作品タイトル不明
足りない違和感
「どうするです⁉」
スイが焦った様子で聞いてくる。
これは、スイがどうにかするべきか? ということを聞いてるんだろう。
それを、
「俺にやらせてくれ。まだ試したいことがある」
と。やんわり否定してディーノを睨む。
久方ぶりに感じていた全能感に水を差されたのは、まぁいい。
それは水に流そう。
だが、
「そいつはこっちの台詞だと思うがな? こんな時間の、こんな場所に、いったい何の用があるってんだ?」
てめぇの思い通りには行かねぇってのだけは教えてやらねぇとな。
俺は気取ったままのディーノにそっくりそのままの言葉を返す。
「いやなに。当商会の馬車が盗まれたと聞いてな。どこの馬の骨が、なんのために、と思って確かめに来ただけだ。・・・それがまさか、こんなことになっていようなどとは、思わなかったがね?」
が。ディーノは悪びれもせず、口元を下品に歪ませて言う。
「実に――汚らわしい限りだ」
誰に向けた言葉なのか・・・。
「どういう意味だ‼」
それに反応したのはサンだった。
明らかに怒りをかもしながらの詰問。
「わからないか? これだから、知恵の足りん連中というのは嫌になるな。簡単なことだろう? 卑しい冒険者風情が、亜人共と共謀して我が国民達に害をなしていたのだ。当然の感想ではないか?」
「いったい・・・なにを言っている・・・ッ⁉」
しかし、それにこたえたのは亜人の男だった。
「き、貴様がッ‼ 私達にッ‼ 私達をッッ‼‼」
詰まる言葉はなんのせいか。怒りか? 悲しみか?
あるいは、成果などなかった自分達への不甲斐無さか。
それとも、戦うための心すら折られ、ただ立ち尽くす今の惨めさか。
つっても、それを言い出したら結論は”お前が話を聞かなかったから”で。
そんなことは言いたくもなければ、言っても無駄なんだ。
なにかの為に命を懸けて戦う覚悟を決めたことは偉大なことだ。
ただ、タイミングが悪かっただけ。
本当にそうか?
もしかして、それすらも操られていたんじゃ・・・?
そんなこと、考えたところでわかるわけがねぇんだから、意味なんてないんだが。
その時に気付いた。
「頭はどうした?」
坂の上、左右に広がり、ずらりと並ぶ顔ぶれの中に、怪しい姿の奴がいねぇ。
「なんだ? あまりのことに目も見えなくなったのか?」
ドッ‼ と、ディーノの一言を引き金に馬鹿共が大笑いするが、そんなことはどうでもよかった。
「てめぇの有っても無くても変わらねぇような飾りの話は聞いてねぇよ。あの時、吹き抜けの最上階に居たフードの奴はどうした? って聞いてんだ」
「奴ならばこの後の展望のため、商会に残っている。君の心配には及ばないよ」
あからさまにイラついた表情で持って言い返すが、それは・・・。
「見限られたか」
「そんなはずがないだろう‼ 私はここで君達を捕らえ、その罪を白日の下に晒し、そして新たな権力を手にするのだぞ⁉ だからこそ‼ 奴が今回のこの作戦を立案したのだ‼ 全戦力をもって君達を叩き潰せとな‼」
その言葉に傭兵共は、おぉぉおおおおお‼‼ と地鳴りのような声を上げるが、
「だとしたら尚のことおかしいだろ? なんで総力戦に参加しねぇ? 自分で考えた作戦だろう? 自分で指揮するのが普通じゃねぇのか?」
ここに居ないでいい理由にはならねぇ。
むしろ、現場の人数は増える程、指揮し難くなるんだ。なのに、その現場のことをなにも知らねぇ商会頭を、わざわざ頭に据える理由はなんだ?
そのことに疑問を持たず、そんなに自信だけを持ってるのなら、せめて。
「通信でもしてみたらどうだ? 連絡がつくとは思えねぇがな?」
そう提案してやった。