軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ガラの悪い男たちが持つのは、隠し持ちやすい短剣やナイフばかり。そのどれもが、一撃で俺に致命傷を与えるには足りない。

肉を斬れば痛がる、筋を斬れば止まる。血肉がある分、スケルトンより容易い。

「……この人数を殺れば死刑は確定、命が惜しくねェのかァ?」

「自分が死んだ後のことまで心配してくれんのか。優しい奴だなおい」

メガネは首を左右に振った。

「イカれてやがる」

「死ぬのが怖いならダンジョンに来んな、地上でお山の大将やってろよ」

メガネは大きくため息をついた。

「お前は昔からそうだァ。焼け付くような生存競争の頭で、暴力が対話の手段だってこともわかっちゃいねェ」

「拳で語んのは友情あってのもんだろ」

細いナイフをメガネに投げるが、首を傾けて 躱(かわ) された。

俺は 関(せき) の後ろ襟を掴んで持ち上げ、首筋にドスの刃を当てる。メガネは不愉快そうに片目をぴくつかせながら、ポケットから丸いものを取り出した。

――手榴弾。

それを舎弟のチンピラの一人に握らせ、容赦なくピンを引き抜いた。

「お、オヤジ!?」

「しっかりレバー握っておけよォ? レバー握ってりゃ爆発はしねェ」

「う、うす」

「そこの野蛮人次第だろうがなァ、かははァ」

「そんな!?」

狼狽(ろうばい) してダラダラと冷汗を流すチンピラ。その背中に手を当て、メガネは俺の方に押し出してきた。

まずいな。関の体だけで爆発を防げるか? いや、狭い空間だ。衝撃と圧力が閉じ込められ、ダメージは避けられない。

絶望の表情で俺にフラフラと向かってくるチンピラを睨むと、びくりと肩を竦ませて足を止めた。膝が震えてやがる。

あんまりビビらせると、何もしなくても手榴弾を落としそうだな、こいつ。

――手首ごと切り落として投げ返せばいけるか?

「余計なこと考えんなよォ?」

メガネが左手3本の指をボールを握るように曲げ、俺に向けた。人差し指、中指、親指に太い金の指輪。複雑な文様が刻印されている。

俺が何か動けば、魔法で妨害するってことか。

逆襲するモンスターみてえな恰好しやがって。

「相変わらずやり口がきしょいな」

「穏便に済ませたいだけだァ。わかるだろ、ナガ?」

ねちゃっとした喋り方が気に障る。

穏便も何も、先にこういうコミュニケーションを望んだのはそっちだろうがよ。

「ああ、俺だって穏便に思い出話でも語り合いたかったよ。あれだっけな、一緒に見た花火、綺麗だったな。焼きイカが美味かった。最高だったな。あの日のプリクラ、まだ持ってるぜ」

「ありもしねェ思い出語んな」

てめえとの思い出なんてねえからな。ないものは作るしかないだろ。

「そもそもがよ。脅しを口にした時点でこうなるのは分かってなかったのか?」

俺の言葉に、メガネは面倒くさそうに首を鳴らした。

「たまァにいるんだよな。なりふり構わず噛みついてくる馬鹿が。どうせ後から佐藤親子を人質にとってもォ……お前はただ俺らを殺しに来るんだろうなァ」

「大正解」

「お前に声をかけたのはァ、プランとしちゃァオマケに過ぎねェ。ここで殺し合いまくんのは牡羊の会としてもデメリットがでけェ。何もしなくても、戦果はうちで総取り出来るンだ。仲直りしようぜェ、ナガ?」

殺しておきたい。本音はこれだ。

こういう男は、生きているだけで、いつどこでどんな不利益を 齎(もたら) すか分かったもんじゃない。

強く握りしめたドスの、白木の柄が割れた。床に放り捨てる。

だが。ここで殺し殺されをやり続けるメリットが薄くなったのも確か。

関の体も床に捨て、ポケットに手を突っ込んで歩き出した。手榴弾を握らされた男を筆頭に、全員が道を譲る。

俺は無言でトイレを出た。片付けくらいはお前らがやれ。

「普通に歩くかァ、バケモノめ」

うるせえ。

そのままの恰好で窓口に行き、怯える職員からドローン等を受け取り、家に帰る。

帰路、スイと 朱(あかり) さんに連絡をしたところ、セキュリティを強化すると返事が来た。

部屋の明かりを点ける。ふわふわ浮いているドローンに、脱いだフライトジャケットをかけた。買ったばかりなのに穴があいている。

浴室に行き、100均包丁で自分を切って弾を抜いた。バスタブの 縁(ふち) に、潰れた鉛玉が3つ転がる。どれも貫通していない。体が頑丈なのは良いが、貫通しないせいで余分にダメージを貰った気がする。

発散できない怒りで、体が熱い。痛みは痛みとして認識しても、気にならないくらいに感情が 昂(たかぶ) っていた。

あいつ、トレインでちゃんと死んでおけ。なんで生きてんだクソが。スケルトン共も使えねぇな。

メガネ1人も殺れないスケルトンごときに負ける気がしなくなってきた。

連想ゲーム的に、 不死の王(ノーライフキング) への怒りもこみ上げてくる。

シャワーを浴びても一向に冷めない憤怒を抱え、3発の弾丸を握りしめた。手の中で潰れたそれは、歪んだ1つの塊になっていた。

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協会から連絡が来た。

牡羊の会と俺たちは別行動し、地下38層で合流。その後、共同で 不死の王(ノーライフキング) に当たるとのこと。

先日のことは、パーティーメンバー全員はもちろん山里にも 支部長(えま) ちゃんにも伝えてある。

案の定、上層部から圧力がかかって表沙汰にはならないようだ。まぁ、そうですよねって感じだ。

ただ、支部長ちゃんの奮闘により、少なくとも行きは別行動が確定した。

一緒に動けばどこで暗殺されるか分かったもんじゃねえからな。

名目としては、バギーで移動速度が違うことや、野営の拠点となる階段のスペース問題で、トラブルが予想されるってところだな。

準備は迅速に行った。決まった以上は先手を取り続ける他ない。

今回ばかりは俺も細々としたものを買い揃えた。対人戦も意識し、背中に総金属製のライオットシールドを背負う。

アンデッドが相手だ。食料に困ることも考えて、携帯食料も買い込んでいく。今回はエルフ食ったらダメらしいからな。

バギーに分乗した面々の表情は硬い。

強大なモンスターの討伐に加えて、人間の悪意とも同時に戦う。その緊張感がパーティーにのしかかっていた。

エルフ? オマケだ、あんなん。

5台のバギーのエンジンが重低音を鳴らし振動した。

「行くぞ。ダンジョンアタック開始だ」