軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

変わる戦況

そんなことを悠長に考えていたせいもあって、避けるっつー選択は出来なかった。

咄嗟に、顔を庇うように左手を差し出して、リミアの魔法を受け止める。

手に受けた魔法の勢いは凄まじく、危うくそのまま手の甲が顔面に叩きつけられそうになるが、どうにか持ちこたえた。

十分強力な魔法ではあるんだが、俺が手に着けているのは、あのワンダーゴーレムの外装を素材に作った籠手だ。水圧による勢いは感じても、ダメージなんてもんはねぇ。

唯一の弱点とされている次元魔法ですら、あの化け物には半分以下の威力にされるんだからな。それ以外の魔法じゃぁ威力は10分の1以下だ。

だから、どうってことはねぇんだが・・・。

明確に。

その場を支配していた空気が緩む。

たぶんだが、誰も当たると思ってなかったんじゃないか?

それが直撃したせいで、怪我をさせたんじゃ⁉ とでも思って緊張したんだろう。

そして、無傷の俺を見て安堵した。

心根として。善良なのはいいことだ。

だが、戦闘中に油断するのがいいことなわけがねぇ!

それを叩き込もうと、隙だらけのエイラに手を伸ばす。

――が、そこで気付いた。

闇の初級魔法が俺の背中めがけて飛んできていることに。

俺はすぐに振り返り、その魔法と距離を取った。

なぜ、初級魔法なんかと距離を取る必要があるのか?

理由は簡単だ。

飛んできた初級魔法がただの初級魔法じゃねぇからだ。

このなんの変哲もない黒くて丸いだけの攻撃魔法は、対象に直撃する前に破裂する。その後、中から別の・・・中級以上の魔法が飛び出す。

そういう魔法を、ケイトを経由してヨハンに教えた。

通称: ビックリ箱(プレゼント・ボックス) 。

ヨハンは集中を切らさず攻撃の隙を狙っていた。それは、俺がリミアの魔法でやられたりなんかしないという、ある種の信頼もあっただろうが、それだけじゃねぇ。

ヨハンはただ1人、俺の予想を超えてきたんだ。

なぜならその、俺が教えた”ビックリ箱”を使って、俺を驚かせやがったからだ。

目の前まで飛んできた闇の初級魔法は、確かに破裂した。

したが・・・それだけだった。

それはつまり。

俺が”ビックリ箱”だと予想すると踏んで、それを逆手にとって利用したということだ。

初級魔法の破裂から、間髪入れずにヨハンが突っ込んでくる。俺の動きを止めるためだけに。

それを見た全員が、呆けていた自分を戒め、戦闘に復帰するべく頭を切り替え、気を取り直す。

ジェイドやキューティーも戻ってきて、5人に囲まれる。

それにしても。

ヨハンの選択には感動さえ覚えた。

俺がどう考えを予想して、今取り得る選択肢の中から、現実的で、一番楽な方法を試し、成功させた。

敵を動かし、戦局を変える。

その上で、自分の力を温存もした。

俺が、教えようとしたことだ。

言葉にしても、やって見せても、本当に伝わっているのかは謎だった。

それが正しいのかも、出来ているのかも、わからなかった。

実感がなかったからだ。

サンパダに頼んだ護衛の件で、サン達と旅をして。

少しはわかった気になった。

同じようにしてみても。

言葉だけでも、見せるだけでも、足りないということを知った。

同時に。より詳細に。

そして、『出来ているなら褒めてくれ!』そうタンに泣き付いているサンを思い出す。

実感が欲しいのはお互い様だと言っていた。

まぁ『出来てない。だから、出来ない。』と一蹴されていたが。

なぜ。同じようなことをして、駆け出しと蒸気の騎乗者とで、これだけの差が出た?

その違いは?

あるとするのなら、そいつは経験だろう。

俺の、だけじゃねぇ。

サン達は腐ってもA級のパーティーだ。流石に、駆け出しとじゃ比べものにもならねぇ。

経験の差が、補えるものがあると。

そう言うことだろ?

じゃぁ、その経験ってのはなんだ?

時間か? 移動距離か? 仲の良さか?

そんなわけがねぇ。

だったら、子供の頃からずっと一緒にいたはずのジェイド達に分があるんじゃねぇのか?

そうなりゃ、残されてるのは実戦の経験・・・ぐらいだろう。

なら、その実戦の定義は?

そんなもん、死を身近に感じるかどうか、以外にあるはずがねぇ。

だとすれば。

だとすれば・・・より成長を願うなら。

手加減なんざ、してていいのか?