軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

別れの導

「う~む。やはり道が狭いですな。拡張となれば、街並みも変わってしまいますから、可能であればこちらからも意見をお出ししたく・・・」

「そうか。今出せる分だけでも聞かせて貰ってもいいか?」

「もちろんです。そうですなあ、まずは主軸となる表通りの設置が必要でしょう。特にこちらの大陸では、街を平地に作るのが基本のようですので、縦横に動きやすい経路の確保は絶対です。馬車の通りと人の通りを分けるのも難しいでしょうから。後は商店や邸宅の配置換えも行った方がよさそうに思います。入り乱れていては混雑の原因となります故。それと曲線になっている道を極力失くすのがよろしいかと」

早速、北大陸の都に赴いたサンパダが現地を見た上で率直な意見を並べる。

「聞いた話だがこっちは基本、早い者勝ちが古来からの伝統だったらしい。街が雑多になってるのも、道が曲がりくねってるのもそういうところが原因だろう。だが、全体が円形に近い都なのに道を曲げるのが良くないのか?」

「先程も申しましたように、馬車と人とが通る道を分けることができませんからな。分かりやすく言うなら階段のような通路が作れないのですよ、平地では。そうすると人の速度に馬車を合わせなければならない状況が多くなってしまう。そうなると馬車の意味がありません。荷物は動かせるでしょうが、手押し車とさほど変わりなくなってしまう」

馬という経済動物を使ってそれじゃぁ赤字に近付くだけだと嘆く商人。

「商店や商家と貴族なんかの邸宅や官邸を離すのも、出入りと通行が重ならねぇようにってわけだ」

「その通りです。商売は速さが命と言っても差支えがありません。特に街中、都ともなれば人の数だけ需要があるわけで、品切れは販売機会の損失にしかなりません。1回の会計が小さくとも、積み重なれば底が抜けます」

「了解した。いっそ都自体を四角に広げてもいいかもな」

「名案ですな! 大通りだけでも馬車が余裕をもってすれ違えるだけの――いえ、もっと広げて人が歩く専用の帯域を作ってしまうのはどうです?」

「そこまでするなら柵も付けて徹底的に分ければ接触事故も無くなるかもな。小さい商会の消滅理由の何割かはこの事故のせいだったわけだし、なんなら人が通るだけの橋までかけて、馬車の前を横切らせない道にするか?」

「・・・・・・?」

乗って来たかと思ったサンパダが怪訝な顔で固まる。

「どうした?」

「いえ、人が通るだけの橋とは、いったいどういうものなのかと・・・」

「いやそんなに大したものじゃないぞ? 建物の2階みたいな部分を道の上に渡せば橋になるだろ?」

「ああ! なるほど、両岸に階段を設置して、その上に橋を渡すのですね‼ しかし柱はどうしましょうか?」

「すれ違えるだけの道にするなら、中央に柱を立てても大丈夫じゃないか? 無理そうなら吊り橋になるだろうが・・・風や雪の影響を考えると微妙か」

「いいえ! 流通に革命を起こすこと間違いなしの提案です‼ 設計や建設の可否など、大工に頼ればいいのです‼ すぐにでも詳しいものを呼びましょう‼」

力説するサンパダだが、新しい人員を呼ぶにしても。移動には俺の・・・建前上はジーナの作った新しい転移扉が必要で、今では超の付くほどお得意先になった相手へ一方的にお願いする形になるはずなんだが。

「どうかしましたか?」

「いいや、よくもまぁおかしな関係がここまで続いたなと思ってな」

「アドレスからの旅路を思い出されましたか?」

「あの時の俺は冒険者ですらなくなって、商会長を相手にへりくだるだけの余裕もなかったってのに、随分と腰の低い対応を受けたことが印象的で」

「おかげで立場が逆転した今でも、砕けた態度でお相手願えていますからな。事前調査の重要性を何度でも思い知らされておりますとも」

「してやられたってことか」

「つけ込まれてしまいましたな。ですので、人員の方もお願い頂けますと」

冗談めかした揉み手が恨めしい。

「護衛を呼びに行くか」

サンパダは商会を預かる身。

当然、北大陸なんて場所へ行くなら護衛が付く。

「あっ! そっちはどうでした? こっちは特別、異常なかったですよ!」

俺達の顔を見て、手を振りながら声を出すのはサン。

冒険者パーティー”蒸気の騎乗者”のリーダーだ。

「街の中に異常があるかよ」

「そうじゃなくて、都を改造する話をしてたんですよね?」

「そのことで新しい人員が必要になってな。護衛を呼びに来たってわけだ」

「ああ、そういう。まあ大丈夫ですよ。正直、変な感じですけどね」

サンは振り返って、もう一度見る。

「モンスターじゃなくて、人の・・・・・・って、言っていいのかもわからないんですけど、集団を警備してるだなんて」

望福教の教祖を気取ったドラゴンのせいで、この北大陸には人でなくなってしまった存在が無数にいる。

蒸気の騎乗者はそいつ等が暴れたりしねぇかの警戒を任された。

今、北大陸ではモンスターが脅威になってねぇ。

人間同様に。ドラゴンに操られたモンスターも多数確認され、そのせいか無茶な行動をする個体がほとんどいないらしい。

にもかかわらず、護衛の必要性が薄れねぇのは皮肉だな。

「他の皆さんはどうです? 気分を悪くしたりなどは?」

「ありません。もちろん、気持ちが言いわけはないですけどね」

「申し訳ありませんな。わざわざ呼び戻しておいて、このような仕事を押し付けてしまって」

「そんなッ! 俺達はサンパダさんのおかげで今があるんです! このぐらい幾らでも‼」

サンパダの言葉をサンが瞬く間に否定する。

本当なら蒸気の騎乗者はアドレス攻略に出向くはずだった。

理由は色々あったようだが、内乱の影響も大きかったらしい。

「それに・・・見られてよかったです。一歩間違ってれば、俺達も・・・」

「貴方達なら大丈夫ですよ。宗教になど興味がないでしょう?」

「サンパダさんに出会ってなかったら、縋ってたかもしれませんけどね」

「それならよかった。お金を信じた甲斐があったというものです。商人冥利に尽きるというものですな」

立ち尽くす人、倒れ積み重ねられる人、座っているのかさえ覚束ない人。

衰弱も進み、生きてるのか死んでるのか。

それらが山の様に一箇所に集められてた異様。

圧巻という他にない。

「俺達も、もっとお金で貢献出来たらと思ってたんですけど、いつこうなるとも知れないってなったら、アドレスへは挑戦しておきたくて」

「南の領地で育ったのならば、そう思うのも無理からぬこと。謝ることも、悪びれる必要もありません。ですが恩に着てくれるというのであれば、素材の売却などはマンサ商会に任せていただきたいところですな」

「あはは、それはもちろん・・・・・・―――」

途中まで言葉に出してから、不意に詰まるサン。

「アレ? そういえば、俺達が南の領地で育った話っていつしました?」

「どうでしたかな? 何分、歳を取ってきているので、詳しいことは覚えていませんなあ」

「ホウやフッチのことも、気付いたら知ってたような・・・?」

「おやっ! 大公様をあまりお待たせするものではありませんなッ! さあ、皆さん! 集まってください! 一度、皇都へ帰りますよ‼」

パンパンッ! と、取り繕うように手を叩いて呼びかける。

「・・・事前調査ね。意外とアンタが全部の黒幕だったりしてな?」

「鑑定でもしてみますかな?」

サンパダはニッタリと怪しく笑うが、その表情は迫力を欠いた狸の顔で、悪を演じるには役者不足が過ぎると思わされた。