作品タイトル不明
第四話
学園から少し離れた建物の二階、そこがグランツローゼの集会室だった。
重厚な木の扉の前で、アイリーンは息を呑んだ。
「……緊張しますね」
隣でマリベルがぽつりと言った。
「大丈夫よ」
集会室には既に上級生のメンバーが数人いた。ちなみにこの上級生達も攻略可能である。
アイリーンとマリベルは用意されていた席に着いた。
そしてしばらくして、オルガも入ってきた。
定刻になり、上級生のまとめ役らしい三年生が全員を集めた。
「今年度の一年生は三名。自己紹介をどうぞ」
促されて、三人が順番に名乗る。
「オルガ・クラレントです。よろしくお願いします」
簡潔だが印象的な挨拶だった。流石はクラレント家。
「マリベル・ネージュです。至らない点も多いかと思いますが、精一杯努めます」
少し緊張しつつも丁寧な挨拶。真面目な子だと一発でわかる。上級生の何人かが微笑んでいる。
「アイリーン・マーガレットよ。よろしく!」
にっこり笑って短く済ませた。これがアイリーンらしい挨拶だと思う。
自己紹介が終わり、今年度の活動説明が始まった。
行事の補佐、学園施設の管理、外部への対応窓口……やることが多い。
それでいて成績は一定以上をキープ。学年代表として皆を引っ張っていくリーダーシップも必要ときた。
とんだブラック組織だなと内心思った。
説明が終わり、解散になった。
上級生たちが談笑しながら部屋を出ていく中、マリベルがそわそわとオルガの方を見ていた。
アイリーンは小さく背中を押した。
「声かけてみたら?」
「え、でも……」
「図書室で話したんでしょ? 接点はあるじゃない」
マリベルがおそるおそるオルガに近づいていく。
アイリーンは少し離れた場所からその様子を見守った。
「あの……図書室でお会いしましたよね。改めて、マリベルと申します」
「もちろん覚えている。本をぶつけてしまった件は申し訳なかった」
「い、いえ、私の方こそ……!」
二人の会話が始まった。
よし。
アイリーンは少し離れたところで二人の様子をそれとなく観察した。
マリベルは緊張しつつも健闘している。オルガも悪くない反応だ。
好感度はまだ低いが、印象はマイナスではない。順調順調。
しかしそこでマリベルが少し詰まった。
「えっと……オルガ様は、その、グランツローゼにはどういった経緯で……」
聞いたはいいが、答えが怖くなったのか語尾が消えていく。
アイリーンはすっとその場に割り込んだ。
「ねぇ、オルガ様。あたし前から気になってたんだけどぉ……」
オルガがアイリーンに視線を移す。
「グランツローゼって優秀な方が多いでしょう。てことは優秀なクラレント家からも過去に誰かいらしたんじゃないかしら?」
「ああ……兄が在籍していたな。とても優秀で……」
「まぁ! お兄様が!」
アイリーンは心の中で叫んだ。
(ラルフ!!!!!!!)
ゲーム内でラルフの事が語られる時は大体グランツローゼ関連だった。
明言はされてなかったけど間違いなく入ってたんだろうなと思っていたら案の定だった。
ゲームにはないセリフ! ラルフへの言及!!
興奮が最高潮に達しそうだったが、長年の令嬢教育の賜物が何とか品性を保ってくれていた。
「あ……お兄様はご卒業後はどちらに?」
マリベルが口を開いた。
「王宮騎士団に……」
「王宮騎士団!?」
初耳すぎる!! ナイス質問よマリベル!
オルガの兄ラルフは王宮騎士団所属。ああ、字面だけでもかっこいい……
「ただ……」
オルガの顔が曇った。
「……いや、何でもない」
オルガが小さく首を振った。
表情がすっと元に戻った。
今のは一体……?
かなり気になるが、今日は初日だ。踏み込みすぎもよくない。
「へぇ~、王宮騎士団なんてすごいわ! さすがクラレント家ね」
アイリーンは一瞬引っかかったが、深追いはしなかった。