軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

適性判断

「では、いきますよ?」

「いつでもいいぜ」

「火よ! 我が意に 添(そ) って―――」

「――待て待て!」

並々ならぬ気合いを見せるリミアを止める。

「どうしました? まさか、怖くなったわけではありませんよね?」

急に詠唱を止められたからか、いやに強気な態度を見せるが、そうじゃない。

「初級魔法を詠唱するな。そんなもん学園以外で使うことは一生ねぇんだからな」

詠唱は決まった呪文を唱えて魔法を強くしよう! とかそういうもんじゃない。

形のないものを作り出す工程で、頭の中に描く想像をより強固に、より鮮明にするために、想像を具現化しやすいようにわざわざ口に出すというものだ。

ただ、学園での教え方は逆で、呪文を教えることで想像しやすくしている。これは子供にも無理なく理解できるようにするためのステップで、それにより勘違いが起こりやすいデメリットも含んでいる。

それでもこの方法を学園で使うのは、初級魔法が正確に言えば初級”攻撃”魔法であり、子供にとって想像しにくい・・・明確に他者を 脅(おびや) かすという魔法だからだろう。

呪文があれば、敵を見据えなくても、攻撃する意思がなくても、言葉の通り想像し魔力を 手繰(たぐ) ることで魔法を使えるようになるからだ。

「目の前の敵を殺す気で撃て。攻撃魔法なんて全部そのためにあるんだ。遠慮はいらねぇぞ」

「ですが、無詠唱では発動すら安定しません」

「それが適性だ。自分にとって相性がいいってのは、想像しやすいってことだ。魔法においてはな。想像しやすいから魔力を込めやすいし、形も作りやすい。自由がきいて威力が高いってのはそういうことだ」

「なるほど・・・それが適性、ですか」

今度は両手を前に出したまま、目を閉じて構えるが・・・何も起きない。

「さっきも言ったが、目の前の敵を殺す気で撃て。この場合なら俺を初級魔法でぶち殺すイメージを思い描け。火弾なら燃えるだろうし、雷弾なら焦げるかもなぁ? 光や闇ならどうなるか・・・。そもそも、魔法使いなら形に捕らわれる必要すらない」

魔法を放ちやすいように、語り掛けるように話す。

適性判断のために初級魔法を使わせたのは呪文詠唱の勘違いを確かめるためでもある。

器用にこなせるならそれでもよかった。

火や雷ならまだしも、水や風なんか弾にしたところでほとんど意味はないが、それを瞬時に行えるなら当初の予定通り威力で測っていた。

だが、そうじゃないなら・・・勘違いを正すことで攻撃魔法を即座に使えないようなら、魔法が自由だってのを教えた方がいい。

そのためには、

「どうした? 腹の立つ相手すら殺す気になれないのか? それなら実家に帰って花嫁修業でもしたらどうだ? その 寛容(かんよう) さなら、きっといい嫁になるだろうさ」

怒らせるのが手っ取り早い。

詳しくは知らないが、この二人は実家といい関係ではないらしい。ならば、せいぜいダシに使わせてもらおう。

いつか俺が言われたように、

「遠慮してるのか? 安心しろ。ガキの魔法で怪我なんざしねぇよ」

大仰(おおぎょう) に、バカにする。

ピシリ、とリミアの眉間に稲妻が走る。

重く閉ざされた 瞼(まぶた) に 群(むら) がる暗雲が、

「バカに‼ しすぎです‼」

カッ! と光る瞳によって掻き消される。

同時に、眼前の光景が揺れる。

理解するより早く斜め後ろに引くと、すぐそこを激しくうねる水流が突き抜けていった。

「おぉ! いい感じだな? 他の属性でも試してみろ。水と似てるのは闇だ。影を伸ばすイメージならやりやすいかもな」

「・・・ハァ・・・ハァ」

反応がないなと見てみれば、思ったよりも疲れている様子のリミア。

初めて自分の想像だけで攻撃魔法を使ったからか? それも、全力を強調しすぎたか?

いずれにしても、続きは後になりそうだ。

「丸薬なめて座っとけ。次はヨハンだな。いけそうか?」

「あんまり自信はないけど、大丈夫だと思います!」

本当は先にヨハンからやらせてやりたかったんだが、意外にもリミアが乗り気すぎた。

そのせいで、才能を目の前で見せつけられる形になり、やる気をなくしたりしないかと思ったが、そんなことはないみたいだな。

自信満々・・・ではないが、やる気は十分だ。

どうしてくれるかなと思っていたところに、

「・・・・・・ハァ、待ってください」

消耗して休憩中のリミアが声を上げる。

「どうした?」

「なぜ・・・私の魔法を・・・避けたのですか?」

「なんだ、そんなことか」

確かに、防ぐと言いながら避けたのでは気にもなるか。

とはいえ、防ぐといったのは初級魔法で測定する場合だ。

さっきの方法は元パーティーメンバーに魔法を教える時にも使ったやり方であり、

「暴発して周りに被害を出さないように、お前の周りに壁を張ってたからな。俺の魔力量じゃ全部はカバー出来なかったってだけだ」

手っ取り早いが暴発の可能性もあるため、せめて周りを巻き込まないようにしたのだ。

あの時は大変だった。

魔法が暴発しても術者が死ぬことはまずないからな。周りが無事ならそれでいい。

「だから、最初から避けるつもりだったんだよ」

「・・・そこまでする必要が?」

「後が楽になるんでな」

意味が分からない。というリミアを置いて、ヨハンと向き合った。