軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

任せたぞ?

亜人の多くは常人よりも高い能力を持つ。

中でも獣人種は五感が優れているとよく言われる。

視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚。

こいつらは見た目からイヌ科のなにかだろう。

だとすれば、聴覚と嗅覚は俺達の比じゃない。

「開けた場所から離れるな! 深追いは禁物だ! 森に入れば一方的に狙われるぞ‼」

情報の8割を視覚に頼る俺達人間では、暗い夜の森の中で獣人相手は荷が重い。

「お互いの距離は近く、それでも邪魔にならねぇように気を付けて戦え‼ 基本は迎撃! 仕掛けてくるタイミングを見誤るなよ‼」

行くぞ、行くぞ! と、どんどん大きくなる気配。

鬼気迫るような気迫を感じる。

俺は馬車の前まで下がり、サン達は俺の言葉通りによりコンパクトになるように構え、ズサッと一歩、位置を気にした後ずさりに合わせて――、

「――来るぞ‼」

膨れ上がった気配そのものが破裂するように、一斉に襲い掛かってきた。

「なっ⁉」

「これ・・・⁉」

「流石に・・・、」

「どういうこと⁉」

「です!」

獣人共の動きは速く、だが・・・手に武器を持ちながら、しかし、通り過ぎるだけ。

脇を舐めるようにスルリと通り抜ける。

戦闘態勢を取っている蒸気の騎乗者達の間を。

まるで、いつでも殺せる。と見せつけるように。

安い挑発だ。

奴らとしちゃ、どうしてもあいつらを分断したいんだ。

獣人の嗅覚の良さはなにも単純な”臭い”だけじゃない。

純粋な人間に比べて、高い運動能力と頑丈な身体をもってしても、敵わないかもしれない相手だと、あいつらの”強さ”を嗅ぎ取ったに違いない。

いかに獣人とは言えど、ここにいる連中全員が戦闘を生業にしてるわけでもないだろうからな。

だから挑発して、頭に血を上らせることで深追いを誘い、森に引き釣り込もうとしている。

だが、そんな指示を出してる様子があったか?

いや。あらかじめ戦うことを決めてたんだ。そんなもんはいらねぇか。ってことは・・・なにかしら、策があってもおかしくはねぇな!

なら、そうはさせねぇ。

あんなもん一匹掴んで締め上げれば、簡単に全部止まる。

そう思って前に出ようとした。

奴らにとって、馬車なんざ何の価値もないもんだと思ったからだ。

だが、

「ッギャン⁉⁉」

俺の前進を見逃さず、茂みから飛び出してきた影が一つ。

俺は慌てて反転し、そいつを叩き落した。

叩き落された奴は痛がりながらも再度、素早く茂みに消える。

――焦った。

これ以上ミスを積み重ねて、それで依頼人に怪我でもさせてみろ。冒険者の名折れだぞ・・・。

冷たい汗が肝を伝う。

落ち着いて気配を探れば、馬車の周りにまだ数人隠れてやがる。

馬車の中にいるサンパダの気配を嗅ぎ取ったか?

にしても、狙う理由になるか?

俺を自由にしたくねぇとかか?

しっくりは来ねぇが、なくはねぇか。

そうなると・・・・・・、

「俺は馬車を守る‼ お前らはさっさとそいつらを片付けろ‼」

獣人共はサン達に任せるしかない。

「いきなりそんなこと言われたって・・・これはどうすればいいだ⁉ 攻撃してもいいのか⁉」

「いいか? それは挑発だ! お前らを舐めてるんだよ‼ 余裕があるって見せつけてやがるんだ‼」

「なっ⁉」

「腹が立つなら思い出せ‼ きっちり追い込んで、わからせろ‼ 出来るな?」

「ああ‼ やってやるさ‼ その代わり・・・馬車は任せるぞ‼」

蒸気の騎乗者は肚を決めて武器を取り直す。

それを見て俺も。

「あぁ・・・もう二度と近付けさせもしねぇよ」