作品タイトル不明
予想外の
「戦闘スタイルを決める時に重要なのは、自分になにが出来るのかを理解することだ」
ステータスから話したのはそれを明確にするためだ。
「まずは物理か魔法かを決めろ」
「私は魔法で戦います」
「・・・・・・僕は物理ですかね・・・」
わかっていたが対照的だな。この二人は。
「なら、次は距離だ。近、中、遠・・・まぁこれはやってみないとわからないが、希望は聞いてやるよ」
「僕は出来るだけ遠くからがいいです・・・」
すぐに答えるヨハンと比べて、しばらく考えていたリミアが、
「遠距離は分かるのですが、魔法で近距離、中距離というのはどういう戦い方になるのですか?」
疑問を呈した。
「学園で魔法について詳しく聞かなかったのか?」
「基礎的な魔法は習いましたし、使い方も教えていただきました。ですが、そういった戦い方までは・・・」
どういうことだ? 学園で聞いたなら、ある程度想像がつくはずだが・・・?
「ヨハン。学園での魔法課題、評価はどうだった?」
「僕に聞くんですかぁ⁉」
少々 酷(こく) だが、仕方がない。おそらくリミアに聞くよりも、この違和感の正体が分かるはず。
そう思って、促す。
「別に悪くはなかったですよ? 特別よくもなかったですけど、毎回A判定でしたし・・・」
渋々、といった感じでそういうが、それはおかしい。
貴族学園とはその名の通り、基本的に貴族の子息が通う学園で皇都内に存在する。7歳から12歳までの間を幼少部で、13歳から15歳までを中等部で、その後一部のエリート組は16歳から18歳まで高等部で学習する機関だ。
そして、卒業生の大半は政務官か国軍兵になる。
理由は単純だ。
領主になれるのは一人だけだからだ。
平和の影響で子供の数は多くなったが、領地を継げるのは一人だけ、後は補佐や何かあった時の代役に2、3人いれば、領地に親族などいらない。下手に置いておくと家督争いの火種にされるからな。
その結果、領地に帰れない貴族の子息たちは政務官や国軍兵になる。一部の例外を除けば、ほぼ自動的に庶民よりは上に配置されるからな。
でもって、その時に重要になるのが成績だ。
政務官なら、社会知識や教養、算術。国軍兵なら戦闘訓練と魔法課題の評価。
戦闘訓練は普通に模擬戦の結果だが、魔法課題は魔法の理解度と再現力。つまり、実技試験で決められるはずなんだ。
そうなれば、当然魔力量がものをいう。
いくら魔法の知識があったところで、魔力が足りなければ何も起きないのが魔法だからな。
だから、魔法使いの適正がないヨハンがA判定はありえない。
さらに、気になったのは、
「A判定でよくないってのはどういうことだ?」
これだ。
魔法課題に限らず、学園での評価はS~Dの5段階。
流石に、他がすべてS判定だからA判定はよくない・・・なんてことは言わないだろう。だとしたら冒険者などになる理由がなくなる。
「え? だってB判定なんて数えるほどしかいないじゃないですか?」
「は?」
正直に耳を疑った。
「特別すごい人以外は皆A判定ですから、良くもないけど悪くもない・・・ですよね?」
卒業してから十数年・・・いったいなにがあった?
いや、なにかがあった。それは間違いない。それを調べなければならない。
少なくとも在学時の判定は定員制だった。S判定から順に1、3、6、10、10で30人。クラスの人数が多くても最低評価のD判定の人数が増えるだけだった。どうしても優劣がつけがたい時ですら、A判定を減らしてS判定を2人にするという方法を取っていたはずだ。
今の俺達が学園の事情を知る機会はそうない。年の離れた兄弟と直接やり取りでもしてないと分からないことだ。
それを考えれば、この情報は今の皇都を知るには有益なもので間違いない。何かの役には立つだろう。
だが、今はそれどころではない。なぜなら、そんなことすら知らない駆け出し達を冒険者にしなければならないんだからな!
「はぁ・・・・・・わかった」
腰に付けた小さな魔法鞄から薬を取り出しながら、
「今から色々、見せてやるよ」
俺は肚を決めた。