作品タイトル不明
烈火の災害
「遠慮する必要はないよ? さぁ! 中へ入ってくれたまえ‼」
強引に腕を取られて引っ張って来られた先には、それなりに豪奢な建物が。
なにも知らなければ大商会の本拠地かと思うほど立派な出来。
見せたくなってもおかしくはねぇが・・・だからって、これ見よがしにされてもムカつくだけだ。
それだけの功績によって建てられたんだろうが、そう考えると余計に腹が立つな。
「なにをしているんだい? 君が暇を持て余していたのはお見通しだよ? 早く中に入るといい。ケイト君はもう中で待ってるからね?」
「・・・・・・はぁ」
俺はケイトの保護者でもあるし、今のケイトは色々と危なそうに見える。興奮と睡眠不足で判断を間違えそうだ。
こいつは魔法が好きそうな奴で才能を感じると、誰かれ構わず勧誘するからな。放置は出来ねぇ。
精一杯のため息をついて、俺は敵陣のど真ん中に乗り込むことに決めた。
「うわぁ~~~‼‼」
目を見開いて、ロビーを隅々まで観察しようとするケイトを見て、
「嬉しい反応をしてくれるねぇ・・・」
ジーナが胸を張りながらも、その顔には幾何かの恥ずかしさを滲ませている。
その顔に珍しさを覚えたが――。
いやまぁ、置いてあるものを片っ端から、穴が開くほど見つめられれば、誰しも多少は恥ずかしい思いをするか。
なにもかもに意味を持たせているわけでもねぇだろうしな。
「ん、んんっ‼ それじゃあ、私達の関係を正しく示すものを、まずは紹介しようか」
そんな俺の視線に気付いたのか、ジーナは取り繕うように大きな咳払いをいれて注目を促す。
あっちこっちに目を奪われていたケイトだが、その声を聞いてまで、己の欲望を優先はしない。
流石に、尊敬・・・っつーには行き過ぎてる気がするな。敬愛? している相手の言葉ぐらいはまだ聞こえているらしい。
「この扉だ! 開けてくれたまえ!」
ジーナに連れられ、部屋の端にある廊下から、さらに奥。
途中、横道無しの一本道。
どう考えても使い勝手の悪い通路に取り付けられた、その扉を開けろとのことだ。
言われるがまま。ケイトはノブを回し、扉を押す。
ガチャリ。
「・・・階段?」
開いた扉のその向こうには、ケイトの言葉通り階段の姿が。より正確に言えば、上へと続く昇り階段があった。
「そう。階段だ。この光景をよく覚えておいてくれ? それじゃあ一度閉めて・・・・」
ジーナはそういいながら、ケイトの手と一緒に扉を引いて、閉める。
カチャン。
音が鳴り、確かに扉が絞められたことを確認してから、
「この装置を調節すると・・・さあ! 開けてくれるかな?」
扉に取り付けられていた装置を弄ってケイトに催促する。
当然ケイトは言われるがまま――。
「あ、あれ? 開かない!」
「ああ! うっかりしていたよ。すまない。今度は扉を引っ張ってくれるかな?」
「え?」
扉を引くと、なんと開いた。
両方に開く扉なんざ珍しい・・・なんて、話じゃぁねぇ。
「これは――ッ⁉」
ケイトが驚くのも無理はねぇ。
開いた扉の向こう側に、全くと言っていいほど、見覚えがなかったからだ。
「これが、君との研究の成果。”転移扉”とでも呼ぶべきものさ‼」
ふふん! と胸元に手を当て、腰を反り、天を仰いで、眼を瞑る。
どこまでも自慢気。
だが、
「迷宮にあるアレか」
現代的には失われていた技術。
再生させたのは確かにすげぇが、元があるだけに驚きは少ない。
先人と比べりゃそこまで胸を張るようなもんだとは思わねぇし、なによりこれで俺達の関係なんぞと言われてもな・・・。
そう思ったんだが、
「全っ然、違う‼ 全く! 君は! 本当に! なんにもわかっちゃいないんだね‼」
なぜかジーナは顔を真っ赤にして烈火のごとく怒り狂った。