作品タイトル不明
第九話
それからの日々はとても穏やかだった。
ラルフとアイリーンは、正式にお付き合いをすることになった。
ラルフとは定期的に手紙をやり取りし、休日には一緒にお茶を飲んだ。時々城下や庭園を散歩した。
ブティックでうっかり買い物をしすぎた時は、ラルフは笑って荷物を持ってくれた。
アイリーンのちょっと我儘なところも、賑やかなところも、ラルフは全部穏やかに受け止めてくれた。
アイリーン・マーガレットにとって、それはとても居心地の良い場所だった。
そしてある日、ラルフから手紙が届いた。
騎士団の事務官として復帰することが決まった、と。
アイリーンは泣いて喜んだ。
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「アイリーン嬢」
グランツローゼの活動終わり、オルガに声をかけられた。
「なぁに?」
「兄が、前のように明るくなったんだ」
静かな声だった。
「事務官とはいえ騎士団への復帰も決まって……久しぶりに、あの頃の兄の顔を見た気がする。君のおかげだ。ありがとう」
「あたしは好きなことをしただけよ」
オルガがわずかに表情を緩めた。それから少し間を置いた。
「……一つ、聞いても?」
「ん?」
「マリベル嬢と、仲を深めるにはどうしたらいいと思う」
アイリーンは瞬きをした。
「……は?」
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翌日、マリベルと二人でお茶をしていた時のことだった。
窓から陽が差し込む穏やかな午後。他愛のない話をしていたところで、マリベルが急に身を乗り出した。
「ねえアイリーン、聞いてもいい?」
「あら、なに?」
「オルガ様と……もっと仲良くなるにはどうしたらいいかしら」
アイリーンはティーカップを置いた。
静かに両手で顔を覆った。
「あ、アイリーン……?」
「……そうよね」
よくよく考えれば当然だ。
アイリーンはマリベルのオルガルート攻略をサポートするつもりだった。
でもラルフに現を抜かしているうちに、気づいたらその手を完全に離していた。
しかも悪役令嬢としての妨害も全くしていない。
つまりマリベルとオルガの仲は、誰も押しも引きもしないまま、なんとなく良好の距離で止まっていたのだ。
「ごめん、なんか変なこと聞いた……?」
マリベルが不安そうな顔をしている。
「ううん、違うの」
アイリーンは顔を上げた。
まあ、仕方ない。
ラルフと一緒になれたのは、マリベルが頑張ってくれたからというのもある。
あのグランツローゼへの特訓も、クラレント家への訪問も、全部マリベルがいたからできたのだ。
そして、今も勉学に励み一定の成績を残せているのは、紛れもなくマリベルの協力のおかげだ。
恩返し、しないとよね。
ゲームにはないルートを自分で切り開いたのだ。マリベルとオルガをくっつけることくらい朝飯前だ。
幸い二人は両想いのようだし。
オルガについての知識は大量にある。
「わかったわ。マリベル! オルガ様の攻略手伝ってあげる!」
「え、こ、攻略……?」
「よし、まずは作戦会議ね!」
アイリーン・マーガレット。
マリベルのオルガルート攻略、要介入開始。