚だ。
特に。この目で見て、真正面に捉えてからは。
だからこそ、各種棚へ無造作に並べられたいくつもの魔法道具を無視して、隠れるように取り付けられていた転移扉を見つけられたわけだが。
それを基に研究なんつーことになってみろ。
絶対、碌なことにならねぇだろ?