軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

意地を見せろ

見えねぇものだと思っていた。

発見した時は光っていただけだったから。

俺達が潜った時も、ユノを送り出した時も、なにも見えてなかったから。

そういうもんだと、思っていた。

だが、今。

門は向こう側を映している。

そこにあるのは当然、6人の視線。

向こうからも見えてるのか?

なんて、考える間でもねぇ。

その視線には不安と、恐怖と、少しの期待・・・そして、俺を測ってやろうっつー意思を感じる。

ユノは1人で行ったのか。

こんなことになった責任でも感じたか。

無事に辿り着ければいいが・・・・・・。

ッと‼

動きが止まってた!

危うく潰されるところだったな。

目の前の敵には俺の心境なんぞ知ったことじゃねぇだろう。隙と見れば即座に拳が飛んでくる。

気を抜くな!

やることは変わらねぇ!

時間を稼いで、それで‼

・・・・・・それで、いいのか?

あの、測るように俺を見る目は。

おそらく気付いたんだろう。

俺のせいだと。

ケイトがあんなことをした理由に。

助かってよかったと安堵し、なんであんなことをしたのかと本人を嘆き、なんでそのことに気付けなかったんだと自分を責め、時間がたって、落ち着いて、原因を探したんだろう。

だから、ジェイド達はあの目で俺を見ている。

なにより、どうすればいいか、自分に何かできることはないかと探すヨハンと、ただ信じているとでもいうように一点の曇りも見せねぇリミアの目を見て。

それでも、そうするのか?

あいつらが見ている前で、夢も希望も打砕き、恨みだけを残して、復讐の機会すらも取り上げるのか・・・?

手も足も出せねぇまま、なにも出来ずに死んでいく。そんな姿を。あいつらに見せて・・・・・・それで、いいのか⁉

諦めるな‼

そう聞こえた気がした。

誰か一人じゃねぇ。

今までに幾つも数えきれねぇ程もらってきた、そんな言葉を忘れてたのか?

いいや。忘れてたんじゃねぇ。

置いてきたんだ。

冒険者をやめた、あの日に。

自分はもう冒険者じゃねぇと言い聞かせるために。

なら、どうするか。

決まってる!

取り戻すしかねぇだろう⁉

そんで、見せてやらねぇとな? あいつに! あいつらに‼

最期まで諦めねぇ冒険者の意地ってやつをなぁ‼

1対1。なんて、初めてじゃねぇか?

