作品タイトル不明
side―キューティー1
地鳴りはゆっくりと・・・けれど、着実に早くなってきています。
「全員警戒しろ‼」
そういって構えを取るジェイド様も凛々しいですわ!
などと、浮かれている場合ではありませんわね。
私はキョロキョロと周りを見回します。
ジェイド様が正面を取っていると思いますが・・・どうにも音の響き方に違和感があります。
この森ではこれが普通なのかと聞きたくなりましたが、鉄の花1人占め男も焦ったように周りを見回していました。これでは聞くだけ無駄ですわね。
張りつめていく緊張感の中、音が止まった・・・かと思えば‼
「グゥオオオオオオオオオオオオ‼‼」
ズドン‼ と凄まじい振動と共に、けたたましい鳴き声をまき散らせながら、巨大なモンスターが大口を開けて降ってまいりました!
まるで脅かすような着地と咆哮。
ジェイド様の真ん前に・・・つまり、その隣に立っていた私の目の前でもありますわね!
そこへ、不遜にも大口を開けて、鋭い牙を見せつけ、あまつさえ、その咆哮は音と衝撃を伴いながら唾すら叩きつけて。
私は魔法盾のおかげでなんともありませんが、他の皆は大丈夫でしょうか?
そんな私ですら、下半身が濡れている気がするのですが・・・きっと気のせいに違いありませんの!
さきほど、まいりましたと言いましたが、決してそのような意味ではありません! 断じて! そんなはずなどありませんとも‼ ええ‼
私は誰にもばれないように、そっと股間の辺りに手を当てますが大丈夫。滴る程ではありません。もし仮にお小水がちょちょぎれていようとも、醜態をさらすほどではないということですわ! 流石は私‼
そうやって自分を鼓舞することで、どうにか。見せ付けられた喉の奥の闇に捕らわれる恐怖をごまかします。
「お、大きい・・・・・・」
ケイトの率直すぎる感想も、無理ありませんわ。
鳴き終え頭を持ち上げたモンスターは、見上げておおよそ5メートル。建造物でも相手にしているかのよう。
これからこのモンスターを相手に私達は一体なにをするのでしょう? どうすればいいのでしょうか? 弱点も知らず、狙いもわからず・・・かといって、知っていたとして、わかっていたとして、届くとは思えないのですけれど・・・なにをすればいいんですの?
そんな場合ではないとわかっていても、言葉に出来ない不思議な気持ちになりました。こう、現実味がないというのでしょうか? 実感がわかないというか、とにかく変な感じですわ!
「とりあえず、強化魔法はかけたけど! 無茶はしないでよね! ジェイド‼ キューティーもね‼」
「わかってるよ‼」
ジェイド様はエイラにそう言われて送り出されます。
え? 行くんですの? アレに向かって?? いえ、ジェイド様が行くのなら行きますけれど。
でも、ですのよ?
前進はしてみたものの・・・・・・遠い‼
当然ですわ‼
言ってしまえばこの巨大なモンスター:ニアラプターは、前かがみになっているようなもの。
頭と胴体は遥か上空に座していて、地上からは届くはずもありません。
なんといってもその巨体を支える足すら、3メートルはあるんじゃないかというほどの大きさ。
胴体が短いわけもありませんし、頭は生態調査報告書に書かれていた通り大きい。
だから、攻撃が届く足までの道のりが遠いのですわ‼
そしてなにより、
「うおぁ⁉」
ドスン! と。たった一歩踏み出すだけで急に距離が近くなり、さらには地面の揺れに足を取られます。
「クッソ‼」
そこを狙い澄ましてニアラプターはバクン! と私達を食べようと噛みついて来る。
為す術がありませんわ‼
いくら腕に自信があろうとも、それを発揮できなければ意味がありません!
いつぞやのゴーレムのように、わかりやすい弱点があるわけでもなく、見るからに硬いあの体表には、私の細剣では傷もつけられないでしょう。
初めて見るモンスターなので動きの予測も出来るはずがなく、その巨体により距離も測りにくい。
このモンスターは本当に推奨C級パーティーであってますの⁉
それと、ゼネスさんは私達なら出来ると言っていましたが、それは過信ではなくって⁉
それとも、
「ガイザージェットを試してみましょうか」
「じゃあ僕らで気を引くね」
「さ、流石に動きを完全には止められないと思うから、よく狙って・・・」
魔法でならどうにか出来ると言うんですの?