作品タイトル不明
装備決め・・・の前に
「えっ⁉ ダメですか⁉」
驚くヨハンは軽装にショートソードとスモールシールドだ。
「敵と距離を取りたいんじゃなかったか? その装備でどうする気だ?」
「あ! あー・・・そうですね。忘れてました」
「しっかりしろよ・・・」
意外と気に入っていたのか落ち込んでいる風だ。
まぁ確かに軽装に剣と盾は冒険者っぽいと言えば、ぽいからな。
「なんでしょう?」
視線を移してみれば、こちらも軽装・・・というかほぼ私服だ。それに一本の長い杖。
「それに至っては装備じゃねぇ。飾りだぞ?」
「失礼でしょう。魔法使いと言えば、ローブに杖と相場が決まっているはずでは?」
「いつの時代の魔法使いだ。今時、軍でももっとまともな恰好だぞ?」
言われて、リミアは冒険譚に出てくる魔法使いは皆こうでしたのに・・・とすねている。
お話と現実はどこまでも遠いもんだ。
諦めろ。
「それに、お前らはソロだろ? 戦闘訓練もソロ基準だからな。せめて装備ぐらいは固めとかねぇと訓練のしようがねぇよ」
「それはそうかもしれませんけど・・・戦闘スタイルもよくわからないのにどうすれば・・・?」
「そうです。勝手に話を進めないでください」
「勝手にって・・・戦い方は自分で考えるもんだ。俺の話で自分の理想は描いただろ? 後はそれに近づければいい」
「理想なんてそんな! ただ、近づくのは怖いなって思っただけで・・・」
「魔法使いは遠くから戦うものでしょう?」
学園でも戦闘訓練自体はやってるはずだが・・・そこからどうするかを構築できないのか?
「・・・学園ではどうしてたんだ?」
「学園ですか? 一応、剣の扱いくらいはやりましたけど・・・」
「基本的には、隊列を組んで槍を突き出す・・・ということを繰り返していました」
「わかった。もういい」
いや、俺が悪かった。
魔法の時点でそうだったんだ。学園で役に立つことを学んでるなんて、ありえないと切り捨てるべきだった。
「じゃぁどうする? 戦い方なんて口で説明しても限界があるぞ」
「そこは先生が考えてくださいよ!」
「つってもな・・・手本を見せようにも皇都周辺のモンスター相手じゃ見せるまでいかねぇしな」
「別にモンスターである必要はないのでは?」
「・・・・・・模擬戦か」
リミアの言う通り、手本だけなら相手がモンスターである必要は・・・それほどない。
本当ならモンスター相手の動きを見せた方がいいのは間違いない。そこが目指すところなのだから。
だが、戦いがどういうものか。その時の動きや考え方。それらを見せるだけならば別段、相手にこだわる必要はない、か。
「そうなると相手だが・・・」
モンスター同様、明らかな格下相手じゃ意味がない。
同等かそれ以上・・・となると、すぐさま思い浮かぶのは二人。
片方はそれどころではないだろうが、もう片方は・・・断らせなければいいか。
「どなたか、心当たりでも?」
「わかるか?」
「悪い顔してましたよ!」
「はは、そうか」
久々の手合わせだ。
だからだろう。決して、いつぞやの借りを返そうなどと・・・そんなことは断じて考えてなどいない。
「明日も朝一でいいか?」
「大丈夫なんですか?」
「ああ。問題ない」
「その顔で言われると不安なのですが?」
「でも、その顔が冒険者らしい顔なんですよね!」
「もちろんだ」
「そのようにだけはなりたくないものです」
「安心しろ。お前にならよく似合うだろうよ」
「どういう意味でしょう?」
「さぁな?」
紫がかる空の下を笑いながら歩いた。
「教官。明日の朝一で模擬戦やりますよ。準備しといてください」
「いきなりなんだ⁉ それも明日だと⁉」
「んじゃ、そういうことで」
「待て待て待て‼ っておぉい⁉」
ノックの返事も待たずに開け、相手の言葉も聞かずに閉めた。
今日は気分よく眠れそうだ。