作品タイトル不明
可愛気
冒険者ギルドに到着後、ジェイド達を探したが姿は見えず。
受付でミリーに聞いたところ、
「依頼受けてすぐ出てったよー?」
とのこと。
依頼内容はレッサーライガーの調査・討伐だそうだ。
可愛いところもあるもんだ・・・と思えばいいのか?
まぁ俺が色々教えたからじゃなく、単純に割のいい依頼だったから、かもしれないが・・・。
皇都北の森。
いつもの広場から・・・森に向かった痕跡はない。
別の場所から入ったか?
痕跡があれば、後追いが出来、見つけるのも見守るのも楽だったんだが・・・。
ないとなると、森の中から探し出す必要がある。
面倒くせぇ。
つっても、そこまで広い森でもない。
なにより、
「昔は俺達にとっても、庭みたいな場所だったな。そういえば」
久々に、見て回るのもいいだろう。
蟻みたいなことがないとも限らねぇし、な。
しばらく見て回った末、ジェイド達を発見。
声をかけるか迷ったが、
「首尾はどうだ?」
すでにモンスターは倒した後だったらしく、それなら見てる意味もないか。と、すぐに声をかけた。
近くにいたエイラに話しかけたつもりだったんだが、ジェイドが寄ってきて答える。
「こんな依頼に手間取るわけないだろ?」
「・・・そういうなら、もうちょっとどうにかならなかったのか?」
ズカズカと目の前にまで来た、血まみれになっているジェイドに聞いてみる。が、
「別にいいだろうが‼ どうなっていようと‼ アンタには関係ないんだからな‼」
強がるだけだ。
「そうは言うが・・・」
足元に置かれた戦利品は、
「満額にはならねぇぞ? これじゃぁ」
あんまりにも残念な姿だった。
「どういうことだ⁉ 傷付けずに戦ったんだぞ‼」
横たわるレッサーライガーの毛皮には確かに傷はない。
だが、
「汚れすぎだ。血の処理もしねぇまま剥いだだろ。血は落ちにくいし、臭いもつく。解体になれてねぇにしても、もうちょっと器用な奴にやってもらえばいいだろう?」
肉の剥がしもうまくいかなかったのか、上から見ただけでも張っていたり 縒(よ) れていたりと、散々な有様だ。
その上、血濡れとなれば満額はおろか、買取すらつかない可能性もある。
それはパーティー的にも死活問題のはずだ。
いずれ、出来るようにはならなきゃなんねぇが、今はせめて、困らないように手先が器用な奴が担当するべきだ。
そう思って周りを見渡すと―――全員が顔や手をブンブン振って、無理です! とアピールしていた。
いや、お前ら冒険者になるんだろう? これから先、どうするつもりだよ・・・。
頭を抱えさせられるが、つーことは?
「仕方ないだろ! 初めてなんだぞ! 出来てはいるんだ‼ それでいいだろ‼」
「誰もやりたがらなかったから、お前がやったのか?」
「だったらなんだ‼」
「いや・・・」
俺様っていうぐらいだし、やりたくないことはやらないと思ってたんだが。
仲間には違うのか?
今も涙目だし・・・あぁ、でもそんなもんか。
誰だって、味方になってくれる相手には良くするもんだ。
それを見れたのは収穫だな。
指導にも使えるだろう。
ただ、
「まぁ、やっちまったもんはしょうがねぇ。まだ時間はあるし、指導でもしようかと思ってたが、今日はもう報告だけ行って上がれ。そんな血まみれじゃ、なんにも出来ねぇからな」
「関係ないだろ⁉ 汚れぐらい! 俺様はまだ‼」
「血は単純な汚れじゃねぇんだよ! 他のモンスターを呼んだり、病の原因になったりするんだよ‼ わかったらさっさと落としてこい!」
特に、モンスターの血はどうなるかわからないことばかりだ。
中には血を武器にするモンスターもいるぐらいだし、放置はありえない。
「誰に習ったらこうなるのか知らねぇが、二度とこんなことならねぇように解体もきっちり叩き込んでやるから、覚悟しとけ」
「こんなこと習うわけないだろ‼ あの時の、アンタのを見てやったらこうなったんだ‼ アンタのせいだ‼」
へぇ?
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・なんだよ?」
「嘘だな」
「はぁ⁉」
「俺の解体を見てたんならもっとマシな出来になるはずだ! つまりお前は、碌に俺のことなんざ見てなかったってことだ」
「ちゃんと見てたに決まってるだろ‼ あの時、俺は‼ ―――」
そこまで言って・・・なにに気付いたのか、舌打ちして振り返り、足元にあった無残な毛皮を引っ掴んで、
「行くぞ‼」
周りに 促(うなが) してズンズンと帰り道を突き進んでいった。
残りの3人は、わからないような、呆れたような、ニヤついた表情で、それぞれ追いかけていった。
それにしても、
「見てた、ねぇ?」
初めてのことを、やりたくもないことを、見てた程度の知識で、形だけでもやり遂げるとは・・・見込みは十分あるのかもしれねぇな。
こんな気持ちは 何時(いつ) ぶりだ?
純粋に。
「楽しくなってきたじゃねぇか・・・」
俺は森の奥、まだ見て回ってなかった場所を庭のように駆け回って帰った。