作品タイトル不明
測定法
「それじゃ、適性を調べるぞ」
取り出していた丸薬を口に放り込んで、
「一番簡単な方法でやるからな」
二人と距離を取る。
ついてこようとする二人を押しとどめ、上半分が消し飛んだ土塊の隣に立ち、土塊を地面に戻して向き直る。
「一番簡単な方法とは? それに、なぜ距離を取る必要があるのですか?」
「初級魔法は知ってるな?」
「それはもちろん! ・・・でもそれがどうしたんですか?」
「決まってんだろ? 俺に向かって撃つんだよ。全力でな。どっちからでもいいぞ。火から順番に来い」
こともなげに言ったつもりだが、言われた側はそうでもなかったらしく、どうしようか迷っているようだ。
初級魔法は弾だ。魔力で属性の弾を作って飛ばす。
それだけ単純であれば、力の差を測るのも容易い。それを魔力障壁で防げばいいだけだからな。
「ああ! ちゃんと一から魔力で作れよ。計測がブレるからな」
魔力障壁。魔法バリア。魔空陣。呼び名は色々あるが、まぁ魔力で作った壁でしかない。使い手によって形や範囲が変わるが、強度は魔力に依存する。
物理にも魔法にも干渉する魔力の壁は性質として、実体のあるものを止めるほどの力はない。だが逆に、魔法にはめっぽう強い。
だから、魔力障壁に魔法をぶつけ、その時の障壁の削れ具合で威力を測る。そのため、実体を含む魔法は計測のブレを生む。故に、一から生成するように注意した。
「それと、魔力がなくなったら、そこにある袋の中の丸薬でもなめてろ。その場合は交代してもう一人が撃ってこい」
二人の足元を指差して言う。
その方が効率がいいだろう。
「あの、大丈夫でしょうか?」
「どうした?」
「その・・・万が一ということも・・・」
申し訳なさそうにリミアが言うが、
「あるわけないだろ? 初級魔法でそんなことが出来りゃぁ大天才だぜ? 俺が死んだところで釣りが来るぞ」
それを聞いて、笑ってしまう。むしろこっちが申し訳ないと思うほどに。
魔力障壁は魔力そのもので、やろうと思えば全魔力を使うことも出来るし、形や厚さも自由自在だ。
そしてそれを効率よく魔法を消すために作るんだ。
魔法は長く干渉されるほど維持し辛く、強く干渉されるほど消えやすい。
つまり、より高い密度で分厚い壁を作れば、対魔法において最善と言えるわけだ。
当然。今回もそういう意図で障壁を張る。
それに対して、初級魔法でその壁をぶち抜くというのは、魔法も使わずに空を飛び回ります、というくらいには不可能だ。
初級魔法はまず弾を作り、そこに魔力を込め、さらに属性を付ける。という工程を行う。
そして、属性が付いた時点で、その性質も受け継ぐわけだ。
付けた属性がなんであれ、そもそも空中にとどまる・・・などという性質を持っている属性など存在しない。
それらを制御した上で威力を・・・となれば、いかに早く、いかに多くの魔力を注ぎ込めるかが全てであり、それこそが術者の技量というわけだ。
かつては、威力とは大きさであった。
初級魔法も、大きければ威力が高く、それが才能とされていた。
だが、さっきも言ったが干渉が強く長くなれば魔法は消える。
魔法が大きくなれば受ける干渉も大きくなる。
この研究から、小さな魔法に大きな威力を持たせられるものこそが、至高の魔法使いと言われるようになった。
それでも、限度がある。
無限は完成しなかった。
今の魔法使いが広範囲・超威力の魔法を使うのは、それが不可能だと 悟(さと) ったからだ。相手の干渉を受けないように、複雑な挙動を見せるのはそのせいだ。
そのことを知らず、世界を相手に喧嘩を売るような 夢(ものいい) 。
笑ったのは失礼だろうか?
いつから”そんなもの”と笑うようになったんだ?
だが・・・それでも、
「文句があるなら見せてみろ! 実力主義は変えられねぇぞ‼」
現実って奴を教えてやるのが、大人としての務めだろう。