軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最下位の再会

ギャアギャア言いながらも南の霊峰アドレスの麓にある町に到着した。

国境を越えて初めに着くこの町は、かつてはアドレス攻略の最前線だったが、回収拠点サルベージが出来てからはそのお役も御免となり、今は冒険者たちの中継地点として、それなりの発展を見せている。

「サルベージへ向かうまでに体調と装備は万全にしておけよ! そのために滞在日数を2、3日の予定にしてるんだからな!」

そう言って早めの解散とした。

理由はキューティーの表情が完全に死んでたからだ。

女としての矜持か、ジェイドとは違って吐くのを頑なに我慢してたからな。

その努力を称えて――ってやつだ。

まぁ、飲みすぎなけりゃよかっただけなんだが・・・。

なんにせよ。

「暇になったな」

つい声に出すほど時間が余った。

今は夜。

あいつら同様そのまま宿で休んでもいいはずなんだが、ここんとこ夜の見張りが多かったせいか寝れそうにないんだよな。

それを理由に俺はふらふらと目的もなく町を彷徨い歩いた。

こういう時に酒が飲めるといいんだろうが、生憎と俺は酒に弱い。

酒を飲んで寝る?

あいつらの二日酔いを笑ったばっかだぞ。ありえねぇ。

とはいえ、夜の街の灯りは大概が酒場だ。

そうでなくとも娼館だとか、そういう店しかねぇ。

冒険者をやってた頃から、色んな連中に『もっと遊びを覚えたらどうだ?』なんざ言われちゃいたが、こんなしょうもねぇところで実感するとはな。

かといって、今からでも遅くはねぇ! と、飛び込む勇気も気概もねぇ。あと金もか。

仕方がねぇから思い出と照らし合わせて町を見回ってみた。

最後に来たのは1年前か。

引退を決めてアドレスを離れた直後。

だが、

「あんまり覚えてねぇもんだな」

その時に町を見回った覚えなどはないんだから、当然と言えば当然か。

どっちかっつーと、初めてこの町を訪れた時。

もう10年近くも前の記憶の方がハッキリと思い出せる。

あの時はなにもかもが新鮮で、クライフやアンナもあちこち見て回ってたもんな。普段大人しいエリックや、まだ色々とぎこちなかったフェリシアでさえ、目を輝かせて―――いたような気がする。

思い出補正かも知れないが。

そんな。なんとも言えない懐かしさを感じている最中。

「おや? こんなところでどうしたんだい? 珍しい」

聞き覚えのある声が耳に届く。

「・・・・・・・・・」

振り返ってみれば予想通りの見知った顔だ。

無視してやろうかと考えていたところに、

「ああ! 私の研究所を見に来たんだね! なに、隠さなくてもいい! 君にとっても、興味深いもののはずさ‼」

なぜそう思ったのか知らねぇが、勝手に思い至っては俺の腕を掴んで走り出そうとする。

「おい、待て! なんで俺がお前の研究所なんぞに行かなきゃならねぇんだ!」

ガッチリと掴まれた腕を振り払い、走り出すのを阻止する。

「なんで・・・と、言われてもね? 君だって、自分が協力した研究の成果は知りたいんじゃないのかい? んん?」

「協力”した”んじゃねぇ。”させられた”んだ。人質を取られてな。だってのに、そんなもんの成果が気になるかよ!」

「人聞きの悪いうことを言うじゃないか? あれはエリック君も満更ではなかったはずだよ? それを君が――」

「あんなもん! ガキ相手にやっていいことじゃねぇだろうが‼」

「あの時点でも、彼は立派に成人していたはずだ。だというのに、君は全く・・・過保護が過ぎるんじゃあないかな?」

「てめぇみてぇな変態の手に落ちるのを指くわえて見てるほど、俺は仲間に冷たくねぇんだよ」

「言ってくれるね? ・・・そういえば、その君の仲間はどうしたんだい? 1人で夜にふらついているなんて君らしくもない。それとも、過保護すぎて嫌われてしまったのかな?」

「あ? なに言ってんだ? 冒険者を引退した俺とあいつらが一緒にいるわけねぇだろ」

「へぇ。冒険者を引退――・・・ちょっと待ってくれ。君が? 冒険者を引退?」

「なにを今さら? 引退したのはもう1年も前の話だぞ?」

「あれほど色んな相談に乗ってあげたというのに、協力も惜しまなかったというのに。この私、ジーナ・V・マーラグになんの断りもなく引退したと。そう言うのかい⁉」

お前に相談を持ち掛けたことはねぇし、特段協力を要請したこともねぇ。

そもそも仲間でもないお前に断りをいれる必要もない。

っつーか急にデカい声出すんじゃねぇよ!

もっと自分の立場とか、知名度ってもんを―――と言うよりも先に、

「え? あ、あっ! あぁぁぁああああああっっっ‼‼」

面倒くさそうな悲鳴が響き渡ってきやがった。