軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

嘶きは決意にかわる

「選挙、ですか?」

「ええ。ここガルドナットは王政ではないので政を行う者を選挙で決めるのです。立候補できるのは大商会の頭取だけ。カイオール商会の会頭ディーノはそれに出るつもりでいるのだと思います」

なるほど、その人気取りとして自作自演の奴隷狩りなんざ始めやがったのか。

「そんなことのために・・・?」

「どう感じるかは立場によるんだよ。奴にとっては国を乗っ取るためならなにをやってもいいんだろ」

「とはいっても、選ばれる為政者は1人ではなく政策も多数決を取るはずなのですが・・・」

「圧倒的1位ってことを利用して押し切るか、あるいは仕込みを使って政治形態そのものを変えるつもりか・・・」

なにかしら、策は考えてるんだろうが。

「今はそんなこと言ってる場合じゃねぇな」

離れていた黒塗りの馬車は4台揃ってピッタリと後ろに。

左右の方も建物の隙間から消えなくなった。

「そうですな。しかし、逃げると言ってもどこへ?」

「出来るなら森にでも逃げ込みたいところだが・・・」

ガルドナットはとにかく広い。

今いる場所も大分外まで来ているとはいえ、町を出てもしばらくは平野。身を隠せそうな場所までに捕まるだろう。

「まぁ、町を出られりゃ最悪囲まれてもなんとかなるか。ここからならすぐに町の外へ出られるだろ。無人の門とかあったりしねぇか?」

「流石に馬車が通れるような無人の門に覚えがありませんな」

「なら、仕方ねぇな。正面の門をぶっちぎるか」

「駄目だ‼」

「・・・私としても推奨は出来ませんが、他に選択肢がないというのなら気にしませんよ?」

サンが反対したのをサンパダは自分に気を使ってのことだと思ってそう言ったが、

「そうじゃないんです」

それもサンが否定する。

「では・・・?」

「あの門の先には 貧民街(スラム) があるんです」

「はぁ⁉ 貧民街だと⁉」

貧民街は基本的に地図に載ってなかったりする。

理由は色々あるだろうが、どこの国や町にとっても隠しておきたい場所だからだろう。

しかも、貧民街はその性質からか国や町からは切り離されて考えられていることが多く、法律や規則からハズレがちだ。

つまり、

「門を抜けたところで、地図もなけりゃ規則性すらもねぇ街が広がってるってのか?」

「ああ。そうなる」

やばいな。

貧民街なんて寄せ集めでしかない。

人や物だけじゃなく、家や道だってそうだ。

住みたいところに家を建て、通りやすい場所が道になる。

景観も整備もあったもんじゃねぇ。

そんなところを・・・・・・いや、待てよ?

「なんでこの先に貧民街があるなんて知ってる?」

地図には載ってねぇはずだ。そのせいで俺は知らなかったわけだしな。

「今日はそこで聞き込みをしてたんだ。土産物の区画があったから、貧民街があるならこっちだろうって」

「っつーことは、貧民街がどうなってるのか知ってるんだな?」

「少しだけだ! それに、貧民街と言ってもかなり広いんだぞ!」

そりゃぁコレだけ広いガルドナットの影だ。広いのはわかってる。

むしろ、そっちの方が都合がいい。

追手は他所からやってきた傭兵だ。土地勘は俺達と大差ないだろう。

中にはディーノに雇われるまで貧民街にいた奴もいるかもしれねぇが、全員じゃないはず。

なにより、貧民街には昨日なかったモノが今日急に増えててもおかしくねぇ。

その点、こっちは直前までいた奴がいるんだ。寝首を 掻(か) かれるようなことはねぇだろ。

「・・・よし、突っ込むぞ!」

「駄目だ‼ そんなことしたら迷惑が‼」

「それはもうどうしようもねぇんだよ‼ それでも気になるってんなら、お前自身でどうにかしろ‼」

「俺がっ⁉」

「貧民街を一番知ってるのはこの中だとお前だろうからな! ルート取りはお前の仕事だ‼ それとも、町ん中で戦ってドでけぇ騒ぎにしてみるか?」

それを聞いたらサンは黙った。

結局、選ぶしかねぇんだ。誰に迷惑をかけるかも、その規模も。

納得したかはわからねぇが、ちんたらやってる暇はない。

御者台側の小窓を開けてホウに告げる。

「次の交差路までに速度をあげろ‼」

「速度をあげろって・・・その先は門ですぜ?」

「気にするな。ぶっちぎることに決まった」

「ぶっちぎるって・・・総意なんでしょうね⁉」

「他に選びようがねぇってよ‼」

「どうなっても、責任だけは取ってもらいますからねぇ‼」

駆け足程度だった馬に鞭が入り、 嘶(いなな) きと共にグンと速度が上がる。

交差路を抜ける間際、左右にいたであろう黒塗りが両側から前を抑えようと回り込んでいたのが見えたが、そんなものは置き去りに。

止まれと声を上げる門番は馬車が爆速で近付くに連れ、両の手を上げ降伏し、馬車はただ疾く駆け抜けた。