軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

スカシ顔と迷路

「こっち」

と言われて案内されたのはついさっきエイラが指差していた店。

「客だよー」

俺から受け取った袋を両手で大事そうに抱えたまま、誰もいない店の中に声をかける。

この店・・・っつーか屋台に近いな。客が中まで入れないようになっている。店主が商品を受け渡すだけの形の店。なのに、店主はなかなか現れない。

どうなってんだ? そういう抗議の意を込めて少年に視線を送ると、他の子供たちに串焼きを分けながら、幸せそうな顔でかぶり付いていた。

俺の視線に気付くと恥ずかしそうに顔を背け、

「ん!」

こっちまで戻ってきて店の中を、手に残った串で指して・・・

「旗!」

苦し紛れに言い残してそそくさと離れる。

その棒切れが示した先にあったのは洗濯物。

「旗ね・・・」

「・・・そうだな」

洗濯物として干されていた服には旗の印が入っていた。

「――ふふっ」

先に噴出したのはエイラだ。

「っ、っ! 笑うなよ」

「そっちこそ! なによ、傍から見れば~・・・って! なんの関係もないじゃない‼」

「ああ! 全くの見当違いだったな!」

久々の大外れ。

掠りもしなかった推理に、俺達は腹を抱えた。

だがまぁ、頭を抱える羽目にならなくてよかった。結果としてはなにも変わらなかったわけだからな。

しばらく込み上げる笑いに付き合っていると、店の奥の扉が開く。

「入んな」

中から出てきたのはガラの悪そうな女。

顎をクイッとやって俺達を中へ誘う。

こうなっちゃ仕方がねぇと、笑いを噛み殺し女へ従う。

扉の奥へ進むと。そこは確かに迷路のようになっていた。

地面は砂地。周りには中になにが入っているのか予想も出来ねぇ箱が積み立てられ、それによって作り出された通路は細く入り組んでいる。布張りの天井は中途半端に光を遮り、視界は暗く足元さえ危うい。

まだ昼間だってのに、この仄暗く曲がりくねった道は案内なしだと迷いそうになる。

総当たりで回れば最奥まで行けるだろうが、その間に中にいる奴には逃げられるだろうな・・・なんてことを考えながら、無駄に入り組んだ細い通路をよく眺める。

天井が高い。

ここの貧民街全体に言えることだが、2階建てでもなけりゃ必要ねぇはずの高さ。にもかかわらず、階段なんてもんは見当たらねぇ。

あるのは頭にもかからないような位置に干された洗濯物。

こんなに狭い通路であっても、構わず斜めに干されている。

なにか意味があるんだろうが・・・。

だが、曲がる場所には三角の布。見ようによっては旗か。

目印ってのはこっちのことだったか? いや、どっちもか。

現に俺達は目的の場所へと辿りついているわけだしな。

それはそうとしても、あのおっさんは今度顔を見たら一発殴るけどな。それが許されるぐらいには紛らわしい話し方をしてやがった。

「ねぇ・・・」

「あぁ」

くだらねぇことを考えている間に、上の洗濯物を見て、エイラがなにかに気付いたようだ。

たぶん、それは俺も同じことを感じていた。

ただ・・・だとしたら、おかしな話だ。

俺達からすれば都合のいい起点になるだろうが、向こうの意図が見えない。

わざわざ見せる意味があるのか? なにかの暗喩とか?

そこまで思考を巡らせたところで、

「ここだ」

布によって遮られた向こう側に、小さな空間があった。

中央には机代わりの箱。

その周りには椅子にしろと言わんばかりの樽。

上座にだけは多少座り心地のよさそうなボロのソファ。

つっても、鼠の王とやらの姿はない。

まだソファの後ろには布が張られている場所がある。だから、あの奥のどっかに隠れてやがるんだろう。

それをどうやって引きずり出したもんか?

悩むより先に、

「それで? なんのようだい?」

ここまで案内したガラの悪い女がザっと振り向き、ボロのソファにドカッと座る。

一瞬、反応が遅れる。

しかし、それだけで向こうにはわかってしまうことがある。

「なにも知らないでこんなところまで来たのか?」

心底呆れたような声で、目を丸くしてそう言われた。