作品タイトル不明
side-エイラ&ケイト
――エイラ
魔法生物の体のどこかには核と呼ばれる弱点があるはず。
自分で言った言葉だけど・・・本当かしら?
ゴーレムには目があったけど、ガーゴイルにはそれらしいものはなかった。
そして、このスライムにも。
私・・・だけじゃない。
後衛の2人ですら、今はスライムと格闘中。
この透明な液状のモンスターには核らしいものが見当たらない。
それどころか、分裂して全員で対応させられてるのに・・・。
「いい加減に、鬱陶しいですわよ‼」
「あっ‼ キューティー‼ 駄目だってば‼」
スライムにまとわりつかれて、キューティーがつい剣で斬ってしまう。
すると、真っ二つになったスライムは・・・何事もなかったかのように、まるで初めからそうであったかのように、半分の大きさの2体になって動き出す。
分裂。
最初は巨大な1匹だった。けれど、今では私達より数が多くなってしまっている。
そのせいで対応が後手後手になってしまい、最早連携どころの騒ぎではなかった。
各個撃破に切り替えて対応しているけど・・・。
なにも、成果を得られてないのが現状。
「キューティー‼ これ以上増やすなよ‼」
「ですが・・・‼」
「増やした分も自分で対処しろ‼」
「あんまりですわ⁉」
一応、キューティーをジェイドが叱ってはいけるけど・・・いつまで我慢できるかな?
そんな風に考えながら、私はただ、ひたすらに避ける。
避け続ける。
だって・・・他に出来そうなことがないから。
ゼネスさんに教えられたことは一通り試してみたけど、スライム相手に有効なものはなかった。
魔法は・・・、
「これでは、意味がありませんね」
リミアちゃんの水魔法を吸収して、スライムは一回り大きくなっていた。
ガーゴイルを仕留めた彼女の魔法でも効かないみたいだから、私の魔法じゃ余計に・・・でしょ。
魔力を無駄には出来ないし・・・、
どうしようかしら?
幸い。
逃げることは出来る。
だから、時間は稼げるんだけど・・・。
困った。
そういえば、ゼネスさんもサポートだったはずよね?
こんな時、どうしてたのかしら・・・。
攻撃が効かない相手に、仲間が手こずった時。
いったい、なにをしていたのか。
そこまで考えて、さっき聞いた言葉がよぎる。
”そこまでの価値が、お前にあるのか?”
心臓を・・・掴まれた気がした。
ゾクリと悪寒が走る。
背中に冷や汗が流れる。
いいえ。そんなはずない。
私には回復魔法があるし・・・、
強化魔法だって・・・、
でもそれって・・・・・・ゼネスさんにも出来るはずじゃ?
我ながら油断してたと思う。
バッ‼ と、勢いよくゼネスさんの方を見ちゃってた。
当たり前だけど、そこにはゼネスさんがいて、隣にはユノさんがいて、それだけ。
腕を組んで背中をもたれさせての観戦はちょっと偉そうだなって。それだけ。
でも、それは単純に大きな隙だった。
私が目を離したのを見て、スライムが飛び掛かってきた。
全く、どこに目なんてついているのかしら。
そこそこ大きな。私の頭くらいなら、すっぽり覆ってしまいそうなスライムが飛び掛かってきて・・・すぐに気付いたけど、避けることは出来なくて。
咄嗟に顔を手で守ったわ。
流石に頭に張り付かれたらどうなるか分かったものじゃないし。
おかげで、顔は守れたけど手に、腕にスライムがまとわりつく。
少しだけ冷たくて、ブヨブヨしてて、でも水が滴るぐらいには湿ってて・・・。
気持ち悪い。
「いや‼」
スライムを振り払うために勢いよく腕を振るった。
その時、つい魔力を手に通してしまった。
私のギフトは、癒しの手。
どうにも手に魔力を集めやすいらしい。
明確な攻撃を意思があったわけじゃないけど、拒絶したせいか、スライムは本当に勢いよく飛んでいき・・・。
パァン‼ と、キューティーが増やしていた小型スライムと衝突した。
「ちょっと⁉ どういうことでして⁉」
目の前で起こったことにキューティーが目を白黒させるけど・・・・・・これは。
”そんなはずはねぇと言うんなら、見せておくべきだ”
そうだ‼
置いて行かれたくないなら、ここで証明しなくちゃ‼
私は――――。
衝突して1つになったスライムを見て、思いついた作戦を叫ぶ。
こんなこと。
パーティーを率いていたらしいゼネスさんがしなかったわけはないけれど、それでも。
やらないよりは、きっとマシな未来につながるから。
――ケイト
”お前の代わりはいただろ?”
