軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

思う通りに

っと!

いつもの調子でやっちまった・・・。

のした傭兵を足元に、今一度見直す。

必要なのは俺の理想じゃない。アイツの足り得る未来だ。

「体重移動が重要になる理由は遠心力にある。魔法を除けば、人間が使える一番強い力は遠心力だ。それを効率よく生み出し、利用するのが技だ。中には突きみたいに純粋な力比べに近い技もあるが、今は気にするな。身体の軸を意識して、体重の移動を感じろ。そこから生まれる力を覚えて、常にそれを生み出せるようにしろ」

サンに向いて出来る限りを言語化して説明する。

これで伝わるのか? 伝わらなかったらどうする? そんな考えも過るが、これ以上は流石に無理だ。

現状でも十分な程、頭が沸騰しそうなんだ。

丁寧に、あるいは簡潔に、分かりやすく。

口にするだけなら簡単なもんだが、言葉を選ぶとなるとこんなにも難しいとは。

すみませんでした、教官。

もっと分かりやすくだとか、生意気なことを言って。

今になってその苦労を知りました。

でも、いかに自分の感覚を言葉にして伝えるのが難しいからって、ほとんど全部を擬音で伝えようとするのは流石に怠慢だと思います。

遥か昔の自分を反省しつつその光景を思い出していたが、そういえば・・・今はジェイド達が教官に教わってるのか。想像するだけで笑えてくるな。ジェイドの文句が聞こえてきそうだ。

それにしても、笑えると言えばこいつら傭兵もだ。

なんで仕掛けてこねぇ?

視線をあげればそこにはまだ4人の傭兵がいる。

なにをするわけでもなく、手には武器を握ったままで。

ナイフにバトルアックス。鎌に・・・ククリか? 剣鉈の方が近いかもしれねぇが、そんなことはどうでもいい。

俺が長々しゃべってる間に幾らでもチャンスはあっただろ。

もっといえばこの足元でのびてる奴の攻撃を受け止めている間に誰かが来ても良かったはずだ。

それを今になって、4人が俺を囲む。丁度90度ずつに1人。

俺の態度から仲間に頼らねぇと踏んだか? それともようやく1対1じゃ敵わないと思ったか?

どちらにせよ。それならそれで、後ろの6人も呼べばいいんだ。そうすりゃまだ勝ち目もあっただろうに。数の利ってのはそういうもんだろ。

いち早く飛び出したバカは仕方ないにしても、2人目を失う必要はなかった。あるいは元からこの4人が組んで活動してたのか? それにしては、この4人から脅威は感じ取れない。

傭兵だから手柄に対して特別報酬があるとかか? まぁ、そういう都合だったとしても。

斧や鎌や鉈なんか並べて傭兵をやるより、農業でもやった方がよっぽどマシな生活を送れるんじゃねぇのか?

そんな思いも込めながら剣を片手に持ち、切っ先を突き付けつつ斜に開いて構える。

「次はリーチを覚えろ。自分の得物が届く範囲。それを正確に把握することが成長への道だ」

相対するはナイフを持つ傭兵。

正面でナイフを構える傭兵と身体を開き、腕を伸ばし、切っ先を付けつけるように構える俺。その差は歴然だ。

身長の差はほとんどないにもかかわらず、半歩・・・どころか1歩でも届かないほど、懐までに距離が出来る。

その上で。俺の切っ先は一歩踏み込めば傭兵の首に届く位置にある。

「切っ先を相手に向けるのは牽制の為。細剣じゃあるまいし、ここまで腕を水平近くまで伸ばす必要はねぇが、今回は見て分かりやすいようにこうしてる。これプラス踏み込みの1歩・・・つまり、アイツの首までが攻撃範囲ってわけだ」

その言葉を聞いて、目の前のナイフを持つ傭兵の男は顔を引きつらせながら1歩仰け反る。

「――ッ⁉」

それに合わせて俺の右側、斜に開いたせいで背中側にいた傭兵が鉈を振り上げ踏み出そうとしてきたが、その出ばなを挫くようにスッと90度、腕を返しながら切っ先を突き付けて止める。

「おおおぉぉぉ‼‼」

俺の視界から外れたと思ったんだろう。

ナイフ持ちの反対側にいた傭兵が声と共に斧を振り上げ迫る。

だが、残念ながら見えている。

俺はさらに90度、身体を回転させ腕を巻き込むように畳みながら迫る傭兵の懐に飛び込む。

両手持ちのバトルアックスを使うぐらいだ。体格は大柄。俺より身長も高いから潜り込むのは簡単だった。

両腕を上げた傭兵の体は隙だらけ。胸に背中の肩甲骨で当身。遅れてくる肘で鳩尾に追撃。素早く体を入れ替えて、背後から蹴り飛ばす。

2歩3歩と、ヨタヨタ歩く傭兵の背を見送れば・・・。

ナイフを持った傭兵と俺の間には3枚の壁が横並び。

俺は肩に担いだ剣を両手で握る。

横並びというには蹴り飛ばした斧持ちが半歩ばかり遠い。

踏み込みの意識を強く持つ。剣先が通る位置を正確に思い描く。

身長に違いがある時に狙うのは差が出やすい首ではなく胴。安い防具にありがちな上下の広い隙間を狙って、力一杯振り切る。

弧を描く横一閃は寸分違わず並ぶ3人の腹を、防具のない腰上を抉った。