軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白魔導師、とパンケーキ

アベルの屋敷から出た後、俺達は街の中を、宿へと向かい歩いていた。

皆、暗い表情でうつむいている。

無言で歩いていると突然、先頭を歩いていたユイが振りかえった。

「皆、本当にごめん!」

ユイが深々と頭を下げる。

「もう気にすんなよ。悪いのはあいつだ。ユイが断れないのを知った上で言ってやがったし……」

「そうですよ……クロスの言う通りです。そんなに気にやむことはないです」

クロスとシリカの言葉に、ダッガスも頷く。

俺もクロス達と同じで、ユイのせいだとか、ユイが悪いだとか、そんなことは思っていない。

あれは確かに、腹黒アベルが悪い。

どこで仕入れた情報か知らないが、ユイは「人のため」と言われると断れないことを、あらかじめ知っての発言だった。

屋敷へと呼んだ時点で、こうなることは確定していたのだろう。

まんまとはめられたわけだ。

「ユイ、落ち込んでいても仕方がない。とりあえず、準備を整えないか?」

アベルは明日と言っていた。

文句の一つでも言いたいが、言い分はわからなくもないし、承諾してしまった以上は急いで準備をしなければならない。

どうせ今さら、「やっぱり無理です」とは言えないだろうしな。

「あぁ、ロイドの言う通りだ。明日までに出発出来るよう、準備を整えないと……」

ダッガスがそう言った直後、シリカが何かを思い出したらしく、こちらを向いた。

いったい、何の用だろうか?

「その、まだ昼ですし……時間はあるので、えーと……収納魔法を教えてくれませんか?」

あぁ、そう言えば……。

ハイウルフ討伐の依頼前に、そんなことを約束していた。

確かに、あの魔法なら簡単だし、今のうちに教えておいてもいいかもしれない。

この先、何があるかは分からない。

自分達の武器くらいは、自分で管理出来るようにしておいた方がいいだろう。

「そうだ、教えるって約束だったな……ダッガス達にも教えておきたいんだが、時間は大丈夫か?」

無理に習得することはないが、出来れば使えるようになっていて欲しい。

そんなに時間はかからないし、何より使えれば便利だからな。

時間があればいいのだが……

「俺は大丈夫だぜ。まぁ、荷物整理にそんな時間はかからないし……あれ、使えたら便利そうだもんな」

「確かに……いつまでも盾を背負うよりかは、魔法で持ち歩けた方が楽だ。それに、習得出来れば各々の貴重品を自分で管理出来るしな」

クロスとダッガスは大丈夫みたいだ。

シリカも時間はあるらしいしな。

後は、ユイなのだが……

下を向いており、顔が見えない。

もしかすると、未だにあのことを気に止んでいるのだろうか……

そう思ったその時。

ぐぅぅぅぅと言う、大きな音が聞こえてきた。

そして、その音の先には、両手でお腹を押さえるユイの姿があった。

「ごめん。その、お腹減ってて……」

ユイが申し訳なさそうに言う。

ダッガスらも多少ユイのことを心配していたようだが、馬鹿らしかったとため息をついている。そうだ。思い返せば、ユイはそんなことを気にして病むような人ではない。

「まぁ、今日は朝ごはん食べてなかったしな……今から食べに行くか」

ダッガスの言うように、今日は朝食を取っていない。

収納魔法の練習をする前に、食べておいた方がいいかもしれないな。

「そうだな」

「えぇ、そうしましょう。そう言えば、近くに行ってみたいお店があったんですよ。確かそこでは……」

そこから話が盛り上がり、俺達はパンケーキが美味しいという飲食店へと行くことになった。

聞けば、かなり有名なお店らしく、別の街から来るお客までいるみたいだ。

確かにそこのパンケーキは美味しかった。

ちなみに、俺が食べたのはわりとシンプルな奴だ。

メニューの中には、見たことのないようなものもあり、ユイとシリカはそれを頼んでいたが……

今、イシュタルの間ではそう言うのが流行っているらしい。

俺にはまったく分からなかったが、きっと美味しいんだろうな。

その後、パンケーキを食べ終えた俺達は、出会って最初に行った森へと向かった。

そう言えば……。

俺は森へと向かう最中でとあることを思い出した。

確かに、収納魔法の習得は簡単だ。

時間もそんなにかからない。

しかし、あれは意外と危険でもあることを……。そして、俺はそんな危険な方法以外の修練方法を知らない。他人に教える身になるなんて思っていなかったため、修練法の改善気にかけたこともなかった。

そんな大切なことを、俺はユイ達に伝え忘れていた。