軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

旅立ちに向けて

夜が明け、俺は忙しなく歩き回った。

パーティーを抜けて冒険者を引退する。となれば、手持ちのほとんどのものは必要なくなる。

隊商に同行するといっても、皇都まで二月程度はかかるだろう。ならば、必要なものは道具類ではなく金になる。荷物ばかりあっても管理するのは自分だけ。それならば、いっそ必要最低限以外は金にしてしまって、必要になったものをその都度隊商から購入した方がいい。

そう思って、金になりそうなかさばるアイテムたちをできる限り売りさばいていった。

「全部でだいたい2500万ガルドか」

重くなった財布をしまい、手元に残った荷物を見る。

「残りはどうするかな?」

あらかたは高く買い取ってくれるところにまとめて売って回った。一か所で全部を放出すると色々問題になるため、朝からあちこち歩きまわる羽目にはなったが、まぁ結果からみれば上々だろう。

しかし、流石に全部処分というわけにもいかない。

なぜなら、手元に残ったものの中には珍しいモンスターの素材などが多く含まれているからだ。

パーティーで狩ったモンスターの素材、その中でも珍しいものとなれば単純に手放すのは惜しくなるし、少量だけ流すと市場が壊れる。

「ギルドに話を通して工房でも借りるか」

装備の修理・補強なんかは冒険者の 嗜(たしな) みだ。旅先で困らないために自分で、ある程度メンテナンスできるようにしておくのが定石。だが、作成・錬成などまで出来る物好きもいる。

俺はそういう物好きで、そういう奴のために冒険者ギルドが工房を所有していたり、設備のある所と契約していて借りれるようになっている。

引退するとはいえ、まだ冒険者。使えるものは使っておくか・・・と、軽くなった 背嚢(リュック) を片手に冒険者ギルドへ向かった。

「―――こんなもんか」

サイドテーブルの背嚢を見る。

残っていた素材も最早一つ残らず使い切った。

まだ朝が早いからか物好きが少ないからか、誰もいないギルドの工房を大胆に使ってしていた作業も終わりを告げた。

作った装備たちを背嚢に突っ込み”使う前よりキレイに‼”という張り紙に従って、広げた道具を片付けた。

「ありがとう。使い終わったよ」

「ちゃんとキレイにしましたか? もし出来ていなかったら次回以降貸し出しが難しくなりますからね!」

「ああ、問題ないよ」

「それでは後で確認させていただきますね。ご利用ありがとうございました」

ギルドの受付に挨拶して外に出る。

そろそろ太陽が頂点に至る頃だ。

「必要なもんのついでに飯にしますか!」

一つ伸びを入れて賑わいの方を目指した。

「急な申し出を受けていただいて、ありがとうございます」

「いえいえ。困った時はお互い様、ですよ」

「ありがとうございます。それでは明日から、よろしくお願いします」

「はい。明日の朝、北側の門でお待ちしております」

何度か頭を下げてそのまま商会を離れる。

「こういう時、商人は利益に 聡(さと) いから助かるな」

何事もなく隊商に同行する許可を得ることが出来たのは、今朝やっておいた準備のおかげだ。

しばらく同行すること、その間の必需品の購入、モンスターや賊の襲撃時に護衛の手伝いを条件に話し、それを約束するための財布と背嚢を見せれば、そのままポンと許可が下りたのだった。

必要最低限の買い物と昼食、商会との交渉を終え、空を見れば間もなく夕暮れだ。

どうするか、と思っているとギルドカードに反応があった。

取り出して魔力を流すと”宿のロビーに来なさい”メッセージが浮き上がる。

”すぐに行く”と返信しながら歩いて向かった。

「案外早かったわね」

「そりゃ街の中にいたわけだしな」

「それもそうね。といっても・・・」

アンナが軽く周りを見る。

「ここまで早いと思わなかったから、こっちがまだ準備できてないわ」

「何のことだ?」

そもそも他には誰もいない。

「引退・・・祝い? っていうとおかしいかしら? お別れ会? とか? まぁなんにしてもパーティーよ」

「わざわざやるようなことか?」

「やりたいっていうんだからやらせてあげればいいじゃない。どうしてもイヤだっていうんなら別だけど?」

「イヤだってことはないんだが・・・」

普通パーティーから脱退者が出るときにパーティーを開いたりはしない。よほどのお荷物がいて他のメンバーが喜びのあまりパーティーを開くとしても、そこに脱退者を呼ぶなんてのは当てつけが過ぎるだろう。いや、ややこしいな!

「それで? お前はここで何をやってるんだ?」

「アタシは連絡係よ。クライフが会場手配、エリックが食材の買い出し、フェリシアは・・・教会から何だったかを借りてくるって言ってたわ」

「前二人はいいとして、フェリシアは止めた方がよさそうだな」

教会から借りてくるものに心当たりはないが、碌なことにならないのは長い付き合いからわかった。

「一緒に来るか?」

「いってらっしゃい」

ソファーにふんぞり返ったまま、満面の笑みで返された。

仕方がないので一人で教会に向かうと、フェリシアが何に使うかも分からないデカい 盃(さかずき) を周囲の人間に止められながらも持ち出そうとしているのを見つけ、瞬時に駆け寄り首根っこを掴んで宿まで連れ戻した。