その言葉が重くのしかかる。
実際、ガーゴイルのと戦いでも、ゴーレムとの戦いでも。
私は役に立たなかった。
ましてや・・・年下の魔法使いにはガーゴイルを倒されて。
親友はゴーレムを倒した。
なのに、私は・・・・・・。
目の前のスライムは攻撃さえしてこない。
私はそんなに必要ないの・・・?
こんなところに、居ちゃいけないのかな?
黒い感情だけが私の中で膨れ上がっていくのがわかる。
小さな頃、子供の頃、まだみんなと出会う前、虐げられていた時のことを思い出す。
あぁ、嫌だ!
あの頃に戻るのだけは・・・。
けど、現実は辛いことばっかり。
止めみたいに、
「スライムはぶつけあったりしたらくっつくみたい! だから一か所にまとめて! さっきは水魔法を吸収してたし、通路の時みたいに、色のついた水を吸収させればなにかわかるかも‼」
エイラが私抜きの作戦を立てる。
”なんでも自分に都合のいいようにはならねぇよ”
そんなこと、知ってる。
ずっと昔から。
私に都合のいいことなんか、起きたりしない。
でも!
だからって!
期待することもしちゃいけないの⁉
ううん。違う。
私は・・・期待したかったんだ。
人より魔力が多くて、勉強が好きで、魔法の才能があるって学園で言われて、嬉しかったんだ。
人と話すのが苦手で、貴族としての立ち振る舞いさえも出来ない私が。
魔法でなら! って・・・。
わかってたんだ。本当は。
そんなはずないって。
皆に必要だって言われて・・・舞い上がってたんだ。
私は憧れにはなれない。
冒険譚。魔法探求記に出てくる、主人公の女の子を優しく導くお師匠様。
それが私の憧れ。
恥ずかしがり屋で、どこか抜けてて、常識外れに魔法が凄い。
本と杖を両手に携えて、2つの魔法を同時に、完璧に操る。
そんな姿に憧れて、私はずっと練習してた。
でも、出来なかった。
それなのに。
両手の指先に10の魔法を出す人が居た! 現れた‼
そんなこと、誰にでも出来るわけがないのに・・・・・・その人は、出来て当然みたいに言う。
そして・・・そんな私の憧れを、軽く超えちゃうような人が、私に言うんだ。
お前にそんな価値はない。
まるで、憧れが私を否定するみたいに。
無駄・・・だったのかな?
冒険譚で出てくるみたいに、本を開いて、杖でなぞって、2つの魔法を扱おうとしたことも・・・。
在学中、魔法について調べ続けた日々も。
寝る間も惜しんだ努力の時間も!
全部‼
・・・・・・どうして?
どうしてこんなことばっかり、考えるんだろう。
もっと他に。出来ることがあるはずなのに。
ほら、こんなことしてる間に、皆がスライムを集めたよ?
なのに・・・私はただ、立ってるだけ。
目の前の。
この小さなスライムはどうするの?
私がやらなきゃ・・・。
そう思ったのに、
スライムは勝手に離れていく。
なにもしてないのに。
あぁ! なにもしてないからか!
・・・・・・おかしいな。
少し離れたところで、スライムが大きくなってる。
やっぱり、さっきのが最後の1匹。
エイラの予想通りだったね。
透明に黒が混じったマーブルスライムには、核みたいなのが浮き出てる。
凄いね。皆。
私だけ・・・・・・。
こんなこと、考えたくないのに‼
思っちゃいけないの‼
皆、いなくなればいいのにって‼
大きくなったスライムを前にして、皆どうにも出来ないでいる。
核が見えても、外からじゃ届かない。
さっきみたいに分裂させようとしても、くっついてる。
そうだよね。
あなたも、消えるのは怖いよね。
でもね・・・、
皆の視線が私に集まる。
一人でブツブツ言ってたからかな?
うん。いいよ。
大丈夫。任せて。
こんな気持ちと一緒に、消えるから。
私がちゃんと連れて行くから。
だから―――。
「・・・ライトニングジャッジメント‼」
こんな涙は嘘。
だって、私の代わりはいるんだから。