軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

相見える3

「まだ続けるつもりか?」

最後の兵士をエイラが投げ飛ばしたところでゴルドラッセに聞く。

本当に、あっという間の出来事だった。

エイラの危機を皮切りに。全員がこれ以上ないと言えるタイミングで、ほぼ完璧な連携を見せ精鋭達を圧倒。

大多数は雷をまとった雨に打たれて失神。残った少数もキューティーを筆頭にエイラとヨハンで転がした。

俺が特別なにかしたわけじゃねぇが、立場上は俺が指揮らしいからな。終わらせられるのは俺とゴルドラッセになる。だから俺は聞いたんだが・・・。

「それは、こちらの台詞ですな。いつまでこんなことを続けるおつもりなのです?」

悪びれる素振りもなく、ゴルドラッセが聞き返してくる。

「お父上への反抗なのかはわかりませんが、こんなことをしたところで仕方がないでしょう? そちらの方には消えてもらうつもりだと言っておられましたが、いかがするおつもりです? この領の人間はおろか、軍内部にも協力するものなどおりませんよ? それでどうやって―――」

なんつーか。こういう反応をされるとジェイドがムキになる理由がわかるな。どこまで行っても子供の使いみてぇに。あるいは、わざとなのか?

「そんなもん言われるまでもねぇよ。こいつだって、こんな国に長居したくはねぇだろう」

解放されてからはずっと後ろにいたカーナを親指で指示しながら、心情を勝手に語る。

まぁ。不当な扱いを受けて、あげく殺されそうになった国に長居したいなんて奴が居ればそれはそれでお笑い草だが。

「だから、この国から消すって言ってんだよ―――ほら、来たぜ?」

一昨日からと考えれば随分と待たされたが、緊急連絡からと考えればこんなもんか?

谷の向こう側。

碌に見えやしない道のさらにその奥から、バタバタと。はためく旗の音が谷へと反響する。

それらは近付くにつれ数を増やし、音を重ね、対岸を埋め尽くすころには。まるで目の前に旗があるのかと言いたくなるほどのうるささだ。

「我らは帝国騎士団‼ 約束通り、捕虜の解放を願う‼」

見るからに重そうな鎧で身を固めた連中を横に並べ、馬にまで鎧を着せたその馬上から、より一層重そうに見える鎧が高らかに宣言する。

よくこれだけの騒音の中で負けねぇ声を張り上げられるなと感心するが、

「どうする? 止めて見せるか? そこで寝転がってる奴らだけじゃ、足りねぇと思うが」

こっちもそれに合わせて声を張り上げる必要はねぇ。あくまでも俺の話相手はゴルドラッセだ。

「その必要はありませんな。第一、どうやって捕虜を向こう側まで運ぶおつもりです? もし、飛行の魔法などを使うのでしたら、そちらを妨害すれば済む話。かなりの集中を必要とするはずです。それならば、私1人でもなにも問題はありません」

「そうだな。飛行の魔法だったら、なぁ?」

翼もねぇ人間を強風吹きすさぶ谷で浮かせて対岸まで運ぶには、かなりの魔力と相当な集中力が不可欠・・・だが、俺には関係ない。

ずっと、この場所に来た時から感じていたんだ。足元にある存在を。

「・・・なにか策でも?」

「策はねぇさ。お前も、危ねぇ橋だと思うよな?」

訝しむゴルドラッセに説明する義理はない。俺は地面の中、足元に埋められている魔法道具である跳ね橋の駆動装置へと魔力を繋いで、強制的に橋を動かす。

「――⁉ どういうことです⁉ 監視塔には誰が⁉ なぜ橋を‼ まさか――ッ‼‼」

こいつのこんな慌てた姿を見るのは初めてだな。

「さぁ、どうだろうな? だが、この橋を渡れば。こいつはこの国から消えるな?」

「いかせませんよ‼」

「それはこっちの台詞だってぇんだよ‼」

素早く走り出そうとしたゴルドラッセの前方を塞ぐようにジェイドが躍り出るとその仲間達。

「ええい‼ なにをしているのです‼ 早く立ち上がりなさい‼ 敵が逃げますよ‼」

痺れを切らすようにゴルドラッセが叱咤するが、倒れる兵士達の痺れは切れない。中にはビクリと痙攣している奴すらいる。

ゴルドラッセの進行を食い止めるジェイドから、

「早く行け‼」

と言われ、どうにか踏ん張るジェイド達を尻目に。ガシャン! と架かりきった橋へと向かう。

「本当にいいの? アタシに生きてられちゃ、なにか困るんじゃないの?」

その途中、どちらかといえばうるさいというか、騒がしい印象のあったカーナがしおらしくそんなことを言うが、

「見ろ」

橋から要塞を振り返れば、その下には手を振る我が甥の姿。

「誰もがお前に死んでほしいとは思ってねぇんだよ。例え敵であってもな。むしろ、ほとんどの奴が興味なんか持ってねぇよ。うぬぼれんな」

「・・・・・・そっか。でも、アンタは大変なんじゃないの? あの人とか、超怒ってるし」

「敵国に単身で乗り込んできたお前より大変な奴なんざいねぇよ。それに、生き方ぐらいは自分で選べる。アイツがどんだけ怒ってようが関係ねぇよ」

元々、家に収まるつもりもなかった。勘当だってんならそれでもいいだろ。

家名が使えねぇのは多少なりとも不便かもしれねぇが、まぁそこはその時考えりゃぁいい。

俺は俺が。後悔しねぇ選択をするまでだ。