冒険者になった時から、隣にはクライフがいたしな。

人を頼る。仲間を頼る。冒険者なら当たり前のことだ。悪いことなわけがねぇ。

自分に出来ねぇことを他の誰かが、その誰かに出来ねぇことを自分が、あるいは仲間が。

そうやって助け合って、群れを一体として戦うのが冒険者だからだ。

だが、それだけじゃねぇ。

冒険者とは危険を知り、それを冒す者。

それ故に万全を期すが、絶対はねぇ。

冒険者にもし、なんてねぇ‼ とはいうが、それは言い訳にしないためのもんで、実際には予期せぬことなんてのは幾らでもある。今みたいにな。

そういう時に試されるのが、意地だ。

理屈も理由もありゃしねぇ、ただ諦めたくねぇっつー意地。

それがどういうものかを、見せつけてやろう。

教えてやるんだ。

そのためには・・・。

必ず勝つ‼

そう肚を決めて、改めて見る敵は・・・やはり強大。

デカいし硬いし疲れねぇし。

それに引き換え、こっちには碌な攻撃手段もなければ、逃げ回ったせいで体力すらない。

これ以上の遅延行為は自分の首を絞めるだけだ。

どうする? なんてのは無しだ‼

赤く睨むワンダーゴーレムの目が止まったら、前へ‼

目の動きが止まったら、大砲みてぇな拳が飛んでくる。

それとすれ違うようにして、一気に距離を詰める。

そうすりゃ今度は外から内に、左腕の薙ぎ払い。

飛び下がってたら次が来る。アレは胴体だけがグルンと一回転することで連続攻撃になる。

だから、さらに前へ‼ 地面を蹴ってひた走る‼

本当は気付いていた。

奴のデカい図体から繰り出される腕は、当然高い位置にあって、それならば薙ぎ払いのような攻撃も、前に出れば安全地帯があるチーズみてぇな攻撃だってのは。

角度を変えながら、二転三転。

背中を撫でる風は嵐のようで。だが嵐よりも速く駆ければ、決して当たることはねぇ。

一瞬たりとも足を緩めず、迫れば敵のお膝元・・・っつーには膝の位置が高すぎるか。足下に及ぶってぐらいだ。

とはいえ、弱点の歯車も足首のは狙えねぇ。関節部の形的にちょっと動かれたら腕が挟まれるかもしれねぇからな。歯車自体は小せぇから殴れば壊せそうだが、まぁそれも、あんまり効果があるとは思えねぇ。

そうなると、狙うべきは膝か。あいつらがやったのと同じように。

肩と並んで一番デカい歯車がついてる上、壊せば立ち上がれなくなる。

つっても、中腰状態のままじゃ届かねぇ。

だから、足元でおちょくってやる。

股下を潜って裏へ回り、頭が回転したのを見計らってまた表へ出る。拳が隣に突き刺さるが、軌道を見てりゃ当たるわけがねぇ。

そうやって繰り返してるうちに膝が沈み、身体が浮き上がり、足が地面を離れる。すると、左右の足が迫り、ゴッパァン‼ という凄まじい音が響き、ズドン! と着地の振動が走る。

耳には優しくない攻撃だが、それ以外は風圧がすごいだけで大したことはねぇ。

足を閉じる動きには注意して、足を閉じたままの攻撃は足の上にでも乗ればいいか?

しばらくそうやっていたが観念したのか、ようやく巨体が片膝をつく。

随分、待たせてくれやがって・・・・・・。

さぁ、こっからだ!

立てたままの右膝を上手く壁代わりに使いながら、地面に着いた左膝の歯車を叩く。

予想通り、硬さ比べには勝てた。

殴れば殴る程、歯車に拳の型が付く。

何度も、何度も、振るわれる腕をかいくぐり、何度も、何度も、同じ場所に拳を叩きつけた。

何度も、何度でも、叩きつけ続けた。

一撃でも、喰らえば終わる。そんな身を削る緊張感の中、ただ一心に、力の限り、殴り続けた。

その甲斐あって。

ギギギギ、バキッ! ・・・と俺を狙うための微妙な体勢の調整に、異常をきたす。

美しさすらあった歯車の動きは、今ではまるで、空を回るようにカラカラと鳴らす。

やってやった。

あの化け物相手に、魔力も使わず、拳だけで‼

だが・・・、

「ハァ・・・ッハァ・・・ッハァ・・・ッハァ・・・」

それだけだ。

体中から噴き出る汗は雨にでも降られたかのように全身を滑る。

達成感を得た身体は鉛のように重く、込める力すらも湧いてこねぇ。

さっさと動け‼ 次が来るぞ‼

そう分かってはいても、最早立っているのが限界だった。

それを見て、ワンダーゴーレムが拳を構える。

赤い瞳がゆっくり動く。

ふと、ワンダーゴーレムの後ろ、立てた膝の向こう側に門が見える。

あいつらが必死になにか叫んでるみたいだが・・・・・・残念ながら、聞こえねぇよ。

この身体にはもうなにも、残ってねぇ。

いや。時間をかけた分回復した、僅かばかりの魔力ならあるか?

だからって、なにが出来るわけでもねぇが・・・それでも。

赤い瞳の動きが止まる。

諦めるわけにはいかねぇ。

大砲のような拳が撃ち出されると同時。

俺は、感じた魔力を手に、引き寄せられるように前へと突き出した。