軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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騎兵の脅威っていうのは、映画やら漫画やらで散々見てきたつもりだった。

ダンジョンに潜るようになってからは、繰り返し思い出した。

だが、これほどとは!

迫りくる人馬一体の化け物を前に、喉を震わせ咆哮を上げる。

デカい、そして速い!!

馬の頭が、俺よりも上にあった。当然、それに 跨(またが) るデュラハンの頭はさらに上。

殴ろうとするゴリラや、食らいつこうとするラプトルとも違う、突進の威力そのもので殺そうとする動き。それは本能的な恐怖を呼び起こす。

数える間もなく、デュラハンが目前に来ていた。

胸を狙う正確なランスの一突きに、ツヴァイハンダーを合わせて受け流す。摩擦だけで体を全部持っていかれそうだ。

派手に飛び散った火花が熱い。顔の表面にチリチリとした痛みを感じた。

俺たちの間を切り裂くように通り抜けたデュラハンは、30メートルほど離れた場所で立ち止まり、くるりとこちらに向き直る。 骨の馬(スケルトンホース) の前足がガツガツと地面を搔いた。

『アフィ レ オ マロシ』

スイが小声で唱えた。宙に現れた火球がデュラハンに飛ぶ。

『イア シスカ』

くぐもり、掠れた声がした。デュラハンの脇に抱えられた頭部からだ。

火球が炸裂。だが、デュラハンの前方には黒水晶の盾が展開されている。

「魔法での防御か、面倒くせえな。ロボと同じのか?」

「言語系が同じかは不明ですが、見た目は同じですね」

宙に浮くトウカが答えた。

空中という安全地帯にいるの、ちょっとズルくねえか?

盾を張った状態で、再び俺へのランスチャージ。今度は1回目よりはっきり見える。

段々と視界の中で大きくなっていく騎馬。そして、長大なランスの先端が真っすぐ俺に向かってきている。

ちらりと目だけで足元を確認した。

紫の霧のようなものが、無数の人の手となり、俺の足に絡みついている。

なるほど、逃げられなくしてから打ち抜くってわけか。

「ナガ!」

スイの声。再び放たれた火球も、黒水晶の盾に弾かれた。

俺の後ろから投げ放たれたシャベルは、肩の丸みを帯びた装甲に流される。

逃げ場のない一騎打ちを、馬上の相手と強いられる。

けどな、交錯の瞬間はお互いに無防備だろ。

大上段に構えた2本のツヴァイハンダー。それを背中側から地面につくくらい振りかぶる。全身を大弓のように引き絞った。

ギロチンのように高速で落とす切っ先。その対象は、俺を貫こうとするランスの向こう側。デュラハンの本体だ。

デュラハンの動きがブレた。ツヴァイハンダーから逃れようとして、体を大きく捻る。

ランスの切っ先がブレた。俺も半身になって、ギリギリで避ける。

お互いに致命傷から逃れようとした結果、スケルトンホースの後ろ足だけが斬り飛ばされた。

バランスを崩しながらも、乗り手を守るように、腹ばいで地面を滑る馬。

土を派手に巻き上げたスケルトンホースは、負荷に耐えきれなくなったか、がしゃりと音を立てて潰れた。

「馬を失ったら形無しだな、首無しの騎士さんよ」

崩壊した背中から降りたデュラハンは、動かなくなったスケルトンホースを前に立ち尽くす。

感情などないはずだが……。

くるりと振り返ったデュラハンは、スケルトンホースの亡骸を守るように、その前で深く腰を落としてランスを構えた。

俺も両手でツヴァイハンダーを構え、正対する。

「伝わるかは知らねえが、一応言っておく。お前の相棒にはもう手を出さねえ。巻き込みたくねえなら、もう少し前に出ろ」

騎士みてえなことしやがって。

最近エルフと関わったせいで、モンスターとの距離感が狂わされているのを感じる。意思疎通なんてするんじゃなかった。

言葉よりも態度で感じるものがあったのか、デュラハンはランスを下ろし、ゆっくりとこちらに歩を進めてきた。

その体が、爆炎に包まれる。

衝撃と熱風。 咄嗟(とっさ) に両腕で顔を庇った。なんなんだよ!

風が吹き抜けたあと、そこに残っていたのは、粉砕されたデュラハンの鎧だけだった。

「ははははァ、火球とはいえ流石に20発もまとめて撃ち込めばァ、効くかァ」

笑い声が聞こえた。

破壊されつくした骨の道の奥、大木の木立の中からメガネが姿を現した。引き連れているのは 関(せき) と、杖を持った数十人の配下たち。

「……何しやがる」

「高位のアンデッドに苦戦してるようだったからなァ。助けてやったんだよ」

「求めてねえぞ!!」

思わず怒鳴りつけた。

「モンスターを殺したのにィ、怒られる道理がねェなァ」

「ちっ」

舌打ちが漏れる。

不快だが、それだけだ。確かに真っ当な支援と言えなくもない、かもしれない、くらいのことではある。

「まあいい。それより、てめえご自慢のユンボはあそこで火葬炉になってんぞ」

「想定外だったな、ありゃァ……」

メガネは目を細めながら憎々し気に言う。

「第2形態までやられることはねェと踏んでいたんだがァ」

「第2形態?」

メガネは不機嫌そうに鼻を鳴らした。

「実はァ中国の人民解放軍が一度やり合ってる。小隊で挑んだ結果、取り逃してるがなァ。広範囲にアンデッドをまき散らしながら進むのが第1形態。本体が出てくると同時に質量攻撃するのが第2形態だったはずだァ」

そう話している間にも、ぞろぞろと現れる配下たちの数は優に100を超えていた。

全員が杖を持っているあたり、魔法を使える精鋭たちってところか?

「つーわけで、予定より早いが仕掛けるかァ」

メガネは不敵に笑った。

「儀式魔法には、儀式魔法ってなァ」