軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

重ならず者2

「くっ⁉ 自由にさせるな‼ 取り囲め‼」

誰がそう言い出したのか、隊列の端で遊んでいた俺のいく先を塞ぐように、残りの兵達が陣形を変える。

「いいのか? 上官の命令に逆らって」

「そちらに言われる筋合いはない‼」

凛々しく言って見せてはいるものの、冷や汗が隠せてねぇ。

手前にいた1組2列が円状に広がり、俺を逃さないようにと囲う。槍を持った連中が前、魔法待機が後。ここは変わらない。

だが、臨機応変といえば聞こえはいいが、言い方を変えればその場しのぎの出たとこ勝負。今までの経験を捨てるに等しい行為だ。

想定してない状況で、訓練したことのない陣形。これではボロが出るのも早く、穴を突くのも容易いのは言うまでもない。

それより、残る1組と控えるゴルドラッセが気になっていた。いくら簡単に崩せると言えど囲いは囲い。抜け出すまでの間に、後ろにいた捕虜を任せたジェイド達に手出しをされると面倒だと思ったからだ。

しかし、見ている限り。全員が視線を送るも介入の姿勢は見えない。それどころか、ゴルドラッセからの命令もなし。軽く確認した感じではジェイド達が優勢に見えるんだが・・・それでいいのか?

唯一の懸念は実行される様子がない。

なら、俺も目の前のことから片づけることにしよう。

「死ねぇええええ‼‼」

えらく率直な言葉で突き込んでくる精鋭兵。こんなでも一応はここの領主の息子だぞ? まぁ敵に発するには間違った掛け声じゃねぇけどさ。

とはいえ、ただの突きが当たるわけがない。

槍での突きという行為は近接攻撃においてかなり優秀だ。他の武器種と違い、振りかぶる必要がないから。

構えた状態から腕を前に押し出すだけ。初動も見辛く攻撃自体が早いため避け辛い上、連続して繰り出すことに無理がない。非常に優秀な攻撃だ。

だが、突きという攻撃の性質上、攻撃範囲は狭い。だからこその連続攻撃や連携・・・のはずが、

「うぉおおおおおお‼‼」

ほとんどずっと1人で前に出てくる。

いや当然だ。

槍という武器は長い。長い故に振り回しがし辛い。特に、周りを味方が固めてちゃぁ身動きなんざ取れるわけがねぇんだ。

他の連中は味方の邪魔にならねぇように。精々真後ろにいる奴が牽制程度に突きを見せてくるぐらい。援護の攻撃魔法もそうだ。

取り囲むという陣形のせいで、対象は直接見辛いせいで狙いにくく、仲間の壁が前にあるんで上からか下からしか攻撃できない。

しかも下からの魔法で地面を崩したりすれば、一番被害を被るのは味方。っつーことは、必然的に魔法は上からしか来ない。

これが臨機応変の弊害。あるいは、想像力の欠如か。

1人で前に出なければ、敵の動きに合わせて一番近いものだけが突きを繰り出せば、敵を中央にとどめることが出来ただろう。さらにそこへ魔法を降らせば、足を止めさせた上で突きへの対応を押し付けられただろう。

そこまで出来れば、万に一つの可能性ぐらいはあった・・・いや、ないか。それでも俺が負けることはねぇ。

今と同じように、薄い魔力障壁を球のように広げて、その中に入ってくる槍の動きを察知し回避。魔法については、頭の上に傘代わりの魔力障壁を展開してりゃぁ直撃はありえねぇ。

だから、どっちにしろ結果は同じか。

「はぁあああああああ‼‼」

「いい加減にしろって!」

しつこく出突っ張る馬鹿の槍先を掴む。

「なんだとッ⁉」

「なんだと⁉ じゃねぇよ‼ ったく・・・」

そのまま槍を引っ張りながら、前につんのめっている胸を蹴り飛ばす。

すると、兵は槍を離して1人で吹っ飛ぶ。

俺は奪った槍を軽く振り、感触を確かめていた。

ここの槍は持ち手も硬くほとんど撓らない。そのせいで小技も効かないが、鈍器代わりにはちょうどいいだろう。

「武器を振り回しても敵にしか当たらねぇ俺と、武器なんざ振り回したら味方に当たっちまうお前らと・・・どっちが有利だろうな?」

吹っ飛んできた味方にぶつかられ倒れ込む、その穴だらけの空間をどうしようかと焦る連中を前に、脅し文句の声を1つ掛けてから俺は。

力強く、1歩を踏み出した。