軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白魔導師、街を旅立つ

太陽がだいぶ高くまで昇った頃。

待ち合わせの場所である宿の前へと到着した。

そこにはすでに、準備を済ませたと思われるユイたちの姿があった。

皆、収納魔法を使っているのか、荷物のような物は見当たらなかった。

ユイを除いてだが……。

ユイも昨日の練習で収納魔法は使えるようになったのだが、収納出来る量があまりにも少ないため、武器以外は俺が持つこととなっている。

やはり、魔法が苦手なのだろう。

苦手なものを無理に急いで克服する必要はない。

繰り返し使い続けていれば、少しずつ収納出来る量も増えていくはずだ。焦ることはない。

「あっ、ロイド!」

俺に気がついたユイが歩きながら、こちらへと近寄ってくる。

「朝から見かけなかったけど、何処に行ってたの?」

「あぁ……その」

ユイの発言から、昨晩から居なかったことはバレてなさそうだ。

別にバレても困ることでもないのだが。

「ちょっと用事があってな。出掛けていただけだ」

わざわざ森で魔法の練習をしていたことを言う必要はないだろう。

あまり寝てないなんて言ったら、依頼に影響が出ないか心配されるかもしれない。

ただでさえ、帝国の第二皇女を王都まで護衛するという責任重大な依頼で、不安だろうに、そこでさらに不安をあおるような発言はしたくなかった。

それに用事(反省点の改善と魔法の練習)があって、(夜中に森へと)出掛けていたのは事実だ。

嘘はついてない。

「ならいいわ。見たところ元気そうだしね」

一睡もしていないわけではない。

ちゃんと仮眠は取っている。

俺たちを待つ、あまりにも荷が重い依頼に影響は出ないはずだ。

ちなみに、昨晩の魔法作りについてだが、結果として、俺の考えた魔法を実現することは現時点では無理だった。

もともと、魔法作りを短時間でするなんてことは不可能な話だ。

既存の魔法を改良するのに比べ、魔法作りは難易度がはるかに高い。

存在するものをいじるのと違い、存在しないものを一から作るのだから、魔法作りの方が難しいのは当然だろう。

まぁ、時間がかかることは想定内だ。魔法作りに関しては、空いた時間にコツコツとやっていこう。

依頼中にだって余裕があれば、時間を確保出来るかもしれないしな。

「それで、準備は出来てるの?」

「いや、一つだけ忘れ物があるから、それだけ取ってこようと思う」

昼過ぎまでならばまだ入室可能だ。

部屋に赤い魔石を置いたままだから、それだけ取りに行かなければ……

他のものは予め収納しておいたのだが、あれだけは出来なかったからな。

いや、もしかすると収納出来るのかも知れない。

だが、あの魔石が何なのか分からない以上、下手なことは避けるべきだとそう考えた。

それにあのサイズのものならば、収納魔法を使う必要もないだろうし。

「すぐ戻ってくる」

俺はそう言い、急ぎ足で部屋へと向かった。

扉を開け、部屋へと足を踏み入れる。

そしてベッドの下へと手を伸ばした。

ゴソゴソとてを動かしていると、柔らかい何かに触れた。

「あった……」

魔石を覆う布を掴み、そのままベッドの下から取り出した。

そこで俺はとある違和感を覚えた。

魔石がくるまれているはずなのに柔らかい。

重みはあるが、硬くないのだ。

もしかして、取られたのか?

そう思い、俺はおそるおそる布を開いた。

「砂……それとも灰か?」

そこにあったはずの赤い魔石の姿はなく、かわりにさらさらとした灰のようなものが、布の中から現れたのだ。

これがあの魔石なのか?

危険を承知で試しに魔力を流してみるが、これといった反応はない。

まったく別のもの、と考えるべきか……

ユイたちを待たせているため、俺はその物体を布にくるみ、収納し、部屋を後にした。

魔力に反応しないのならば、問題ないはずだ。

その後俺は急いでユイ達のもとへと戻った。

「すまない、待たせたな」

「大丈夫よ、まだ時間はあるから。はい、悪いけど荷物お願いね」

荷物を収納した後、俺達はアベルの屋敷の近くにある林へと来ていた。

周囲はしーんと静まり返っており、ひんやりしている。

生い茂る木々が日光を遮っているため、若干暗い。

そんな林の中を歩いていると、アベルと数名の騎士の姿が見えてきた。

近くには、フードを被った人もいた。

おそらくはあれがクレアだろう。

正直、めちゃくちゃ怪しい格好なのだが、あれはすれ違う人達から、帝国の第二皇女だとバレないようにするものだろうな。

確かにあれならいくら怪しくても、帝国の第二皇女だとは思うまい。

一応、第二皇女の件は秘密事項らしいし。

それに魔族も襲撃してくるならば、それなりの実力者を出してくるはず。

見た目で誤魔化せるほど甘くはないだろう。

作戦から察するに魔族との戦闘は前提と言うことか……

「お待たせしました」

「あぁ、ダッカスくん。昨日ぶりだね」

アベルがにこにことしながら、こちらへと近寄ってきた。

まったく、何がそんなに嬉しいのやら。

その後、アベルによる簡単な説明が行われた。

マナポーションや救急キット、数日分の食料などはアベルが全て用意してくれた。

俺が収納魔法を使えることを知ってか、知らずか。

全部合わせるとかなりの量があった。

俺はそれを収納しながら、アベルの話へと耳を傾ける。

「まぁ、昨日も話したけど、途中から頼りになる助っ人が来るから。それと勇者の一人が王都に向かっているらしいよ。まぁ……彼は」

「彼は?」

「ううん、何でもない。変わり者だけど、きっと力になってくれるはずだよ」

そう言うとアベルは、苦笑いを浮かべた。

何故苦笑いかは知らないが、勇者がいると言うのは心強い。

それに頼りになる助っ人もだ。

アベルがあそこまでいうのだから、かなりの強者だろう。

「それじゃ、大変だろうけど第二皇女の護衛を頼んだよ」

こして第二皇女の護衛依頼が始まった。

ユイ達からは、緊張しているのが伝わってくる。

俺も経験のない依頼に少し緊張していた。

さて、俺もユイ達の足を引っ張らないように頑張らないと……