軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side――ジーナ・V・マーラグ4

私の望み通り、大まかな関係性をケイト君に理解してもらったところで、私の城へと誘う。

ゼネスが道理を言い訳に使おうとしているようだけれど、皆が皆そんなことを考察できるわけではないんだよ? なにより、私の思考を読んでいるという事実は覆らない。諦めたまえ。

ちゃんとゼネスまでもが部屋へ入ってきたことを確認して、扉を閉める。

置き去りにして、逃げられてもかなわないからね。

扉側からはしばらくの間繋がっていても、こちら側からは扉を閉じると再接続は不可能なのだから仕方がない。

だから、後からの侵入者は気にしなくてもいいよ?

時限式なんだ。君に習ってね。

そうじゃなくても、こんな時間に訪ねてくる非常識な人物は私の近くには居ない・・・はずだ。

研究室ならいざ知らず、私室にまで来るようなことは・・・少なくとも、今まではなかった。ならば、今日とて大丈夫なはずさ。

それより、私の言葉遊びみたいな細かいことを気にしていていいのかい? その若白髪がまた一層増えてしまわないかい?

それは苦悩の証だと思うから、私は決して嫌いではないけれど、対外的には喜べるものじゃないと思うんだけどね?

まぁ、君がいいなら構わないさ。

あの布かい?

あれは一応の対処だよ。

流石に外から中が丸見えだと困るだろう?

部屋の外側なら、内側に開く扉と干渉しないからカーテンを付けたんだ。

足元はおざなりになってしまうが、そこまで気にすることでもない。

ん? ああ! そうだよケイト君! そっちが下り用の扉だよ!

誰かが見事に言い当てて見せた、ね。

あんまりからかうと逆襲が怖いから、部屋の説明に移ろうか。

この部屋の物は見るの分には構わないけれど、勝手に触るのはよしてくれよ? 最悪爆発するからね!

「そんなもん部屋に置くなよ」

正論だとは思うんだよ?

でもね。研究室に置いておくと分解しようとするも子がいてね。

中の構造が気になる気持ちはわかるのだけれど、かといって。力尽くで無理やりに、というのはどうなんだい?

組み直しも出来ないじゃないか。

構造が理解出来れば作り直せると、胸を張っていったところで、理解出来なかった時のことを考えてない事実に変わりはないんだよ。

と、私の制止も聞かないわけだ。

故に仕方がないのさ。

だからケイト君。気になるものは指を差して聞いてくれるかな? ちゃんと解説するからね。

ほう! それが気になるかい?

それはね。昔、私が開発した通信魔法範囲拡大用中継機の試作機だね。

今、冒険者ギルドなんかで使われているのは、それを基に開発したんだよ! 有事の際にしか使われないから見たことはないだろうけれど・・・なに? 見たことがある? そうか! いい出来だっただろう?

そっちは・・・全自動魔道砲撃機だね。

魔力を充填しておくことで、自動で敵を識別して魔法による迎撃をする魔道具さ。

ああいや、目を輝かせてくれているところ申し訳ないんだけど、実用には至っていなくてね。

モンスターの魔力を登録することで、同型の魔力反応を検知して攻撃する機能を取り付けているんだけど、その登録が難しくてね。

モンスターの近くでこの砲撃機を起動して待機するんだけど、モンスターからすれば大人しくしなければならない理由がないだろう? モンスターを大人しくさせられるほどの実力者が居るなら登録は可能だけれど、そんな人物が居ればこんな代物には頼らないし、最初の1回だけだとしても、その依頼料とこの砲撃機の値段を考えると費用対効果が良くないんだよ。

性能的にも畑を荒らすモンスターくらいなら討伐できるけれど、村や町を集団で襲うレベルになるとちょっとね。

「おい! まだ似たような扉があるじゃねぇか!」

ケイト君に色々と解説していると、ゼネスが後方で声を上げる。

「おや? もう見つけてしまったのかい?」

隠していたわけではないから、見つかるのは時間の問題だと思っていたけれど、案外早かったね?

数ある魔道具を収納した棚はすべて無視したのかな?

だとしたら少し癪だけれど、でも、構わないよ。

なんたって、その扉こそが1番の自信作だからね! 見せたのだって、君が初めてなんだ。感謝してくれてもいいんだよ? 部屋へ招待した異性だって、君が初めてなんだから。

さぁケイト君! それが気になるかもしれないけれど、一度こっちへ来てくれたまえ!

見ての通り、これは転移扉だ。一方通行なのも変わらない・・・けれど。なんと‼ 2カ所以上の場所に繫げることが可能なんだ!

どうだ! 凄いだろう?

「凄い‼」

先程よりも目を輝かせるケイト君が直ぐに反応してくれる。

嬉しいねぇ!

だというのに、君はどうしたんだい? 何か言いた気にして・・・。

「2カ所以上とは言うが、3カ所には繋がるのか?」

うん。なるほど。

言いたいことはそれだけかい?

だったら、

「なんと! 2カ所に繋げることが可能なんだ‼」

言い直させてもらおうじゃないか。

そうとも、今のところは2カ所だけさ。

それのなにが悪い? 十分凄いだろう!

