作品タイトル不明
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「準備は明日のうちにやっておけ。以上だ。解散」
「「「「はい!」」」」
そう言って連日の特訓は終わった。
2人程、最後の返事がなかったが・・・疲れ果てたと言いたそうな顔だったので、まぁいいだろう。別に俺がなにをしたわけでもねぇ。自主的にそこまで追い込んだんだから、それは評価してやるべきだ。
色々引き摺って帰る後ろ姿には懸念しか感じねぇが・・・大丈夫だと思いたい。
明後日には聖女認定試験を受けてもらう。つまり、あいつらの初めての迷宮攻略だ。そう難しいもんじゃねぇし、失敗なんざしねぇだろうが・・・いや、考えすぎも良くねぇな。
そう結論付けた俺は、すぐに教会へと向かった。
自室に戻り、ソファーにドッカリと座ってようやく、疲れたという感想が出る。
教皇の爺さんが暇してるわけもなく、教会ではユノに手を焼かされた。
用件だけ伝えて帰ろうと思ってたんだが、おもてなしだのと言われて仕方なしに一杯だけ茶に付き合ったが・・・、
「紅茶は嫌いなんだ」
誰に言いたいわけでもねぇのに口をつく。
それぐらいには苦痛だった。
好きでもねぇ・・どころか、嫌いな茶に付き合うのもそうだが、自分のおべっかを聞くのもまたきつい。悪意がねぇのが余計にだ。
つっても、依頼主だからな。無碍には出来ねぇしで、本当に疲れた。
「あぁーー・・・・」
指を絡めて腕を伸ばし、頭の後ろへもっていく。脱力しながら沈み込むようにして背もたれに身を預け、チラリと時計を確認する。
そろそろ、ベルとの定期報告会の時間だが話すべきことはあったか・・・。
疲弊した思考力で探ってみたが、これってのは思い当たらない。
そうなると、ベルからの報告を聞いた後は暇な時間になるな。別に会議時間なんざきっちりとは決めてねぇが、報告だけして、はい終わり。ってわけでもねぇ。
いっそのこと、お前のところの部下と違ってウチの下っ端は優秀だぞ? なんて、ふざけてやろうか。
この3日。6人は自分になにが足りないのか、常に考えながら練習に取り組んでいた。ひたすら真面目に。同じ貴族の子供とは思えねぇ程に。
親の意向でやってる奴らなんかより、自分のやりたいことをやってる奴らの方がよっぽどマシだと。学園時代の言い合いやら思い出やらも引っ張り出して・・・それで自慢でもしてやろう。お前もこっち側に来ればよかったのに、ってな。
そうだな・・・、
ヨハンは―――気の弱いところはあるが、素直で真面目だ。
それ故の影の薄さもあるが、ギフトも含めて考えれば、それは長所と言える。
それに、誰に習ったのか知らねぇが、ダガーの扱いも短い期間でよく覚えたもんだ。
魔法や罠は代わり映えしなかったがその分、精度は上がっていた。それは無理をせず、出来ることからやろうという実直さの表れだ。
ソロとしてはまだまだ頼りにならねぇが、臨時の6人パーティーでは遊撃として十分な仕事をしてくれるだろう。
リミアは―――頑固な負けず嫌いだ。わかりやすいぐらいに。
自分の決めた目標にまっすぐで頑な。それは成功の秘訣とも言える。実際、魔法の威力だけで言うなら、すでに俺を超えてるだろう。ギフトのおかげか、教えてもねぇのにもう杖の正しい使い方にも気付いている節がある。
魔法使いとしての才能は上々だといっていい。反面、近接戦闘はお遊戯レベル。
うまくいかねぇときに感情的になるのは幼さのせいか・・・じゃなけりゃ玉に瑕だ。6人の内、火力は随一。一撃必殺の役割だが、安定感に欠け注意が必要。
これに比べて、近い位置にいる2人。
キューティーは―――自分本位なところがある。
ワンパターンな攻撃方法や勝負の景品に婚姻を迫ったりと、周りが見えてねぇ気がするんだよな。
ただ、自分の思う楽なやり方や簡単な方法っつー自分の型を見つけるのが早い。効率的ともいえるが、だからこそ逆に、出来ねぇことはやらねぇし、やりたくねぇこともやりゃしねぇ。そのせいで今後のパーティーを考えると一番の心配どころになる。
つっても、才能だけで言えばおそらく、6人の中では群を抜いてる。
