軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イシュタル防衛④

「まだ……なのか?」

騎士が残りのマナポーションを見ながら呟く。

大量にあったマナポーションも、気がつけば残り数十本……

矢の数もかなり減っている。

物資も底をつきかけており、体力もかなり削られている。

その騎士だけでなく、その場にいる全員が不安を募らせていた。

「くそ……もう、そう長くはもたねぇぞ」

特に、前線に立つ盾を持った人達は、装備もボロボロで満身創痍になりながら戦かっており、今にも倒れそうな人も見受けられた。

しかし、モンスターは容赦なく突進してくる。

まるで命は惜しくないと、そんな不気味さを纏いながら、だ。募る疲弊は、兵士の中の恐怖を煽り立てる。

そして……

「もう、限界……」

盾を持つ男が一人、地面に倒れこんだ。

ついこの間、Eランクになったばかりの冒険者だ。

その隙を見逃さず、一匹のモンスターが空いた所を通り抜けようとする。

「させるか!」

そのモンスターの攻撃を、リナが盾で受け止めた。

とても片腕とは思えない力強さを持ってその盾で弾き、モンスターを堀の底へと落とす。

「リナさん、すみません……」

「いや、気にするな。Eランクの冒険者にしてはよく頑張った。後は休んでおけ」

「あ、ありがとうございます」

そのEランク冒険者はそう言うと、身体を引きずりながら後ろへと下がっていった。

それからは、冒険者が離脱したのを初めとし、次々と低ランクの冒険者から脱落していった。

一人、また一人と抜けていく。

そして陣形が徐々に崩れ始めた。

それにより、残っている騎士や冒険者の負担が大きくなり、より疲労がたまっていく。

「しまった!」

盾を持つ男の横をモンスターが通りすぎる。

よく見れば、すでに盾の壁は崩壊し始めていた。

所々に隙間がある。

モンスターはそのまま、杖を持った魔法部隊の女のもとへと真っ直ぐ走っていった。

「きゃ!」

それに驚いた女が尻餅をついてしまう。

膝がガクガクしており、立つことが出来ない様子だ。

座ったまま、必死に後ろへと後ずさる。

しかし、モンスターは止まらない。

そのままモンスターは、女性を鋭い爪で切り裂こうとした。

その時だ。

何かが、物凄いスピードで女とモンスターの間に割り込む。

「ふぅ、ギリギリ間に合った……」

女の目の前には、大きな盾でモンスターの鋭い爪を受け止めているダッガスの姿があった。

さらに、そのモンスターの頭を、遠くから飛来してきた矢が撃ち抜く。

また、別の場所では……

「ウィンドカッター!」

森にいるモンスターの群れを、大量の風の刃が切り裂いた。

バラバラに切り刻まれたモンスターの肉片が地面へと転がる。

「す、凄い……モンスターが一瞬で」

その光景を見た、一人の騎士が呟く。

刃が飛んできた方向に視線を向けると、そこにはクロスとシリカがいた。

「何とか間に合ったようですね」

「あぁ、そうみたいだな」

武器を構えた、クロスとシリカがほっと胸を撫で下ろす。

確かに、少し遅れていれば死者が出ていたかもしれない。

良いタイミングで来れた、と言うべきだろう。まだ、奇跡的にも死者は出ていない。

「あれは、ダッガスとシリカ、それにクロスじゃないか?」

冒険者の男が、指差しながら言う。

その瞬間、多くの視線が三人へと集まった。

「ほ、本当だ!」

「つまり、私達は助かったの?」

ダッガス達に気がついた冒険者達が、ざわざわとした雰囲気になる。

また、それは騎士も同じだった。

彼らが到着するまでの時間を稼げたのだ。

自分達の戦いが無駄でなかったことが分かり、安堵しているのだろう。

しかし、

「おい! ロイドはどうしたんだ?」

モンスターの攻撃を受け止めながらリナがダッガスに問いかける。

それを聞いた冒険者や騎士達も気がついたらしい。

この中にユイとロイドがいないことを……

「まさか、任務中に……」

良くない想像が、リナの頭の中を過る。

もしかすると、ロイドは……

「いや、森の中で少し気になるものを見つけたらしくてな。だから、すぐに戻ってくるはずだ」

「ほ、本当か?」

「あぁ……本当だ」

それを聞いたリナは、ほっと胸を撫で下ろす。

「そうか……では、ロイドはここに来るのだな?」

「あぁ、それにロイドのことだ。きっと解決策も考えてあるだろう。あいつはこの状況を読んでいたしな」

これはリナも予想外だったらしい。

まさか、ロイドがすでにこのことを察知しているとまでは思っていなかったのだろう。

リナの中の不安が、一気に希望へと変わる。

「……皆、聞いたか!もうすぐロイドが到着する。それまで何としてもモンスター達の足止めするんだ!」

リナが冒険者と騎士達に向かって叫ぶ。

「おい、もう少しだってよ!」

「よし! やってやろうじゃない!」

「我々、騎士の力を見せつけてやれ!」

リナの言葉を聞いた冒険者と騎士達の士気が高まる。

ロイドの存在もだが、やはりSランク冒険者が来たことが大きく影響しているのだろう。

まだ、希望はあるのだと……

その後、リナ達はロイドが到着するまで、最後の力を振り絞り全モンスターの侵入を阻止しようと戦い続けた。