軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迷宮攻略1

「なんだっていうんだ、あの雰囲気。俺様達は手伝ってやる側だぞ? 邪魔ものみたいな扱いしやがって・・・」

「まぁいいじゃない。私達の目的はこれから・・・でしょ?」

「そうですわ! ジェイド様。この迷宮で私達の実力・・・見せつけてやりましょう!」

「き、貴族にも、あるいつものアレ。気にしては、ダメ」

文句をたれるジェイドを他3人がなだめる。

この光景は俺にとっても見慣れたものになってる・・・っつーか、初めて見た時からそうで、今では慣れたと言うべきなのか?

本当は・・・周りから見れば、おかしな事だったりするんだろうか?

学園での話を思うと・・・って、今考えるべきはそんなことじゃねぇか。

「でも、気になりますよね?」

いきなりそんなことを言うヨハンの言葉にビックリしたが、

「なにか、知ってたりしないですか?」

俺の内心など知る由もなく、お構いなしにユノへ話を振る。

「すみません。お爺様はそういうことをあまり話してはくれないんです」

どうやら気になるってのは儀式の間での爺共の確執か。

そんなもん。どうしたって汚ねぇ話にしかならねぇだろうに、そんなに気になるもんかね。

・・・というか、そんなに余裕で話してるってことは、

「この空間には慣れたのか?」

そう言われて、全員が周りを見渡す。

圧倒的に白い空間。

壁も、床も、天井も、通路を作り出しているものはすべてが白。

壁には見上げる高さに赤いライトのようなものが向かい合わせに存在している。眩しいほど光り輝く事はなく、ほんのり、じんわり、けれど揺らぐことのない光。

床にはその光に照らされた影が広がる。光源が多い為、まさに広がるというか、咲くというか。これで歩くと影に伸び縮みが生まれ、足元が黒く蠢く。慣れるまでは気になって仕方ねぇかもな。

天井には・・・特に何もないな。ただの白い天井だ。境界線があやふやなせいで色々と不安な印象を受けるが、な。

総じて、狂いそうになる空間だ。

あまり長居したくはない。

「慣れる・・・かしら?」

「お、落ち着かない」

「そう、ですね。僕もちょっと・・・」

エイラ、ケイト、ヨハンは戸惑う組で、

「まぁ慣れるというほどではないですが、問題ないですわ!」

「どうだっていい。それより、こんなところに本当にモンスターなんて出るのか? 俺様を騙したんじゃないだろうな?」

「ゼネス様! とりあえず進むときには、あのライトを目印にすればいいのでしょうか?」

キューティー、ジェイド、ユノは気にしない組か。

そして、

「・・・・・・・・・・・・・・・」

唯一、リミアは俺を睨むだけ。

その顔には聞きたいことがあるのに、と書かれてるが・・・言葉にまではならなかったのか、もしくは、今言うべきでもねぇと思ったのか。

なにも言わないままだった。

左右のライトを目印に直進を開始。

程なく、

「こちらに脇道があるようです」

先頭を歩いていたジェイドやその後ろにいたキューティーではない、真ん中辺りにいたユノが声を上げる。

「なに⁉」

驚いたジェイドが振り返るが、

「ジェイド。一応この道の奥まで行ってこい」

「なんで俺様が⁉」

「先頭だからだ」

有無を言わさず最奥まで確認させた。

「なにもなかったぞ‼ ただの行き止まりだ‼」

「途中、他に道はなかったか?」

「そんなの知るわけないだろ‼」

「一本脇道があったんなら、他にもあるかもしれねぇとは考えなかったのか?」

「そういうのは気付いた奴が先に言えばいいだろうが‼」

「なんでも人に頼るなよ・・・ったく」

言われたことだけやってりゃいい。と思うのも、教育のせいか? 学園には少なからずそういう側面はあるが・・・。

ああ、いや。んなこと言ってる場合じゃねぇな。

「どうやら、最初の試練は迷路だ。左右に通路がないかよく確認しろ。ライトが目印になるはずだ」

ユノが見つけた脇道にも左右の壁には赤いライトがあった。

ほとんどが白一色で、天井と壁の境目すらわからねぇほどだから、遠くからじゃそこに道があっても気付けねぇ。

「迷路だったら、壁に手をついて歩くっていう定石があるけど・・・どうかしら? 片方は手をついて、反対側を見れば効率がいいと思うけど」

エイラが尤もらしい提案をする。が、

「やめとけ。こんな視認性の悪い迷宮で、罠にかかったら終りだぞ」

「罠・・・ど、どんな?」

「壁が動いたり、床や通路自体が回転したり、後はガスだな」

「確かに、音がしたとことでなにが起こったのかすら、わかりそうにないですもんね。なんなら、目の前でなにかが起こっても、わからないかもしれません」

「じゃぁどうするんだよ! 床にだって罠はあるかもしれないだろう‼ 浮けとでもいうのか⁉」

それも可能性はあるだろうが、

「床の罠は流石に見りゃわかるだろうし、踏み抜くタイプなら気を付けてりゃ避けれるはずだ」

床には影が映る。

不自然な出っ張りも、ヘコみも、あればわかるだろう。

なにより、見てわからないほど床と一体化した罠なら、踏んですぐ底まで落ちることはない。床と同化するほど隙間がないなら、その分摩擦も増すからな。すぐに飛び退くなりで対応できるだろう。