学園で習ったのか、家庭で習ったのかはわからねぇが、貴族女子に向けて作られた細剣術の太刀筋は流れるように美しく、眠たくなるほど基本通りだが、一切ブレねぇ洗練された動きだった。性格的にわき目もふらない努力の結晶ってことはねぇだろうから、それこそ舌を巻くほどの才能だ。
とはいえ、今回は先行や追撃なんかの邪魔にならねぇ役目を与えた。
才能が有ろうが信用出来なきゃ使いようがねぇからな。
ケイトは―――理屈ばかり気になる頭でっかち、だな。
知識や理論を集めるのはいいが、実践できねぇなら意味がねぇ。そっちばっかりに気を取られるせいで、足元がお留守になりがちだ。
見識が広い分出来ることも多く、その中から選んだのは仲間のための魔法。そういう気づかいのを出来るんなら、もうちょっとバランスがよくなってもいいはずなんだが・・・。
魔法使いとしての才能は並。研究者の方が向いてるだろう。頭がよくて吞み込みが早いから、殊更そう感じるのかもしれねぇな。
今回は臨時のパーティーっつーこともあって、6人を支えるための役を担ってもらう。後ろから、全体を把握するサブリーダー的な役だ。とても似合ったもんじゃねぇが、なにが起こるかわからねぇ迷宮攻略だ。是非とも詰め込んだ知識を活用してもらうとしよう。
そして、残りの2人。
エイラは―――苦労人だろう。なぜそれほど世話を焼くのか。理由があるのか、そういう性分なのか・・・まるで母親だ。
わがまま放題の2人と周りに馴染めない本の虫1人の面倒を上手く見ている。
根気強く世話好きだからか、周りのことによく気が付くし、気の使いようは本当に貴族の娘か? 使用人の間違いなんじゃ・・・と言いたくなる程。
そういう意味ではサポートに向いてると言えるか。
手に関するギフトも両手がふさがらねぇっつー利点があるし、魔力量も十分。非の打ちどころはねぇ・・・んだが、それでも気になるのは飛び抜けたところがねぇこと。それじゃぁいずれは・・・・・・。
いや、こいつは回復役も兼任してる。俺と同じことにはならねぇはずだ。
面倒を見る数が4人から6人になることで一番負担が増えるだろう。
母親だってなんでも我慢できるわけじゃねぇ。ましてや、母のような存在が全てを請け負いきれる保証なんざねぇ。その片鱗も見てるしな。そういう意味ではよく見ておく必要がありそうだ。
ジェイドは―――終始、意外だった。
わがままな俺様に違いはねぇが、むやみやたらとケンカを売ってるわけじゃなかった。
もっとヨハンやリミアに絡むかと思ったが、無駄にあてこすることもなく、かといって無視してたわけでもねぇ。
同じ組に割り振っての連携訓練でも、遠慮なしに指示を出してたし、2人からの要求を理不尽に却下したりはしなかった。
盾役として活躍できるぐらいには成長している。
無理やり持たせた重い盾の扱いも、鎧を変えて軽くなった体の動かし方も、言われて意識するようになった駆け引きでさえ、根を上げず、一心不乱に立ち向かい続けた。
まぁ文句は多かったが・・・態度も、元がひどすぎたことを考えれば多少マシにはなった。本当に多少だが。
それでも、自分の役目を果たそうとしている様に見えた。しかも、俺が勝手に変えた役職で、だ。
それは誰のためだ?
それが見て取れなかった。ただ自分の為に。そう見える程・・・前だけを見てやがった。文句さえ、周りを気遣ってるんじゃないかと、思える程に。そのおかげで、他の5人も自分と向き合えたんじゃねぇかと、震える程に。
バカなのに、いや・・・バカだから、だろうか? 人を引き付ける力を感じた。
だとしたら。
適役という言葉が引っ掛かる。
そう。エイラが言うには昔は俺様ではなかったらしい。そして、その原因となったのは教師からの”お願い”。さらに、なぜジェイドだったのか。
お願いなんて軽いもんで人が変わったりするか?
子供の頃の話だ。おだてられて、持て囃されればあり得るか? あいつはバカだしな。とは思うものの・・・ここ数日で、あのバカなりに、責任ってやつを知らねぇわけじゃなさそうだ。とも思う・・・すると、
「洗脳」
という言葉がよぎる。
狭い空間では暗黙の了解なんて言葉が通用するぐらい、刷り込みや同調意識を作り出すのは容易い。
そして、学園というのはその中でも特に狭い空間で、なにより教師という絶対的強権が存在する。
これは・・・・・・ベルに聞くべきことが出来たな。
どうやら自慢している場合じゃなさそうだ。