作品タイトル不明
side-グレアム
「理由が理由とはいえ、利用しておいて当初の約束も守れないとは・・・不甲斐無いばかりだのぅ」
部屋に戻りながら独り呟く。
「ゼネス様はあまり気にしていなかったご様子でしたが?」
部屋に残っていた孫のユノが、心配のしすぎでは? と聞くが。
そうではない。
「これは私の体面の話・・・・・・いや、違うか。ただ、孫のように思うゼネスにいい格好を見せていたかっただけなのかもしれんのぅ」
約束を守るというのは当たり前のこと。
その当たり前を続けることで信用や信頼を得られるもの。
だが、あんなことがあって尚・・・変わらず顔を見せに来るゼネス相手にそれは今さらだ。
ならば単純に私がそうしたかったということなのだと、気付いた。
そして、それを聞いたユノがクスクスと笑っておる。
私達の関係が変わらなかったことが嬉しいのか、あるいは普段の私との違いを楽しんでるのかはわからないが、
「どうせなら本当の孫にしてくれるとありがたいんだがのぅ」
笑っている場合ではないぞと、チクリと刺す。
「そうは言いますが・・・」
ユノは困った顔で見返してくる。
まぁわからないでもない。
ゼネスの反応を見る限り、そんな気はなさそうなのでな。
「すぐにどうこうというつもりはないのだが、それでも難しいか・・・」
「全く相手にしていただけませんから・・・」
「それにしても、今日のはどういうことだったのだ?」
「どう? とは、どういうことでしょう?」
「ん? いや、いつものように腕ぐらい組みにいくのかと思っておったのだが、それをしてなかったからのぅ」
「いいえ。私はいつも通り触らせていただこうとしたのですが・・・今日はそれすらさせていただけませんでした。やはり嫌われているのでしょうか・・・?」
「なに⁉ それは本当か? あぁ、いや。流石にゼネスも嫌ってはないはずだ。嫌いなら私だけを別の場所に呼び出すなりするだろうからのぅ」
会話の最中、ユノにそれほど気を配っている感じはなかった。
にもかかわらず、話ながらユノの猛攻? を捌いたというのか?
ユノのギフトは”自然体”。
緊張しにくいなど精神的な事以外にも、場に溶け込むだったり、違和感を持たれにくいという性質がある。
つまり不意打ちがしやすい・・・ということだ。
見知らぬ相手であっても効果はある。
だが、よく知っている相手なら尚のこと効果があるはずなのだが・・・。
実際に前まではそれで密着することも出来ていたようだし。
なにか理由が?
「・・・・・・・・・・・・」
「お爺様?」
「いやなに、少々考え事をのぅ」
あるとするならば、化け物退治を経て冒険者として活躍していた頃の感覚が戻ったか。
あるいは・・・。
「私は今後どうしたらいいでしょうか? お近づきにはなりたいですが、避けられるのは流石に辛いです・・・」
「うむ・・・あまり避けぬようにはゼネスに言うておくから、今まで通りでいいだろう。急に態度を変えるのもおかしいからのぅ」
「嫌われたりしませんか? 大丈夫でしょうか?」
コロコロ表情を変えながら、悩まし気にしている孫娘。
爺としてはいかんとも言い難い感情が湧くが・・・それよりも気になるのは、どこまで本気なのか。ということ。
私としては孫のように思っていて、大事にしている教えの中では神のような存在である男が相手であるならば、これほど嬉しいことはない。
だがユノは・・・?
この娘はどうなのだろうか?
私にそうしてくれと言われたから? あるいは、教えによる神のような存在だから? それとも単に憧れだからか?
まぁ、いずれにせよ。
「安心せい。その程度のことで人を嫌うような奴ではない」
本人達に任せるしかあるまい。
「本当でしょうか?」
「もちろんだとも。なにせ、私や・・・クライフ皇子とも仲良くなったのだからのぅ」