軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side――グラン2

正直な話、心配していた。

領を出て学園に通うと聞いた時も。学園の卒業と同時に冒険者になると言い出した時も。冒険者をやめて後進の育成に回ると聞いた時も。

色んな意味で常識外れの弟にそんなことが出来るだろうかと。

そう思っていた。

しかし、

「”なにを信じるのかは自分で決めろ”ってのがアイツの教えだからな」

「そうね。信じて欲しいって言われたときに考えるんじゃないかしら?」

「でも、たぶん。そんなこと・・・言わない」

「だから好きにさせて頂くのですわ!」

「それに。どっちを選んでも先生なら許してくれると思うんですよ」

「まぁ敵に回れば、手加減をしてくれはしないのでしょうけれど」

「「「確かに」」」

それは間違いだった。

ゼネスは――・・・我が弟は自らの足で立派に歩いていた。

恵まれてはいなくとも。誰かに用意されたものではない道を。自分の望んだ道を。その手で切り開き、生きていた。

苦労していて欲しい。私のように。

上手く行かないで欲しい。私のように。

私は・・・どこかでそう思っていたのだと。気付かされた。

きっと。全てが順調だったわけではないはずだ。挫折を味わったから冒険者を引退したのだろう。そこに苦悩の日々がなかったなどと。そんなはずがないのに。それを棚に置いて私は・・・。

ゼネスはこんなことを考えたりしないだろう。

いや、他人のことなど気にしているほどの余裕がないのかもしれない。

それなのに。私はそんな弟に縋り、1人助かろうとしていたのか?

己が器の小ささが嫌になる。

であれば、今の私に後出来ることといえば。

「どうか、当日。なにがあっても。アイツのことを嫌わないで居てくれ」

そう言って頭を下げることくらいだった。

「どういうことでしょう?」

いきなり立場の高いものが頭を下げれば、皆混乱する。そんなことはわかっているが、もうその程

度のことしか私には出来なかった。

「公開処刑のことは聞いているかな?」

「一応ですけど、聞いてはいます」

「誰が対象とされるかも?」

「帝国の捕虜だろ? 変な爺さんが言ってた」

「そうだ。そして、ここにいるバロンが執行人を務める」

えっ⁉ と振り向く彼らにバロンが一礼する。

「どうしてそのようなことになっているのでしょう?」

「慣例だよ。私も。もちろんゼネスも経験済みだ」

「それは、つまりその・・・人を・・・?」

「ああ。処刑している」

「でもそれは昔のことなんですよね? なのに当日って・・・先生になにか関係があるんですか?」

「詳しくはわからないが・・・・・・バロン?」

傍らの息子へ聞くと、

「叔父様は―――・・・・・・」

食卓までの経緯を説明した。

牢屋への侵入と本人との会合。その人となりを観察の後、生殺の判断はバロンに委ねるとなったこと。それとは別に、打つべき手を用意しておくと言っていたことがわかった。

息子に密偵のようなことをやらせているという自覚はある。我が子をいいように使うなど、親としては心痛いが。貴族としては当たり前。気持ちの区切りが難しいところだ。

「けど、それだってさ。なにがどうなるかは当日まで誰にもわからねぇんじゃ・・・?」

「そうでもないんだ。ゼネスが動くとなれば、あまり見てくれのいい結果にはならない」

「どうしてかしら?」

「アイツはこの慣習・・・いや観衆を、かな? とても嫌っているからね」

「どう・・・違うん、ですか?」

「ああ、すまない。結果としてはなにも変わらない。恐らくだけれど、昔と同じことが起こるだろう」

「その昔と同じこと、というのはどういうことですの?」

「―――頭を割るんだ。処刑台の上で、罪人の」

「頭を・・・ですか?」

それなりに覚悟を決めて放った言葉だったのだが、反応が薄い。

「そうだ。本来ならば首を落とすところを、アイツはわざわざ斧を横に振って、この・・・目の辺りから頭を真っ二つに叩き割るんだ。当時。それはもう酷い有様で・・・」

あれだけ人の死に熱狂していた観衆を黙らせるだけの凄惨さがそこにはあった。

あれはゼネスなりの意思表明だ。

お前らが望む結末は用意してやる。だが、望んだとおりの展開にはしない。正当さを謳うなら、悪辣さを笑え。とでも言わんばかりの。

だから今回も同じことをするだろう。

なにせ、あれから時間が随分と時間が経ってしまった。

また。戦争を望む声が上がっている。他人の残虐さも知らない世代からだ。

アイツはそれを許さない。

だというのに、

「領主代行様はサードアイというモンスターはご存じでしょうか?」

「いや?」

「そのモンスターは皇都の付近にも生息しているモンスターなのですが、珍しい生態をしているのです」

「それがどうかしたのかい?」

「ええ。サードアイは他のモンスターに寄生して生きるモンスターなんです」

「寄生⁉」

「はい。ですので、本体を討伐した後でも、頭に3つ目の瞳がある場合には、その瞳を潰して抉り出す必要があるのですが。その時に宿主にされたモンスターの脳が一緒に引きずり出されることもあるんです。なので、その程度のことでどうということはありません。御心配ありがとうございます」

一番小柄の可憐な少女が笑って答える。

「解体も人任せだと金がかかるしな」

「死体の処理についても言われたわね」

「そうだったね。ちょっと、懐かしい」

「今となって完璧ですわ!」

「まだ解体したことないモンスターの方が多いんですから! 完璧とか言うと先生に笑われちゃいますよ⁉」

そんな世代などより、ゼネス。お前の教え子達の方が、よほど肝が据わりすぎているのはどういうことなんだ?

「・・・存外、冒険者と言うのは大変なものなのだな」