軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side―フッチ

「読みっつっても、達人は3手先を~とか・・・そういうのじゃねぇ。もっと単純に行動原理を学ぶっつーか、いわば”習性”だな。普通はモンスター相手に始めるもんなんだ。手ごわい相手と戦う時や、繰り返し同じモンスターを狩る時にちょっとでも楽をするために」

そう言いながら、あの人は一度構えた拳を開いて、腕を広げて、隙をさらして前へ出る。

一体なにがしたいんだ⁉

さっきまでもそうだ‼

わざわざこっちを向いて話ながら戦う必要なんてないじゃないか‼

こんな奴を師匠と同一視するなんて‼ 僕はどうかしてた‼

師匠は訓練ではふざけた態度を取っていたけれど、戦いの中では隙を見せたことなんてなかったし、人一倍そのことに厳しかった‼

そんな僕の思いなど知る由もなく、

「人間だって動物だ。条件さえ揃えば本能的に動くもんだ。例えばモンスターは無傷で人間と戦ったことがなけりゃ、最初は舐め腐って攻撃を避けようともしやがらねぇし、正面からしか突っ込んでこねぇ。実力を見せつけるようにな。だが、思い出せ。そんな奴がついさっき、いなかったか?」

余裕を見せつけるようにあの人は、視線すら外したまま敵に近づく。

見ているのは一番最初に殴り飛ばした傭兵だ。

確かに似たような行動はとっていた。

足音を隠さないどころか、叫びながら切りかかって、あろうことか一番避けやすい振り下ろし。

それは実力を見せつけようとしていたと言われれば、そうなのかもしれないと思える行動ではある。

だけど、それがなんだっていうんだ?

だから人もモンスターも同じだ。なんて言うつもりじゃないだろうね⁉

そんなのは詭弁だ‼

たまたま一回似たようなことが起こっただけだ‼

それをさも当然のように・・・‼

「ま、それはいい。次は一度人間と戦ったことがある場合。さらに、その時に傷を負っていたらどうなるか・・・。答えは”隙をつくようになる”だ。自分の優位は変わらないんだから、相手に準備をさせなければいい。そうすれば確実に勝てる。そう思って、タイミングだけズラして、攻撃方法は変えない」

さらに敵に近づきながら、今度は振り向き様に切り伏せた傭兵を見る。

そういえば、この傭兵は1人目と同じように背後から振り下ろしを・・・しかも、声も上げず足音も消していたような?

いや! そんなまさか!

たまたま、たまたまさ!

そう思う。

けれど、身に覚えがある。

一度撃ち逃したモンスターを後日もう一度。今度は確実に倒しに行った時、同じように。最初は様子を見て、僕らの隙をついて攻撃してきた。攻撃方法は変わらないのに。

まさか・・・⁉

「だが、モンスターだってバカじゃねぇ。そうやって、仲間がやられてるのを見りゃ慎重にもなる。取り囲んで、役割を分けて、隙を探すんじゃなく、作ろうとするようになる。敵を引き付ける役、攻撃を仕掛ける役、援護する役、合図を出す役。引き付けるのに失敗すれば仕掛け、仕掛けるのに失敗すれば引き付ける。周りはそれを見て動き合図を送る。全部、一斉攻撃をするための策だ」

それは正しく、さっきの4人じゃないか‼

引き付け、仕掛け、援護に入る。

一連の流れを予測していた? だから合図より早く一網打尽に出来て、袋叩きに合わなかった⁉

そんなことが出来るのか⁉⁉

いや、おかしい‼ それはおかしい‼ だって‼

もしそうなら、4人全員の動きを正確に読んでいたことになるじゃないか‼

そんなことって・・・⁉

あの人は肩を竦めるようにして、まるで意味がわからないと手振りするような動きで敵に近づいていく。

「それすら失敗した場合、モンスターなら執る行動は2つ。一目散に逃げるか・・・・・・目が合った瞬間に襲い掛かるか」

そんなことを敵の目と鼻の先で言ってのける。

額がぶつかりそうな距離で、隙だらけなまま。

意味がわからない‼ 理解ができない‼

でも!

もし、全てが計算尽くだったなら・・・?

ここに危険なんかないんだって、分かった上で隙を見せていたんだとすれば、それは―――。

『自分に出来ることを把握して、それを示す。戦いというのはそういうものだよ? 自分を疑っちゃいけないし、相手を侮ってもいけない。なら僕はもっと余裕を見せるべきだって? あのねぇ・・・それが出来るなら、そうしているさ』

師匠の理想としていた姿なんじゃ・・・?