軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

抜け道、謎解き

3カ所、4カ所と衣服の吊るされた場所を見て回る・・・が、それらしい目印は見つけられなかった。

1人、2人と子供達も満足し始める。

「どう? それらしいものは見つけられたかしら?」

そんな状況は一緒にいるエイラにも見抜けることで、抜け道を見つけるより先に、串焼きか、あるいは子供たちが興味を示さなくなるんじゃないか? と聞いてくる。

「いいや? まったくだ」

だが、なんの収穫もなかったってわけじゃねぇ。

現状を理解して尚、余裕を見せる俺の態度が気になるのかエイラは続ける。

「だったら少しは焦るべきなんじゃない? なにも見つけられないで困るのはあなただけなんだから」

「見つけたところで役に立つかどうかは微妙だけどな」

それに俺は適当な返事をしながら周りを見渡す。

洗濯物が干されているのは全て中道。

空中に縄を張って布をかけて作った天井の下、建物から建物へ。繋げるようにして洗濯物は干されている。

それ自体は珍しくもない。

地方によるんだろうが、よく見る風景ではある。

気付いたのは洗濯物の干し方じゃぁなく、その建物の形。もっと正確に言えば、その建物が作り出している空間だ。

この貧民街は長方形に出来た通路が幾つも集まって形成された街。

ほとんどが同じ間隔で出来てるのは同じ大きさの建物が集まってるから。

しかし。そこだけは外観こそ同じだが、中道までの間隔が違う。

明らかに、そこだけが長い。

中道の長さは代わらねぇようだが、内側の面積はかなり差が出るはずだ。

「ここはいつもこうなってるのか?」

「わかんない!」

前を歩く子供たちに聞いてみるが、全員が悉く、声を揃えてそう答えた。

「どうするの? また始めから別の方法を考え直してみる?」

「たぶんだが・・・その必要はねぇよ」

どういうこと? と首を傾げるエイラを横目に、壁の近くに佇む子供に注目する。

貧民街の子供と言えば飢えていて当然。

いつも道行く誰かの隙を窺うように影から覗いている。

なにか出汁になるようなものはないかと、注意深く、一挙一動を逃さないとばかりに目を光らせている・・・はずなんだ。

全員とは言わねぇが、それが普通だ。

そうでなきゃ、こんな劣悪な環境で生き残ることは難しい。

正しい大人なんてのはおらず、優しい大人なんざ幻想でしかなく、頼りになる大人は仮面を被った詐欺師に等しい。

それが貧民街の常識。

なのに―――この一角。

その周りにいる子供はこっちを見てねぇ。

いや、意図的に見ねぇようにしていると感じる。

「なにかあるな」

「なにかって? それよりさっきの話だけど・・・」

「条件だ」

「条件? なんの?」

「抜け道のことだ。目印は洗濯物に隠れた旗。だが、それらしいものはなかっただろ?」

「えぇ。だから探し方に問題があったんでしょ?」

「いや、十中八九。場所はここであってる」

「どうしてそんなことが言えるのよ?」

途中で立ち止まった俺達を、子供達が不思議そうに見てる。

「どうみても怪しいだろ。他はほとんど背中合わせのボロ屋だってのに、ここだけは側面にまでボロ屋だ。内側の面積が桁違いだぞ」

「ここは変な、店? みたいなのがあるから、裏を倉庫みたいにしてるんじゃないかしら? ほら、1軒ってわけでもないみたいだし」

エイラが指差すのは中道に入ったところに開いている店だ。

この店の反対側の中道にもよくわからねぇもんを売りつけようとする店があった。

だが、

「あの壁。どう思う?」

「どうって・・・ただの壁じゃない?」

「あんな中道に入った中途半端な位置じゃなく、こっちの表通りに面した辺りに店を開いた方が客が入るんじゃねぇか? しかも。ここはただの壁だ。誰も文句なんざ言わねぇだろ」

「それは・・・確かにその通りね。でも、なにか理由があるんじゃない? 元はここもお店だったとか」

「それこそおかしいだろ。店をたたむのに壁にする必要はねぇ。ここは貧民街だぞ? 無駄な労力は使わねぇ。もしここにも店があったんなら、店主が変わるだけだ」

「じゃあ先にこの壁を作っちゃったとか?」

「住む場所もねぇのに先に壁から作るか?」

本来、貧民街にある壁は結果的に出来上がったものだ。

そこに住むために集めた廃材が壁になるのが普通で、壁として壁を作ることなんざありえねぇはずなんだ。

そんな余裕があるんなら、貧民街だなんぞと呼ばれちゃいねぇ。

「旗・・・か」

うーん。と俺の質問になんとか切り返そうとエイラが頭をひねっているが、俺は一つ。気になったことを子供達に聞いてみる。

「お前らはこいつのこと知ってるのか?」

「ん? えーっと・・・」

子供達はその質問に困ったようで、お互いに見つめ合いながら首をひねる。

「今までに会ったことは?」

「あるよ!」

「名前は?」

「知らない・・・」

そんなに目を逸らところで、その嘘は通らねぇぞ?

「なぁ少年、道案内をしてくれねぇか?」

こちらを見ようとしない子供に。傍から見ているだけだった少年に。

俺は声をかける。

「それ。全部くれるなら、いいよ」

指差すのは俺が抱えた串焼きの袋。

中身は依然、残ったままだ。

俺はなにも言わず、ただ袋を差し出す。

どうやら”はた”と聞いて、俺は別のものを想起していたらしい。

あのおっさんも紛らわしい言い方しやがって! 洗濯物と~っつーから、まんま旗かと思っちまったじゃねぇか!