「凄い‼」

やはり、ケイト君だけが癒しだ。

「あっちも同じく帰りようだな?」

ゼネス。君はもう少し興味を示したらどうだい?

その予想は正しいけれどね。

しかしながら、そっちは見せられないよ? ああっ‼ ケイト君になら構わない。ただ、あの先は浴室になっているというだけさ。

君がどうしても見たいというのなら、見せてあげないこともないよゼネス? もし、君が頭を下げてまで願うなら、私は大抵のことを君に許してあげられる。

けれど、そうでなければ――って⁉ 興味ないは言い過ぎじゃないかい⁉

え? 脱衣所・・・・・・? あっ⁉⁉

私としたことが、私室ということに囚われ過ぎていたようだ。

しばらく打ちひしがれた後、

「うん。まぁ・・・それはいいとして、だね? こっちの扉がどこに繫がっているのか、気にならないかい?」

どうにか話題を変えようと扉の先を引き合いに出すも、

「向こうにって言ってた時点で、もうわかりきってると思うがな」

慌てて要らないことまで言っていたようだ。

そんなことまで細かく覚えなくてもいいんじゃないかい?

それに、いったはずだ! この扉は2カ所に通ずる! もう片方は・・・、

「当主になったんだったよな?」

そうだね。その話もしたんだった。

口を滑らせたのは一度だけではなかったらしい。

昔から、この口は肝心なところ以外ではおしゃべりだな。全く。

「どう、いうこと・・・?」

1人。理解できていないのはケイト君だ。

とはいえ、仕方がないだろう。

彼女は私と交友があるわけではないのだから。

そこで、ゼネスが詳しく説明する。

片方はアドレスにある活動拠点。私の庭だ。

もう片方は公爵家当主としての義務を果たすべく皇都へと繋げている。

「そうだよな?」

確信をもってそう聞いてくるゼネスに、私は自分の不甲斐無さを呪いながら返す。

「あぁそうだとも。全くもって、君の言う通りだよ」

私はいつになったら君の驚く顔を見られるんだい? 初めて会った時以来じゃないか。君の、あの称賛混じりの驚いた顔が私を研究の虜にしたというのに。

私にしては珍しく失敗に落ち込んでいると、

「ゼネスさんばっかり、ジーナ様のことを知ってる‼ 私の方が、ずっと! 憧れてたのに‼」

ケイト君がズルい! と、怒りだした。

ゼネスが私のことをよく知っている?

まぁそうだろう。ゼネスは私のことを本当によく見ているからね。

今も、昔も。

だからこそ、私はゼネスの称賛が欲しい。

私をよく理解する君が驚く顔は、きっと他の誰よりも、私の自尊心を満足させてくれるはずだ‼

そうさ! 失敗がなんだ! 今までだって数えきれないほど失敗してきたじゃないか! 失敗は成功の基というのは初歩的な事! なにを恐れることがある!

それを思い出させてくれたケイト君にはお礼を言うよ! ありがとう。

ところで、

「そういえばケイト君はどうして、こんな時間のあんな場所にいたんだい?」

初歩的な事で思い出して悪いんだけれど、そのことを聞いてなかったね?

「えっ? あ、それは・・・」

そういいながら取り出したのは私の書記。その写しだ。

当然だが見覚えがある。

というか、持ち主は隣にいるね? どいうことだい?

「あれは貰ったとは言わねぇ。押し付けられたっつーんだよ」

確かに少々強引だったかもしれないけれど、あれは君にとっても重要な事だっただろう? なのに――

「実験の結果なんざ書き起こさなくとも忘れねぇよ」

忘れない⁉ いや、そんなはずがッ‼ まさか読んでないなんてことは・・・、

「んなわけねぇだろ! 読んだ上で。内容も覚えてるし、忘れようもねぇから、もう俺には必要ねぇと。そう思ったから旅立ちの餞別として。お前に憧れてるっつーケイトに送っただけだ」

ないんだね! そ、そうか。

君にとって、私との記憶はその、忘れようがないほどのもの・・・なんだね。

なるほど。

なんと言うか、むず痒いね? 嬉しいような、恥ずかしいような。

確かに、知識というものは独占するのではなく、広めてこそ価値がある。だからこそ私達は研究を発表するわけだし、それが評価されるのも、皆が同じように考えているからだね。

だから、もし忘れてしまったなら、私のところに来るといい。

あの手記は私も持っているからね。

「だから忘れねぇよ」

そんなに力強く言うのはやめないかい? 体の芯が熱くなってしまうよ⁉

「ああ! すまないね! それで? その手記に何か気になることでもあったかな?」

私はふわふわした心持ちのまま、どうしようもなくなって話を戻す。

けれど、ケイト君はなにか忘れ物をしてしまったようだ。

良いく見ればクマも酷いし、もしかして寝てないのかい? 私が言えた義理ではないとは思うけど、睡眠はとったほうがいいよ? その方が効率的だ。

必要なら浴室も貸すけれど、本を取りに戻る? もう夜も遅いからね。気を付けるんだよ?

ああ、すぐに戻って来なくても大丈夫だよ。

さっきからチラチラと、私を意識しているゼネスと2人きりの夜を過ごすのも悪くない気がするからね。