「ずっと床見てたら、今度は通路に気付けないだろう‼ なに言ってんだアンタ‼」

「だったら影をみりゃぁいい」

通路の中央。4つのライトの真ん中に立つ。

「よく見ろ。一番伸びた影は壁まで映ってて、途中で折れてるだろ? これで判断しろ」

俺の影なら壁に映るのは膝の高さぐらいまで、一番身長の低いヨハン、リミアの年少組でも、くるぶしぐらいまでは影が伸びる。

これが途中で折れてなきゃ、そこには通路があるってことだ。

「それと-」

ユノが見つけた通路の奥を指差す。

「―この通路の一番奥には赤いライトがあるが、さっきジェイドが確認した行き止まりにはなにもねぇ。これがなにを意味するかはまだわからねぇが、そういうちょっとした違いがヒントになる事がある。覚えとけ」

行き止まりか、そうでないかの判断基準の時もあれば、ゴールへの道標だった・・・なんてこともある。

全員がそれぞれ反応したのを確認してから、ユノが言う。

「では、こちらの道に進んでみましょうか。ゼネス様」

だが、

「いや、ここは手分けするぞ」

「危なくはないのでしょうか?」

「そうだ! 俺様達に集団でしか戦うなって言ったのはアンタだろう‼ わかれた先でモンスターに出会ったらどうする‼」

「それはねぇよ。たぶん、な」

「どういうことだ⁉ モンスターが出るといったのは嘘だったのか‼」

「いや、あの雰囲気から言ってモンスターは出る。だが、そうだな・・・」

まぁ元々モンスターは出るかもしれねぇぐらいで、絶対に出るなんて言った覚えもねぇが、枢機卿が今回の試験の失敗を目論んでるなら、十中八九出るだろう。

それより、問題は試験の失敗についてだ。

「今回の試験。成功の仕方は爺に聞いたが、失敗についてはなにも言ってなかっただろ?」

「そういえば、そうですね。私もうっかりしていました。伝え忘れたんでしょうか?」

「そうじゃねぇ。最初から教える気がなかったんだ」

「それは・・・なぜでしょう?」

「その方が失敗するから、だろうな」

「お爺様は私に失敗して欲しい・・・ということでしょうか?」

「さぁな。元からそういうしきたりなのか、後ろにいた奴らの手前言うに言えなかったか」

「それで? 結局失敗の条件ってなんなんだよ」

爺さんの考え、なんてもんに脱線しそうになったところをジェイドに引き戻された。

「ああ。1つは時間だ」

「時間?」

「こういう、魔法で作る迷宮は魔力が尽きたらその時点で消えるからな。そうなったらまず間違いなく失格だ」

「だから手分けをしようというのですね」

「確かにな。それで成功になったら失敗なんて存在しないぜ」

そう。最低限の展開時間は決まっていて、その時間以内に踏破できなければ失格というのは当たり前だ。

そして、

「もう1つは、死人を出すことだ」

おそらくだが、聖女の性質上これもあるだろう。

「どういうことでしょうか?」

「考えてもみろ。聖女ってのは祈りで人々を救うんだろ? そんな奴を決めようって試験で、これだけの犠牲の下に新たな聖女が生まれました! なんて、言えねぇだろ?」

「なるほどな。だからモンスターが出るって言えるんだな・・・」

「そんなことを教会がしている、と?」

鋭く切り込んできたのはリミアだ。

確か、こいつの認識では教会は人を助けるための機関。だっけか? そんなところにこんな話が出てきたら、耳も疑いたくなるか。

今はまだ憶測だ。明確に答えてやることは出来ない。だが、組織なんてもんはどこも大体そんなもんだ。

「だったら、やっぱり手分け先でモンスターに出会うんじゃないのか⁉ どうして、ない。などと言える⁉」

「魔力の無駄だからだ。来るかどうかもわからねぇところに、モンスターなんざ配置するかよ」

「わからないだろう‼」

「わかるさ。単一色で迷宮を作るなんて頭の悪いマネまでして、脳に負荷をかけようって連中だ。ここで、そんな横着をするわけがねぇ」

最初に迷路なんて持ってきてる時点で時間稼ぎなんだ。

なら、わざわざ思惑になんか付き合ってやる必要はねぇ。

「人海戦術だ! 罠にだけは十分注意しろよ!」

「ま、待って・・・もっと、効率とか・・・」

「ねぇよ。お前らはモンスターと戦うつもりなんだろ? だったら魔力は温存だ。そうなりゃ人手を使うしかねぇ」

索敵魔法なんかは魔力消費が激しいからな。

「わかったら、いけ!」

そう言うと、体力のなさそうなケイトは絶望を目の当たりにしたような顔で、エイラとキューティーに両脇を抱えられ、引きずられていった。