作品タイトル不明
喜びよりも疑問と戸惑い
レベルが上がる喜びなど、とうの昔に忘れて久しい。
なんなら実感がない。
いやだって、そうだろ? もう10年以上だぞ? なんで今さら?
冒険者を引退して、後進を育てようって手を尽くし、知恵を絞っているこのタイミングで?
そう思うが、心当たりはある。
魔力吸収の件だ。
今のところ。実験では、自身の魔力なら回収できるが、他の誰かの魔力までは吸収できない。
回収もしくは、吸収によって魔力の最大値を超過も可能だが、自身の魔力でしか起こせないなら使い道に乏しい・・・っていうあれだ。
アレが俺に欠けてた要素だってのか?
だとしたら、到底納得は出来ねぇけどな。
俺に限れば”自身のみ”って条件はねぇから色んな意味で有用な技だとは思うが、かといってそれだけで俺は自身の能力を引き出せていないって判定されてたのか? ってなると、どれだけ魔力量の低さが足引っ張ってんだよ! って話になっちまうからな。
なんでそうなるかって・・・魔力を吸収するだけでいいなら、魔力の最大値が多ければ必要なかっただろって。つまりはそういうことだ。
なにしろ吸収できる対象が魔法道具ぐらいなんだからな。
敵から直接吸収できるってんならまだわかる。使い方にも幅が出るからな。だが、道具からだけってなると話が違う。結果的に扱える魔力量が増える以外の効果がねぇからだ。
「おめでとうございます! で、いいんですよね? 先生の表情からはあんまり嬉しいようには見えないですけど・・・・・・」
「どうなんだろうな? 俺にもわかんねぇよ。一番の感想でいいなら、やっぱ今さら? ってとこだが」
「あぁ、やっぱりそうですよね・・・でも、原因? ってなんなんですかね? 最後の更新っていつだったんですか?」
「最後の更新か・・・確か、ギルドで教育係になった時だな」
「僕達に会う直前じゃないですか⁉ 半年以上前ですよ? なんでそんなに更新してなかったんですか⁉」
「なんでって、そんな頻繁に更新する理由がねぇからな。俺はギルドの職員で冒険者じゃねぇんだぞ? ステータスの変化なんざ逐一確認したって意味ねぇだろ」
誰に誇るわけでもなく、見せることもない。だったらそんなギルドカードを更新する必要があるか?
「それはそうかもしれないですけど! でもそうなるとレベルがあがった理由が・・・」
「つーかよ。その簡易鑑定機とやらを壊れてねぇって言ってたけど、なんでそんなことが言い切れんだよ? 普通は作った時に動作テストをしてるからだろうけど、だったらアンタのカードはその時に更新されてるはずなんじゃねぇのか?」
「あぁ。動作テストはサンパダのカードでやったんだ」
「サンパダさんって商人でしたよね? 冒険者でもあったんですか?」
「いや、商人ギルドにも同じようなギルドカードがあるんだよ。内容は随分違うがな。それで、そっちの方が更新した時の内容がわかりやすいし、俺のカードを使って変化がなきゃ、正常に動作したかすらわかりませんでしたっつーことになりかねないだろ?」
「それもそうですね。あ、商人ギルドのカードってなにが表示されるんですか?」
「所属してる商会の名前とか、ギルドへの貢献度とか、ギルド金庫への預入金額とかだな。頻繁に更新するもんだから向こうは基本的に更新は無料だし、純粋な足し算や引き算だから更新した時の数字が間違ってるかの確認もしやすいってんでそっちを使ったんだ。一応、冒険者ギルドのカードもやっとくかってことで、蒸気の騎乗者達のギルドカードも更新したが、そっちも異常なしだったから、壊れてはねぇはずなんだけどな」
そうは言ったものの、あまりにも信じ難いものばかりだったので、皇都に着いたら俺持ちで全員のギルドカードを更新し直すことにした。
「・・・結局かよ」
と、ジェイドは最後までなぜか不機嫌な様子で、どこか拗ねているようにも見えた。