作品タイトル不明
見せるべき姿
並んだ12人の内、前に出てきた傭兵は6人。
馬車ごとのチームで戦うやり方なのか? こっちは1人で前に出てるんだがな。
まぁ、俺の後ろにも仲間はいるわけで、初めから12人で囲んでくるとは思ってなかったが。
問題は”よく見てろ”なんて言ったことだけだ。
戦闘に頭や気持ちを切り替えさせるために手っ取り早く、かつ俺の言葉に意味を持たせるためとはいえ、なにを見せればいいのか。
いや、見せるだけじゃダメなんだったな。
それはヨハン達のことで学んだはずだ。
となると、説明を交えてってことになるんだが・・・それにしてもジェイド達にはいまいち伝わらなかったように思う。
まだ何かが足りねぇんだろう。
ただ・・・なにが足りねぇんだろうな?
「たった1人で俺達を相手にしようってだけでもナメてやがんのに、考え事かぁ⁉⁉ 隙だらけなんだよぉ‼‼」
「危ないっ‼」
ブォン‼ と片手半剣が真正面から振り下ろされる。が、正面から足音も隠さず、なんなら大声を張り上げながら繰り出される、そのありとあらゆる意味で雑な攻撃かどうかすら怪しい振り下ろしなんざ当たるはずもなく、半身を開くだけで難なく通り過ぎる。
しかし。つい、真剣に悩んぢまった。
とりあえず目の前にある剣先が土にめり込むほど力強く振り下ろし、隙だらけになっていた傭兵の横っ面をバキッ‼ と殴り飛ばす。
1人だけ飛び出していただけに周りも援護のしようがなく、あっという間に1人が脱落。数の有利を減らす。
ついでに、カラン・・・と殴り飛ばされた傭兵の手から剣が滑落。その抜き身を鳴らす。
片手半剣か。
サンが使ってるのとそう違わない長さをしている。
その時に・・・ピンときた。
モヤのかかっていた思考が晴れるかの如く。気付いてしまった。
今までの自分が傲慢だったんだなということに。
俺はこうすれば出来る、これぐらいは出来るようになる。そんな考えしかなかった。
それでもって正解と言えるような姿だけを再現してきた。
だがそれは、目の前の相手を見てなかったんじゃないのか?
そいつの・・・リミアの、ヨハンの、ジェイドの、キューティーの、ケイトの、エイラの、未来を想像していただろうか?
サンたちのこともそうだ。
俺にとってはそれが当たり前だった。
だが、あいつらにとってはこれからだ。やること、起こること、成し遂げること全てが未来なんだ。今じゃねぇ。
出来なくて当然。
その上で、なぜ出来ないのか。どうすれば出来るようになるのか。そうやって1人1人と向き合わなきゃならなかったんじゃねぇのか?
どうなるべきか。じゃなく、どうなってほしいか。そういう思いを持って接さなきゃいけなかったんじゃねぇのか?
俺が見せるべきは、俺の理想じゃない。
俺が演じるべきは誰かの理想。
こうなって欲しいという願いの先。ここまで出来るようになるぞという期待の果て。その終着点。
そこまでのことを俺に出来るとは思わねぇ・・・・・・けど、それでも。
地面に転がっていた剣を拾い上げた時、口が勝手にこう告げていた。
「まずは基礎からだ。手早くいくぜ?」
未来の姿を思い描いて。