作品タイトル不明
後続の気配
さて・・・ナイフを持ってた傭兵も、勝手に突っ込んできて倒れた。切っ先もある程度潰してたし死んじゃいねぇが意識が戻っても、もう動かねぇだろう。
残りは遠巻きに見ていた6人のみ。
しかし、色々しゃべりながらやっていたせいで時間はかかっている。
おかげでサンにしても、タンにしても、なにかしら受け取ってくれたのか、表情が違っている。考えているような、悔いているような、悩んでいるような、喜んでいるような。
全てが伝わっていなくても、これをきっかけになにかがよくなってくれれば、俺としちゃ十分だ。
それはいいとして・・・・・・後ろの様子が気になる。
後ろにいた連中はどうした? まだ姿は見せねぇし、声や気配が近付いてくることもない・・・そして、それが逆に不気味だ。
派手に事故らせたからビビってるのかもしれねぇが、それにしても遅すぎる。全く人が通れないような事故でもない。倒れた馬車2台の間を通り抜ければいいだけだ。
まぁ、その場合は狭い出口で応戦して数の有利を使わせないつもりだが・・・部隊を分けて回り込んでるのか? だとしても馬車の音ぐらい聞こえてきそうなもんなんだが、それもない。
俺達をここに追い込んだ手際の良さはどこへやら。
どうにも、ちぐはぐすぎる気がするんだよな。
なんて、言ってる場合じゃねぇか。
今は後続が現れないのを都合のいいことだと喜んで、さっさとこいつ等を片付けるべき、か。
倒れた馬車へ向いていた視線を残っている敵へと戻す。
そろそろと近寄ってくる傭兵の残り6人。
さっきの奴ら程、武器の種類は豊富じゃねぇがそれでも、長さも形も違う刃物をそれぞれ手に持っている。なんでそんなところで個性を出そうとするんだかな?
正直、これ以上時間をかけるのは得策じゃない。
敵の狙いがわからねぇからだ。
この傭兵共は質のせいかは知らねぇが魔法を使わない。
だからこそ、今のところ貧民街に被害はない。せいぜい俺が開けた穴ぐらいのもんだ。
だが、後ろにいた連中が一旦引いて駒をそろえた上で、俺達がここに残っていることに気付いていれば、貧民街ごと魔法で吹き飛ばしてくる可能性はある。
この国の、あるいは町の事情は知らねぇが、こうやって締め出されている貧民街のことを快く思っている人間はそう多くはねぇだろう。
むしろサンの話を聞く限り、商人というこの国を成す根幹には嫌われていても不思議じゃない。
であれば、俺達を原因とした上で仲間の犠牲を演出し、貧民街もまとめて一掃することで人気取りと自分達の不手際を抹消するかも知れねぇ。
ただ・・・折角の機会だ。
教えられることは教えておきたい。
さっきまでの続き、となると・・・そうだな。
「さっきは息を合わせるっつったが、それは理想だ。初対面の初めましてで出来ることじゃねぇ。ならさっきのは嘘だったのかよ! と思うかも知れねぇがそうでもねぇ。息は合わせる。そして、そのためには実は読みが必要なんだ」
それを見せるためには、この剣が邪魔だな。
俺は武器を捨て、拳を握って構えて見せた。