作品タイトル不明
餞別2
「そんじゃ次は・・・エイラ!」
「私から? なにかしら?」
こっちには4人分入っているせいで、さっき片付けたのより一回り大きい背嚢から小さな腕輪を2つ取り出す。
「お前にはこの魔法盾だ」
「魔法盾! キューティーが使ってるやつね?」
「あぁ。腕輪型で両手首に付けれるよう2つな。元は馬鹿デカい剣を振り回すのに両手を使ってたやつの保険だったんだが、そいつは類稀なる身体能力と強化魔法で無理やり回避するようになって要らなくなったんで俺が引き取ったもんだ。お前はお前でアイツとは別の理由で両手を空けておいた方がいいだろ?」
「確かに両手が空くのはありがたいんだけど、2つも必要かしら?」
「1つでも性能は十分だが、咄嗟の時に発動しやすいよう両腕につけておけ。魔力を通してから発動まで、効果範囲が近いほど展開も早いからな」
「2つを同時に使って二重に展開したりも出来たりはする?」
「出来はするだろうが、使いどころがあるかは謎だな。それなら自分と仲間に2つ張る方がまだ使う場面があるだろうな」
「ああ! そっか! 遠隔でも発動できるんだったわね!」
「慣れが必要だけどな。まぁサポート役のお前ならすぐに出来るようになるだろ。強化魔法とそんな変わんねぇしな」
基本的には魔法盾を内蔵した道具、この場合は腕輪だな。を中心に発動するからちょっとしたコツが必要になるんだが、強化魔法とそう違わないから大丈夫だろう。
「話に出たし次はキューティーにしておくか」
「私ですわね! いったいなにを頂けるのでしょう?」
「そんな大したもんじゃねぇよ・・・」
そういいながら引っ張り出したのは1本の剣だ。
「これは・・・?」
「昔クライフに貸してた剣で、元は俺の母が使ってたんだと。俺達が冒険者になったばかりの頃、実家にあったから拝借してきたんだが、皇城の倉庫や宝物庫の中の代物と比べてもかなりいいもので、かつ実用向きだってことでしばらく使ってたんだが、いつまでも借りっぱなしは~ってことをクライフが言い出してな。お役御免になった後は、また倉庫の片隅で埃被ってたんでかっぱらってきた」
「それは本当に頂いて大丈夫ですの?」
「大丈夫だ。母には後で了解を得て貰ったもんだ。クライフにもそういったんだが、アイツもアイツで自分の装備が欲しかったんだろ。装備を新調する時に返してきてそれ以来だ。その剣も、倉庫で朽ち果てるよりは戦場でへし折れた方がまだマシだと思ってるだろうよ」
「折れてしまっては困りますのよ‼」
「手入れはしてきたから大丈夫だ。不安なら鍛冶屋にでも持っていけ」
キューティーは不安気に剣を鞘から引き抜いたが、その白刃には陰り1つも見当たらない。細くもしなやかで、それでいて力強さを感じさせる刀身にうっとりしているキューティーは満足そうに下がっていった。
「そうだな・・・ケイトを先にするか」
「私、ね・・・」
ケイトへの餞別はある意味一番悩んだ。
なにしろ俺にとって魔法は縁遠いものでもあるからだ。特に攻撃系の上級魔法なんざ使えもしねぇからな。
そして、迷った挙句決めかねた俺は碌でもねぇもんを持ってきた。
それが―――。
「本? でも、魔導書ではない・・・かな?」
「あぁそうだ。魔導書だとかそういうちゃんとしたもんじゃねぇ。そいつはとある変態の書記だ」
「・・・・変態の書記」
言われて、両手で胸元に持っていた本を摘まむように持って身体から離す。中身を見るのも怖いって顔だな。
「そいつの名前はジーナ・V・マーラグ。”全ては魔法の上に”っつー魔法使いと魔法研究学者達を束ねるような組織のリーダーであり、魔法研究の一人者でもある。魔眼持ちの変態だ」
「あのジーナ・V・マーラグの⁉」
落としそうになった本をガッチリ掴み、驚愕の表情で睨む。
「恐らくはそのジーナだ。他にあんな奴が居ても鬱陶しいだけだからな」
「ゼネスさんはジーナ様と知り合いです⁉ そういえば以前にも、なにか言っていたような気がしたけど‼」
「あんまり知られてねぇがアイツも一応は冒険者だからな。っつーか、全ては魔法の上にってのは元々アイツが率いてたパーティーの名前だ。女を理由に既存の学会じゃ認められねぇからって、女ばかり集めて独自の学会を開くとか言ってからは冒険どころじゃなかったようだけどな」
「でも、あんな凄い人の書記なんて、私がもらってもいい・・・のかな?」
「いいんじゃねぇの? 俺に押し付けてきた時点で、本人にとっちゃもう要らねぇってことだろうしな」
ケイトは一人で。いや、でも、そんな! と百面相をしちゃいるが、喜んでもらえたようでなによりだ。
俺としても処分に困ってた代物だ。勝手に捨てるのも気が引けた。押し付けられたっても、貰いもんだしな。
欲しいって奴に渡したんならアイツも嫌味は言って来ねぇだろ・・・と思ったが、アイツはなんだかんだネチネチ言ってきそうだな。人様にくれてやったことは内緒にしておくか。わざわざ言わなきゃバレねぇだろ。
で、最後に残ったのは―――受けて立つとでも言わんばかりの仁王立ちを決めるジェイドだ。